【-16.7%】新卒採用、2010年卒者を底に好転か?W研発表の定番調査結果が意味するものを考える
リクルート・ワークス研究所が行った、「2011年度の採用の見通しに関する調査」結果が発表になっていますね。この調査は母数が大きく、毎年の採用動向を探る上で、定番かつ貴重な調査のひとつです。そこで気になる数値が出ています。
※リクルート・ワークス研究所発表、2011年度の採用の見通しに関する調査より一部引用
これは2011年卒者を対象とした新卒採用状況を、1年前の2010年卒者と比したものですが、2010年卒者の採用が当初の予定数を大幅に下回った【-16.7%】のに対し、2011年卒者は若干ですが予定数を超える見込みである(+1.5%)という数値。新卒者にとっては大変嬉しいこのニュース。正直、わたしには意外な結果でした。
新卒者の就活においては、ますます厳しい空気が漂い、4年生の未内定者が大量に溢れている一方で、3年生対象の説明会は早くもピークを思わせるような混雑ぶり。新卒採用をめぐるニュースでは、「○万人が来場し」「ブースでは長蛇の列が」「エントリー社数が昨年を上回りそう」などといった話題が飛び交っています。こうしたニュースを見聞きしながら右往左往している、就活生やその保護者の方もいらっしゃることでしょう。
そんな中だからこそ、今回の調査結果で、いわゆる下げ止まり感が明確に出てきたことは、サプライズだったのかもしれませんが、学生にとっては嬉しい兆しだと見ることができるでしょう。
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このグラフは、同じワークス研究所が毎年発表している「新卒求人倍率調査」の経年変化を示したものです。ご覧の通り、2010年卒者は1.62倍、2011年卒者は1.28倍と急降下。それでも俗にいう就職氷河期とされる1996年卒者の1.08倍、2000年卒者の0.99倍に比べればまだマシだということになっています。ところが昨今の新卒採用の厳しさは、実はこの数値には現れない理由により、過去の厳しさを上回っていると言えるでしょう。
数値に表れない理由とは、簡単に言えば、「新卒採用予定数は、組織の人員ニーズを積み上げたものなので、予定数をきっちり採用する」というのが従来型の新卒採用だったとすれば、昨今は「高い採用レベルを堅持することを重視し、もし採用予定数に達しなくても、基準に満たない人材の採用は行わない」方針へ転換しています。つまり、実際の採用数は、発表されている求人倍率よりも低く抑えられているということです。
なぜそのようなことになったのでしょうか。この背景には、雇用全般において、需要<供給状態にあることに加え、中途採用や非正規雇用など雇用の複線化が進んだことにより、新卒採用にこだわらずに、必要な人材を必要なタイミングで必要な数だけ採用する雇用戦略に企業が転換したという事実があります。乱暴にいえば、新卒が採用できなくても、代わりの方法がたくさんあるから、無理して採用する必要はないよ、ということです。つまり企業の採用活動において、新卒採用の価値が相対的に低くなってきたわけです。
その傾向が顕著に出たのが2010年卒者の採用で、予定数を大きくショートする企業が続出し、求人倍率の数値以上に厳しい就活を強いられたと見ることができると思います。また加えて、採用レベルに達した人材かどうかを見極めるための採用プロセスをより複雑化したことで、就活生にはより大きな負荷がかかり、1つの内定を獲得するのにかかる労力が激増したという側面も見逃せないでしょう。
だからこそ、企業が予定数以上に採用する予定であるという今回の調査結果は、大変意味があるものだと考えられるのです。これは新卒採用全体の動向を見る上で、大きな転換点になるかもしれないなと、大きな期待を寄せておきたいと思います。
※追記 タイトルを一部修正しました(2011年卒者→2010年卒者)。2010.12.22 20:40