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【2,300万円】 文科省が打ち出す「就業力」UP5年計画、その5年後を考える

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 先日、経産省のインターンシップ企画を紹介させていただきましたが、今度は文科省からインターンシップを絡めた施策が発表されていますね。なかなか上がらない内定状況を踏まえ、今度は中期的な戦略を打ち出してきました。

 …(前略)…10年度予算案で、既存の補助金などと別枠で30億円を確保、公募により、インターンシップ(就業体験)を卒業単位に認定するなど積極的な指導を行う国公私立大130校に資金配分する。また、私大約500校に来年度まで就職相談員を配置、大学生らの就業危機脱出を支援する。
 公募で選ばれた大学には、国立大への交付金や私学助成とは別枠で1校につき約【2300万円】ずつ配分する。選考基準は今後定めるが、1年生から将来の進路を考える科目が必修化されている金沢工業大(石川県)や、調査能力、国際感覚など社会人に必要な能力育成を意識した講義を行う東京女学館大(東京都)、就業体験を単位に認定している一橋大(同)などの例を念頭に置いている。
 財政支援を行うことでこうした取り組みが他大学に波及する効果も期待している。大学院生や、就職が決まらない既卒者の支援も産業界などと連携して進める…(後略)…

  ※YOMIURI ONLINE 2010年3月14日03時08分より一部引用


 今回の文科省施策を見て、先の経産省の施策が、既卒者と中小企業をつなげる、いわば文科省と棲み分けを図ったように見えました。その是非はさておき、文科省が足下でなく5年計画を打ち出したところに、少し深い意味を感じます。
 
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 昨今の新卒学生の就職難に対し、国策として何ができるのか、何が必要なのか、簡単に答えが出るようなものではありません。世の中には「新卒採用は需要と供給だから、景気が良くなればある程度は解決する」という主張をされる方もいらっしゃいますが、これも一理あると思います。ただ、なぜ就活が上手く進まない状況を現場で眺めていて一番危機感を覚えることは、バブル崩壊以降、若者たちの心の中にはびこってしまった「不安」「無気力」「期待できない」といったネガティブなモチベーション・リソース。世の中の流れや大人の背中を彼らなりに見つめているうちに、彼らの中に根付いてしまった負の活力です。その意味で、わたしは単に就活スキルを上げることで解決できることは少ないと思っています。ですから、文科省が「就活力」とせずに「就業力」とした点には期待が持てるのではないでしょうか。
 
 極論かもしれませんが、がんばる気力が萎えてしまっている彼らに対して、わたしたち大人がしてやらなければならないことは、仕事のおもしろさや意義を、建前論や正論ではなく、リアルな体験談で伝えてやることだと思っています。そのためには、体験談で語れる人が、学生に接しなければなりません。その点で、実社会の力を使うことを奨励している(ように見える)今回の文科省施策がヒットする可能性は十分にあると思います。机上の理論で学生の心は動かせないという視点に立って、文科省は施策を進めて欲しいと切に願います。大事なことは、どんな取り組みに予算が配分されるのか。配分された予算を各大学がどう使うのか、です。
 
 5年後にどんな成果が出てくるのか、それは実社会との対話にどれだけお金と知恵と時間を使うのかにかかっています。この不況期でも、新しいビジネスはどんどん育っているし、おもしろい仕事をしている若者はたくさんいるのです。そうした新しい芽や若者たちの力をどれだけ大学が活用できるのか。リアルビジネスの実例をフルに活用した大学が、5年後に笑えるんだろうな…そんな気がしています。
 

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