オルタナティブ・ブログ > 中村昭典の気ままな数値解析 >

●人、●%、●億円…メディアにあふれる「数値」から、世の中のことをちょっと考えてみましょう

【63%】 高速道路無料化で、得するのは誰か

»

 先週金曜日の夜、所用で奥飛騨まで出かけた帰りに、高速道路のサービスエリアに立ち寄ったときのこと。時間は午後11時半を回った頃でしょうか。サービスエリア内にクルマを進めたとたん、異様な光景に驚きました。見たこともないほど混み合っていて、駐車場が満杯で止められないんです。観光シーズンの日中ならいざ知らず、平日の深夜です。駐車場にはトラックや乗用車が入り乱れ、売店の前には人だかりができています。大人だけでなく、小さな子どもたちもいます。なんだろう、この盛り上がりは。一瞬、何かイベントでもあるのかと思いました。
 
 でも、すぐに謎は解けました。
 
 この週末、全国的に好天が予想され、絶好の行楽日和とラジオのニュースが伝えていました。そうです、週末の高速道路1,000円乗り放題です。それを利用して旅行に出かけようというクルマが一斉に繰り出し、サービスエリアで時間調整したり、仮眠をとったりしていたのです。もうすぐ午前0時、高速道路はETC走行で1,000円乗り放題タイムに突入です。
 
 深夜のサービスエリアといえば、トラックばかりが目につくのがこれまでの光景でしたが、昨今の週末は違うようですね。乗用車もかなり多く停まっています。周りをゆっくり観察すると、ワンボックスカーに子連れのファミリーが乗り込み、子どもたちが車両の後部ではしゃいでいる姿が見えます。
 
 一般市民からすれば、週末の高速道路1,000円乗り放題はレジャー意欲を駆り立て、歓迎している人も多いことと思います。ただ一方で、激しい渋滞にうんざりという声も多く聞かれます。実際、道路が比較的すいてくるはずの深夜時間帯でさえこの混雑。商用トラックなど業務で高速を利用している人々にとっては、大変困った問題だというのも頷けます。
 
 ::: ::: :::
 
 民主党政権になり、マニフェストに掲げた高速道路無料化の行方が話題となっています。世界一高いと言われる日本の高速道路料金ですから、今のままがいいと思っている国民は少ないと思いますが、じゃぁ無料化がいいかといえば、世論はどうも違うようですね。

  • 高速道路の原則無料化については賛成が33%にとどまり、反対は2倍近い【63%】に上った。民主党支持層でも反対が53%で賛成を8ポイント上回った。

    ※毎日新聞 2009年9月18日 東京朝刊より一部引用
 
 十把一絡げに高速道路と言っても、都心部と地方では、その利用者数も利用価値も違います。また利用する人の目的もそれぞれ。これらを一括し、すべての人が満足する料金形態を見つけ出すには、もう少し議論をした方がいいと、世論は言っているように思えます。
 
 それと、目の前の料金ばかり気にするのではなく、たとえば無料化することで高速道路の維持整備費が削減され、その結果、利用者に不利益がもたらされるかもしれないということも忘れてはならないでしょう。これは国の予算の問題なのかもしれませんが、単純に考えて、利用料金が利用環境整備に使われるのが普通ですから、それがタダになれば、どこかでツケが回ってくるのは、ごく当たり前のことだと思います。

 利用料金が適切に使われていないというのは、別の問題なんです。そこを正すことは政治の問題としてしっかり取り組んでもらう。そしてその上で、高速道路の適切な維持発展にかかる費用は、利用料金を中心とした収入から適正に捻出する。そんな小学生でもわかるような構造を実現するためには、無料化では難しいと思うのですが、いかがでしょうか。
 
 ::: ::: :::
 
 このままだと、
今日出した宅配便が明日届かなくなる日が来ると言われています。また宅配料金も上がるでしょう。渋滞が日常化すると、多くのところで障害が出てきます。マイカー利用者が増えることで高速バスの利用者が減り、路線廃止や減便などに追い込まれる可能性もあります。こうなるとマイカー非利用者にとってはサービス低下になってしまいます。そうしたことを全部ひっくるめて考えないといけない。高速はタダにして欲しいけど、渋滞は勘弁だし、宅配は明日届かないと困る。でも、そりゃわがままなんだよなぁと。マニフェストは選挙公約だからと、このまま無料化に突っ走ったら、誰も得する人はいないのかもしれないなぁと。そんなことを深夜のサービスエリアでふと思いました。
 
 でも、こうした理屈とは無関係に、子どもたちは楽しそうだったなぁ。深夜にお出かけ、って、ちょっと冒険みたいで、そりゃ嬉しいもんですからね。。。

Comment(0)