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●人、●%、●億円…メディアにあふれる「数値」から、世の中のことをちょっと考えてみましょう

【100万円減】 あなたの年間所得は、10年前より100万円も下がっているという現実を受け入れられるか

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 昨年来の金融危機に端を発した世界的な不況。この頃になって、不況脱出のサインが見え隠れしていると言われつつも、個人的には実感がなかなかないのですが。ともかく、「100年に1度の危機なんだ、そうあることじゃないんだ」「これは世界的な不況なんだ、日本に限った話じゃないんだ」。正直、そんな見方もしてました。

 しかし。この100年に1度の不況よりもずーっと前、2000年に入って以降ジリジリと、日本という国はかなり深刻な状況に陥っていたのかもしれません。

 かつて日本は、誰もが「豊かな日本」を認めていた時代がありました。日本のGDPは先進国の中でもトップクラスを維持し、国民一人当たりGDPでも常に世界ベスト5の常連でした。国としても、国民としても、豊かさを誇示できた時代だったのです。こう書くと、バブル期を思い起こされる方もいらっしゃるでしょうが、実はバブル期以降も多少の上下動はありながらも、2001年までは5位以内をキープしています(下のグラフは、OECD加盟国の中で、国民一人あたりGDP額でランキング化したときの、日本および米国の順位推移)。

Gdp_ranking_japanusa

 しかしながら、今となってはこれも過去の話。最新の2007年統計では19位、サミット参加国では下から2番目まで低下している事実をご存じでしょうか。急落という言葉が適切かどうか判りませんが。日本という国は、確実に貧しさを増しているのです。
 
100年に1度の世界不況より10年も前から、日本は「貧しい国」への道を歩んでいた
 

のかもしれません。

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 「たかが指標1つで貧しい国だなんて言い過ぎだ」と思われる方もいらっしゃることでしょう。また国全体がどうであれ、それと個々人の生活感とは次元が異なります。「そんなの実感ないわぁ」という方も大勢いらっしゃるでしょう。でも、数字は正直です。認めざるを得ない現実を見せてくれます。

 先日厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査」平成20年版。国民生活のあり方をマクロで探る政府管掌の基礎的な調査ですね。コレをあらためて見ていると、私たち(というと語弊があるかもしれないので、少なくとも私)は、今までの常識を変えなくてはならないと実感します。

  • 平成19年の1世帯当たりの平均所得は前年比1.9%減の556万2,000円で、平成以降の過去19年間で最低
  • 生活状況については、「生活が苦しい」と感じる割合は、過去最高の前回調査に並ぶ57.2%

 ちなみに平均所得556万2,000円は、昨年より約10万6,000円の減少。また10年前の平成10年版では、平均所得が657万7,000円であり、ほぼ【100万円】も下がっているのです。さらに追い打ちをかければ、グラフを見ていただければ判りますが、平均所得は一部の年収が高い人高所得者によって引き上げられていますので、平均所得より低い世帯の方が圧倒的に多く、60.8%が平均所得以下となっています。 

Nenshu

 より実感に近いのは中央値でしょう。これは、日本中の全世帯を所得順に並べた時のちょうど半分(中央)にいる世帯の年収年間所得値で、448万円なんです。また100万円単位で見た場合、一番のボリュームゾーンは300万〜400万円台。全世帯の半数に近い44.3%が、年収年間所得400万円以下なんです。

 この統計は世帯単位であり、「核家族化が進み、世帯人員が少なくなり、働いている人の1人当たりの稼ぎが減っていることも影響しているのでは」という厚労省の指摘も一理あるでしょう。しかし、【100万円減】という現実は、さすがに重いなぁと言わざるを得ません。

 かつて「豊かな国」と称された頃、日本人の9割が中流意識を持っていたと言われています。先進国の中で比較的貧富の差が少なく、多くの国民がそれなりに豊かさを感じられた時代…それは完全に過去の姿となってしまいました。今、国民(世帯)の1/3近くが年収年間所得300万円以下となり、「生活が苦しい」と感じているのです。

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 このところ、悪化する雇用情勢に関連して若者たちの動向についてふれたエントリーを重ねてきました。今回紹介した年収所得減少の事実は、若者たちの現実的な生活にも重くのしかかってきているはずです。最近の若者が大志を抱かず、小さな幸せを求めて現実的に生きようとしているのは、こうした現実が色濃く反映されているのかもしれません。。。

  ※参照先(出典・引用)
   厚生労働省 統計一覧 平成20年国民生活基礎調査
   内閣府 国民経済計算確報
 
★誤解を招きやすい表記があったため、タイトルおよび本文の一部を変更致しました。本文では二重線で訂正を加えましたが、タイトルはシステム上訂正ができないため、変更と致しました。どうぞ寛大にご容赦願います。

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