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【17:1】商品もサービスも同じチェーン店で、唯一同じにできないもの

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 ふと気になってしまったのですが。コンビニ、ファミレス、カフェと、毎日毎週のように利用する店舗。その大半はチェーン店ですよね。これは地域差もあれば個人差もあるでしょうが、少なくともわたしはそうです。試しに自分が今週利用した店舗を書き出してみたのですが、【チェーン店:単独店=17:1】でした。17の内訳は、コンビニ、カフェが複数回で、他はスーパー、書店、靴屋、GS、ファミレス、ラーメン店、アパレル。一方の貴重な1は、近所の和菓子屋さんでした。なんだか書き出してみて寂しさが残ってしまいましたが、それはともかく。

 たとえば同じチェーン店でも、よく利用する店と、そうでない店というのがあると思います。わかりやすくコンビニをイメージしてみましょう。よく利用する店を思い浮かべて、なぜその店を利用するのか、ちょっと考えてみてください。
 
 理由は人それぞれでしょう。わたしの場合、最もよく利用するコンビニは、通勤途中にあるセブンイレブンのA店。他にもコンビニはあるのですが、なぜセブンイレブンなのかといえば、通勤経路で利用しやすいこと、nanacoカードを持っていること、オリジナル商品でいくつか気に入ったものがあること、そして使い慣れていること…といったところでしょうか。
 
 実は、わたしの通勤途中にはセブンイレブンだけでA店とB店の2店舗あります。いずれも24時間営業で、同じような路面店。マイカー通勤のわたしにとって、B店は帰路でちょうど進行方向の左側にあり、駐車場の開口部も広く、入りやすいのですが、一方のA店は進行方向右手にあり、対向車がいると入りにくいし、出るときには明らかに出にくい。つまり、普通ならB店の方が使い勝手がよいのです。でも、わたしはなぜかA店をよく利用します。これには、上記以外にもうひとつ、理由があった(ということに先日気づいた)のです。
 
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 法政大学キャリアデザイン学部の田中研之輔先生が、ちょっと前にこんなつぶやきをされています。
 

フランチャイズ型店舗の店舗間格差は実は大きいことに最近関心がある。サービス産業の現場での日々の極め方に差がある。顧客側は、店舗意識は少なく、フランチャイズブランドに引き寄せられて店を訪れる。ゆえに、一店舗でも満足度が低ければ、この「ブランド」の評価に連動する。厳しい世界だ。less than a minute ago via web


 これは拡大解釈なのですが、フランチャイズだけでなく直営も含めてチェーン店として考えた場合、田中先生の指摘されている格差というのが、わたしもすごく気になります。というか、チェーン店の場合、ほんの僅かの違いがより際立つと思うのです。店の外観も提供されるサービスも置いてある商品も、店内の陳列レイアウトもスタッフの制服も同じだからこそ、ちょっとした違いがあると目についてしまう、ということなんでしょうね。
 
 中でもセブンイレブンは徹底したオペレーション力を誇り、スタッフが提供するサービスも細かくマニュアルで指導されていて、たとえば清掃を徹底するために、窓を拭く時間まで示されていると聞いた記憶があります(もし正確にご存じの方がみえましたら補足お願いします)。だからこそ、よけいに小さな違いが目立ってしまうのかもしれません。
 
 立地や駐車場の入りやすさというのは物理的に大きな差異ですが、同じようなエリアで同じような店舗サイズなら、商品構成に大きな差はないでしょうし、レイアウトも基本形は同じだと思います。だからこそ、ちょっとした点で違いが目立つ。わたしの印象では、この「ちょっとした違い」というのが、「ヒューマンスキル」によって生み出されているように思うのです。
 
 お客さんが店に入ってきたら、「いらっしゃいませ」と挨拶をする。まぁ、当たり前の話ですね。マニュアルにも書いてあるかもしれないし、従業員への教育においてはイロハのイ、基本中の基本。そんなこと、教えられなくても当然できるでしょ、くらいの話です。
 
 でも、あるとき、気づいてしまった。A店とB店では、明らかにこの「いらっしゃいませ」が違うのです。A店の店員さんは、一瞬でも入り口方向のわたしを見て、「いらっしゃいませ~♪」とさわやかに声をかけてくれるのです。一方でB店では、同じく「いらっしゃいませ」と声はかかるのですが、A店のようはチラ見はない(感じたことはなかった)し、声のトーンも普通(きちんと発音もされているし、何の問題もないのですが、感情もないというか、機械的というか、少なくともわたしにはそんな印象)です。
 
 この違いに気づいてから、わたしはA店の「いらっしゃいませ~♪」が気になるようになりました。すると、A店ではスタッフが入れ替わっても、高い確率で爽やかな「いらっしゃいませ~♪」が目視付きでやってくることに気づいたのです。レジで接客中であっても、一瞬、こちらに目配りをするのです。もちろん、これはわたしに対してだけじゃありません。誰がお店に入ってきても、これがまた爽やかなんですよ(笑)。またレジで支払うときも同じで、笑顔だし、対応が心地よいんです。もちろんわたしの勝手な印象値ですけどね。
 
 チェーン店の場合、どこでもマニュアル化や教育によりサービスを高める方策が取られていると思いますが、そこを一歩踏み込んで、ヒューマンスキルで他店と差をつける。これ、すごく効果出るんじゃないでしょうかね。こうしたヒューマンスキルは、教育でもレベルアップできますが、手っ取り早いのは、採用でしょう(…が、この話は長くなるので、また別の機会にしたいと思います)。
 
 
店の外観も商品もメニューもサービスも基本的に均一化されているのがチェーン店の安心感。なのに、どうしても同じにできないのが、それを担う人間だということ。考えてみれば、当たり前のことなんですよね。
 
※補足:田中先生のツイート引用はご本人の承諾を事前に頂いております

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