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【3,625冊】 本の帯は、著者のホンネを凝縮した、Twitter以上にメッセージ性の強いつぶやきかも

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 店頭で本を手に取るとき、まず目がいくのが、本の帯。本のタイトルや著者と並び、どんな本なのかを品定めするときに参考にされている方も多いと思います。この帯、売る側にとっては、本の売れ行きを左右する大変重要なPRスペース。あの手この手の工夫を凝らす、腕の見せ所となります。
 
 本を作る場合、最近は必ず装丁デザイナーが表紙・カバー・帯などの制作を手がけています。新刊で店頭に平積み(本の表紙が見えるように展示されている状態)されているとき、思わず手に取りたくなる、中身を見たくなるような仕掛けを考えるわけです。このディレクションをするのは、編集者の大きな仕事。本の売れ行きを左右するため、必然的に力が入ります。
 
 この帯について、東京創元社の編集者が自社ブログで作り方を紹介しています。干場さん(@hoshibay ディスカヴァー・トゥエンティワン取締役社長)のTwで引用されていたのを拝見し、なるほどと思ったので、ここで引用し紹介させていただきます。編集者によれば、帯の作り方は下記の4タイプに分類できるとか。

  •  剛速球型 「9か国で累計80万部突破!」「映画化決定!」「年末ベスト第1位!」「売れすぎて申し訳ないっス!」とか書いてあるやつです。いつか「全米が泣いた」というのをやってみたいと豪語している同僚もいますが、まあ周囲に止められると思う。
  •  説明型  芸がない方法と思われるかも知れないが、ミステリ、SF、ファンタジー等では案外有効な場面が多い。「英国現代本格」「ロマンティック・ファンタジー」「超本格ハードSF」などと書いてあれば、どんな話か一目瞭然なので、ジャンル読者に対しては親切設計。「CWA新人賞受賞の気鋭が放つ~」「ブッカー賞作家が描く~」「ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ジョン・W・キャンベル記念賞3賞に輝く~」など、賞の権威を用いる方法も、この系統といえるでしょうか。
  •  雰囲気型  作中の文および台詞の引用、詩的な表現などを用いて作品の読みどころを伝える。これが一番編集者にとっては腕の見せ所です。下手に書くと大滑りするか、半笑いでお客さんが通り過ぎることになる反面、もっとも心に訴えかける力が強いのもこのタイプ。一般文芸や恋愛小説は基本的に「語り」がないとカバーの間が持たないので、編集者のセンスがより厳しく問われる。
  •  推薦文型  ペーパーバックにはよく新聞や評論家の書評がついていたりするが、日本では読書家のタレントや作家さんから推薦文を寄せてもらい、帯やPOPにして仕掛け販売するケースが最近目立っている。書店員さん推薦も多くみられるようになりましたね。作品がテレビドラマ化、映画化された際にスチールを借りて、帯にあしらうことも。特に、既刊本をまた動かすときに威力を発揮する。

  ※東京創元社発のひとりごと 第四回(執筆者・東京創元社編集部F)より一部引用

 ちなみに自著『親子就活』(アスキー新書刊・角川GP販売)を例にとれば、上記の「雰囲気型」に属すると考えられます(…雰囲気型と言われると、ちょっとビミョ~な感じですがww)。特に新書の場合は、基本的な表紙デザインが決まっていますので、デザインで勝負するのはまさに「帯」。私の場合は、本の執筆がほぼ終了し、編集作業に入った段階で、並行して帯の装丁デザインの検討に入り、編集者から相談をいただいて、数回のストロークの後、デザイン案が制作されました。
 
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 帯アリと帯ナシでは、見れば一目瞭然、手に取ったときの印象が随分違うと思います。私の場合は有名人でもないので、著者名で手にしてもらうことはありません(残念w)。ですから帯のメッセージがとても大事ということになります。
 
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 ちなみに店頭で見るとこんな感じです。帯のデザインやメッセージにまず目がいきますよね。拙著は
、有名著者の顔写真に挟まれてタジタジな状態ですが(笑)。
 
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 私が思うに、表紙や帯を制作する時に最も重要なことは、読者ターゲティングです。つまり、この本は誰に読んでもらいたいのか。誰にとって一番メリットがある本なのか。そして想定した読者の心を捕まえるのに最も効果的な一言は何か。想定した読者の心を揺さぶるような一言を、ボソッとつぶやけるかどうか、これが装丁デザインのツボになるわけです。つぶやきと言っても、Twitterなら140文字使えますが、表紙や帯の場合は、もっと短いフレーズしか使えません。広告でいうキャッチフレーズを作る感覚ですね。
 
 最近は実際に店頭で本を手に取るのではなく、Amazonなどで購入する場合も多いわけですが、実はAmazonの表紙画像では帯がはずされています。本を作る側としても買う側としても、個人的には帯も含めて表示してもらいたいと思うのですが、そうはなっていません。
 
 
今や新書だけでも年間【3,625冊】(2008年計、出版科学研究所調べ)が世に送り出される時代です。当然、すべてを手にとってみることは不可能。従って表紙や帯に記されるメッセージは、作り手側にとってだけでなく、読者にとっても有益な情報になっているはずです。電子出版に向かおうとしているご時世からすれば、アナログ派の見方ではありますが。。。

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