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●人、●%、●億円…メディアにあふれる「数値」から、世の中のことをちょっと考えてみましょう

【11.5%】 就職氷河期の再来、は正しいのか

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 年が明け、大学で講義が再開された1月6日のこと。学食でスーツを着た学生に会いました。新年早々から大変だな…と思い、「就活?」と声をかけてみました。すると彼は、「いえ、違いますよ~。でも、いつ呼び出しがあってもいいように、毎日スーツ着るようにしてるんです」と真顔で応えました。なるほど…これがリアル就活ということなんでしょう。
 
 すでに昨年10月頃から、現3年生を対象とした企業説明会が活発に開かれ、すでに第一次ピークが終わったと言う学生もいます。大学内でもリクルートスーツを着た学生の姿を見かけることは、すでに日常的な光景。学生にとっては逆風が強い就活状況が続いており、現時点でも今春卒業予定の未内定者が相当数いると思われ、厳しい新年となっています。
 
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 昨年12月16日にリクルートワークスが2011年卒予定者の採用見通し調査結果を発表しています。この調査を受け、マスコミ各社がピックアップして紹介しているのですが、それを見ながら、少し違和感を覚えました。一例がこちらです。

就職氷河期続く…新卒採用9.3%「減らす」
リクルートは16日、国内企業4400社を対象とした2011年春の大学生と大学院生の新卒採用計画の調査結果を発表した。それによると、10年春に比べ「減らす」と回答した企業が9.3%だったのに対し、「増やす」は5.5%にとどまった。2年連続で「減らす」が「増やす」を上回っており、新卒採用は厳しい”氷河期”が続く見込みだ…(後略)
 
   ※Yahoo!ニュース12月16日16時10分配信 産経新聞より一部引用

 この記事で紹介されていることは、調査から読み取られた事実であり、また厳しい状況にあることは確かだと思います。ただ、わたしが??と感じたのは、「減らす」と回答した企業と「増やす」と回答した企業の差がわずか3.8%で、就職氷河期続くという見出しや論調はどうなんだろう?ってことです。
 
 リクルートの調査結果を詳しく見ればわかることですが、

  • 「減らす」と回答した企業は、昨年調査で15.7%だったのが、今年は9.3%と、6.4%も減少している
  • 「わからない」の回答が36.6%となっており、昨年よりも【11.5%】も増加(調査開始以来最高の数値を記録)している。これは景気動向を見極められず、採用計画を決めきれない企業が増えているということ。減らす企業が増えるリスクもある一方で、景気動向次第で、増やすに転じる企業が増える可能性も十分にある
  • 業種別で見れば、製造業でも繊維/化学・紙・石油/半導体・電子・電気製品など材料系やIT系のメーカー、飲食業や教育・学習支援などのサービス業では「減らす」企業を「増やす」企業が上回っており、一部ながら回復の兆しも見えてきている。また「減らす」企業の方が多い業種でも、ほとんど差は一ケタである

 要するに、調査結果のどこに着目するのか、それをどう分析するのか、それによって見方はかなり変わるということです。実際、厳しい話は多いし、就職氷河期だよなぁという空気をわたしが感じていないとは言いません。でも、調査結果の数値からは、プラスの見方ができる要素も多々見受けられるということを、どうか見逃さないでほしい。そう思っています。
 

※言うまでもなく、各社の記事に異議を唱えるつもりもありませんし、事実を曲げろ、ということでも、マイナスに目をつぶれ、ということでもありません。今回わたしが上記の記事で引用させていただいたポイントでさえ、わたしというフィルタを通して選択しおり、実際の記事本文ではプラス側面の数値も紹介されています。ただ、見出しや論調から受けた、わたし個人の印象値では、厳しさを強調しているように感じたということを、あらためて記しておきます。

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