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【28.5%】 センター試験、物理Ⅰの試験室を見渡してこみ上げた、せつなさ

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 この土日、2010年度センター試験が全国で実施されました。私が在籍する大学でも多くの受験者が早朝から訪れ、試験に挑みました。その最終科目として実施されたのが、理科の物理Ⅰ。もちろん受験生たちは最後の力を振り絞ってがんばっていたのですが、試験室を見渡すと、空席がかなり目立ちました。最終科目ですから、受験しない生徒はすでに帰路についている頃で、その分が空席となってくるのは当然…ですが、それにしても、物理を選択し受験している受験生って、こんなに少ないのか…と思い、いろんな思いが頭の中を過ぎり、そして何ともいえないせつなさを感じました。
 
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 話が些か乱暴ですが、今の高等学校の受験指導から大雑把に推定すると、物理の受験者の多くは、文理選択で理系 を選んでおり、大学進学については、一部の医歯薬系進学者を除いて、理工系を目指すのが主流と思われます。受験科目として見た場合もさることながら、理工 系の大半、機械系、電気・電子・情報系、土木建築系などを学ぶ上で、物理は欠かすことができない基礎教科であることからも、理工系志望者が物理を学び、受験す るのは道理とも言えます。そして将来、そこで学んだ多くの若者が、メーカーの技術者を志望する…はずです。
 

 2010年度の受験者データについては、1月17日夜現在で、まだ正確な数値が文科省から発表になっていませんので、昨年度の数値を参照してみます。全受験者数504,387人中、物理Ⅰの受験者数は143,646人。率にして【28.5%】と、3割に達していません。また理科の主要(=受験者の多い)3科目、すなわち物理Ⅰ・化学Ⅰ・生物Ⅰについて、センター試験が始まった1998年度からの受験者数の推移を見た場合、化学Ⅰが8%、生物Ⅰが15%程度増えているのに対し、物理Ⅰは約9%減少しています。つまり、この10年で物理の受験者は約1割減少し、全受験者の3割を切るまでになっているということです。
 
 逆にいえば、
物理受験者が減少を続け、3割に満たない状況というのは、メーカーで技術者を目指している若者が減少していることを意味し、またその延長線上に、製造業就労者が減少を続け、日本の就労者人口の内、1/4程度にまで減っている現状があるように思うわけです。
 
 正月明け早々の拙エントリー「製造業で高度成長期を駆け抜けた父と、家庭菜園の天才母の姿を見て、正月休みに考えたこと」で、わたしは日本が豊かな国になるために、製造業がもっと元気になって欲しいという願いを書きました。今日私が目にした試験室の光景は、数年先の製造業を見透かした現実なのかもしれません。もちろん簡単に答えが出るような問題じゃない。今の私に妙案があるわけでもない。でも、このままじゃいけないんじゃないかと。私がこんなことを申し上げるのはあまりに僭越なのですが。。。
 
  ※科目別受験者数は、こちらから引用させていただきました

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