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【39%】新卒採用企業が、数万人を集める合同説明会より大学主催セミナーを支持する、本当の理由

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 Toyokeizai Onlineの公式コンテンツ、就職四季報オンラインに掲載された、「採用活動の舞台がWebから大学キャンパスへと変貌の予感」という11月23日付けの記事。ここで興味深い調査結果が公開されています。
 
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■「2012年度の新卒採用活動において特に力を入れたい広報ツール・活動」
 
 ご覧の通り、1位「就職ナビ」、2位「自社の採用ホームページ」と、web活用が今の採用活動の基本となっていることがよく分かります。これはともかくとして。
わたしが注目したのは3位「キャリアセンター主催の学内合同セミナー」。【39%】という高い数値を示しており、「就職情報会社主催の合同セミナー」(14%)の3倍近い支持率となっているのは、とっても注目だと思います。
 
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 10月後半くらいから連日、メディアでは全国各地で開催されている新卒採用のための合同企業説明会が取り上げられていますね。リクルートスーツを着た学生が列をなしている、あの光景。この説明会こそ、上記アンケートの「就職情報会社主催の合同セミナー」のことです。中でも大都市圏で開催されるイベントには、数万人が押し寄せ、多数報道されていますので、目にされた方も多かったと思います。昨今、最低の内定率を記録していることが拍車をかけているのでしょう。
 
 しかし。あらためて上記の調査結果をよく見てください。調査では、何万人も学生が詰めかけている「就職情報会社主催の合同セミナー」より、大学の「キャリアセンター主催の学内合同セミナー」の方が支持されている、というわけです。いろんな大学の学生が一気に数万人も集まるセミナーよりも、一つの大学が主催する学内セミナーの方が人気があるなんて、ちょっと不思議な感じがしませんか。
 
 ここにはいろんな理由が潜んでいるような気がします。ならば、推測するよりも、企業の採用担当者に直接話を聞いてみるのが早いよね、ということで、ある企業の採用担当者に連絡してみたところ、こんな内輪話をしてくれました。
 
 「いろんな要因がありますが、一番大きいのは、そこにいるのが○○大学の学生である、ということでしょうね。合説ではいろんな大学の学生が大勢押しかけて、正直、対応するだけで精一杯。ここから選抜をしていくことになるわけですが、これもまた大変なパワーがかかります。その点、大学主催のセミナーは、確実にその大学の学生さんに接触できる。数は多くなくても、欲しい大学の学生だけの母集団ができるのです。大きな声では言えませんが、みんな狙いは同じじゃないでしょうか」
 
 より端的に言えば、企業が支持しているのは、採用ターゲットとしたい国公立や上位私大の合同セミナーであり、どの大学でもいいという話ではない、ということです。ある意味、就職差別とも受け取られかねない発言ですが、企業の本音なのでしょう。昨今の新卒採用活動においては、大手や有名企業には大量の応募者が殺到しており、大量の母集団を作ることはできる反面、選考に相当のパワーがかかることも事実です。そこを踏まえれば、「企業が採用ターゲットとしている大学」が主催するセミナーが人気化するというのも頷けるわけです。
 
 もう少し言えば、企業にとっては、就職情報会社主催の合同セミナーが「有料」であるのに対し、大学キャリアセンター主催のセミナーは「無料」です(調べたわけではないですが)。今のご時世、採用してくれる企業は、大学にとって大変ありがたい存在であり、いわゆる「お客様」なのです。

 求める人物を厳選するためには、多くの母集団が必要だというのが企業の本音なら、そうはいっても、できるだけ効率的な採用選考のために、母集団そのもののレベルを上げたいというのも本音。この調査結果が意味しているものを考えていると、採用活動が企業活動であるということを再認識させられます。。。

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