中村昭典の、気ままな数値解析:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 中村昭典の、気ままな数値解析

○人、○%、○億円…メディアにあふれる「数値」から、世の中のことをちょっと考えてみましょう

 サッカーのワールドカップ・南アフリカ大会。戦前は何かと弱気ムードが漂っていたメディアも、カメルーン戦での劇的な勝利から、雰囲気が一変していますね。テレビ放送の視聴率も瞬間最高で【49.1%】を記録し、今年の全番組の最高を更新し(ビデオリサーチ調べ)、オランダ戦はもっと高率になったと予想されています(執筆時では未発表)。メディアでの露出も激増して盛り上がり、今週末のデンマーク戦に向けて一層ボルテージが上がっていきそうな勢いです。
 
 わたしはサッカーの専門家でもないので、日本チームの戦い方が云々というコメントをすることはできませんが、カメルーン戦の翌日、ラジオでおもしろいコメントを聞いたので紹介しておきます。

…今回の勝利は、FWを置かずにMFだけで戦ったことが勝因ではないか。『キャプテン翼』の大ヒット以降、日本のサッカー選手はみなMFを目指すようになり、中盤にタレントが集中した。そこを活かしたチームを作ったのが功を奏した…
 
※2010年6月17日付け RADIO-i MORNING LIVEより、ゲストコメンテーター、伊藤孝紀/名古屋工業大学准教授のコメントより

 なにせ放送を聞いた記憶からまとめたため、正確性に欠ける点はご容赦願いたいのですが、意味的にはこんなコメントをされていました。カメルーン戦で得点した本田圭佑選手は、試合ではFW的なポジションにいたものの、元々はMF。また大久保選手はFW登録ですが、フォーメーション上は攻撃的MFとして配置されていました。日本チームには、岡崎、森本、玉田などのFW選手がいるのに、敢えて本田をワントップとして起用したのには、素人のわたしでも意図を感じるわけで、なるほど、そんな見方もあるのかと思ったわけです。もちろん、岡田監督がどう考えていたのか聞いたわけでもありませんし、専門家諸氏からすれば、異論は多々あるのかもしれませんが、そこは一サッカーファンの素人感想として多目に見てくださいね。
 
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 Wikipediaで『キャプテン翼』を調べてみると、上記のコメントに関連する記述が一部で記されています。

…(前略)…川口能活、小野伸二などの日本代表経験者を筆頭に、ポスト団塊ジュニアには「『キャプ翼』の影響でサッカーを始めた」という選手が多い
…(中略)…
主人公の大空翼がCFからMFに転向したことをはじめ、MFがゲームで最も重要なポジションという描かれ方だったため、Jリーグや日本代表においてはMF(特にトップ下やボランチ)にタレントが集まり、逆にDFなど他のポジションの層が薄くなるなど、現在のサッカーにおいて『中盤のタレントが飽和状態』という状況の原因を作り出したとも言われている…(後略)…
 
Wikipedia『キャプテン翼』より一部引用

 
 またこれに関連して、少し古いのですが、元日刊スポーツ出版社編集長の荻島弘一さんが興味深いコメントをしているのを見つけましたので引用しておきます。

…(前略)…今、子供たちがサッカーをする時に、一番人気のあるポジションはMFだという。ボール扱いのうまい子供が中盤に君臨し、パスを出し、ドリブルし、シュートも狙う。あこがれる選手は、中田英寿や中村俊輔。チームで最もうまい選手がヒデやシュンスケになり、ほかの子供を動かす…(後略)…

2006年7月1日付け nikkansports.comコラムより一部引

 たしかに昨今の日本チームには、FWよりもMFにタレントが多いと言えるでしょう。日本に対して、しばしば「決定力不足」という評を耳にすることがありますが、その遠因に『キャプテン翼』があった(かもしれない)というのは、ちょっと皮肉な感じがします。

「われわれに強烈なセンターフォワードはいない。だから、チームとして、ボールを奪ってから早い攻撃で点を取れればと思っていた」

※2010年6月20付け 中日新聞朝刊1面より一部引用

 これはオランダ戦の後に岡田監督が残したコメントですが、ここには先のラジオ放送で伊藤准教授が話していた、チーム構成変更の明確な意図が示されています。すなわち、FW+MF+DFというスタンダードなフォーメーションから、現有戦力を活かして適材適所を考えた結果、FW不在の戦い方に舵を切った。そして、「カメルーン戦で勝利」「オランダ戦で惜敗したもののあと一歩」という実績を作ったわけです。規定のフォーメーションに選手をはめるのではなく、人材からフォーメーションを決めた。これが功を奏した、ということなのでしょう。
 
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 実はラジオ放送を聞いた後、わたしは今の就活にも通じる点を連想していました。今の厳選採用下では、大手企業を中心に、何重もの選考プロセスを経ることで、優秀な人材だけを選び抜くという戦略がとられています。しかしながら、
こうした複線的な選考では、多面で卒なく能力を発揮できた人材が得点を稼ぎやすい=採用されやすいという傾向にある一方で、一芸に秀でたタレント、一転突破型の原石みたいな学生の場合、ある選考では突出した高い評価を得るものの、他の選考では浮かび上がりにくく、結果として不採用になってしまいやすいという弱点を内包しています
 
 これをサッカーにたとえてみると、今の厳選採用では、守備もできれば攻撃もでき、メンバーもマネジメントでき、かつ全体を見渡してゲームをコントロールできるようなMFタイプ人材が集まる傾向にある…そう捉えることができるのではないでしょうか。逆に点取り屋を求められるFW的人材というのは、得点を獲るという能力に長けた、言ってみれば一点突破型の人材。こうした人材は幾重もの選考プロセスで振るい落とされやすい。わたしにはそんな風に映ります。
 
 もし採用する側が、FW向き、MF向き、そしてDF向きといった、多様なタイプの人材を獲得したいなら、採用プロセスの弱点を踏まえた上で選考を重ねないといけない…そんなことを思ったりするわけです。
 
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 ワールドカップを勝ち抜いていくような強豪チームを見渡せば、やはりそこには秀でたMFだけでなく、強力なFWの存在があります。FWの弱いチームには、概して「決定力不足」というレッテルが貼られがちでしょうし、予選・決勝と勝ち抜いていくには、やはり強いFWの存在が不可欠なようにも思います。今回の岡田ジャパンは、現有戦力をどう活用するかという点では、特筆すべき成果を挙げたのかもしれませんが、岡田監督の言葉にあるように、もし「強烈なCF」がいたならば、話は別なのです。
 
 企業の採用に話を戻せば…些か強引な言い方ではありますが…まだまだ厳しい経済環境下、逆境を切り開いていくために、FW的な突進力を持った人材の獲得が必要なのでは、と感じるわけです。そのためには、現行の採用戦略を冷静に見直す必要がある…のかもしれません。。。

中村昭典

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プロフィール

中村昭典

中村昭典

元リクルート・就職情報誌編集長。現在は大学でキャリア支援領域の教育研究者。
「一人でも多くの人に、働く楽しさを伝える」をテーマに、いろいろ試行錯誤する日々です。
趣味は海山畑で食材を調達すること、カフェで一人ボーっとしながら人間観察すること

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