【70~90ドル】 ガソリン高騰、収束の可能性~マスコミに書かれない真相
月末になると、ガソリン価格の値上げニュースが気になる方も多いと思います。これまで何度かガソリン価格高騰について取り上げてきましたが、いつも感じていたのが、いったいどこまで価格が上がるのかという不安です。これに対し、nikkeinet・財部誠一の「ビジネス立体思考」で明快な意見が書かれています。
- 「昨年夏、米国でサブプライム問題が勃発して以来、金融市場が崩壊。有り余ったマネーがWTIに流れこみ、原油を暴騰させている…そうした現象が起こっていることは間違いない」
- 「6月3日のデータをみると「Commercial(石油業者)」と「Non Commercial (投機筋)」の残高をくらべるとほぼ2対1である。投機筋の残高は石油業者の半分しかない」
- 「「投機マネー」が実需を押しつぶして買いあがっているかのような印象が日本では広がっているが、それは明らかに間違っている」
- 「「投機マネー」の中に、ヘッジファンドが占めるシェアはむしろ少ない」
- 「ニューヨーク・マーカンタイル取引所によって「Non Commercial(投機筋)」と分類される投資家はヘッジファンドだけではない。それどころか、ヘッジファンドのシェアはむしろ小さい。圧倒的な存在感をもっているのは、年金基金、投資信託、保険会社がビッグスリーだ」
- 「石油会社にしろ、投機筋にしろ、誰もが原油価格の先高を確信しているわけではない。6月3日の公表データによれば、石油会社も投機筋も「売り」「買い」の残高がほぼ拮抗しているのである。先物市場だから、先行き値下がりすると思えば「売り」から入ることもできるし、先高だと思えば「買い」から入る。「売り」と「買い」の残高が両者ともにほぼ半々といった状況だ」
※以上、nikkeinet・財部誠一の「ビジネス立体思考」2008年7月23日付けより引用
という実態を分かり易く紹介しています。インド・中国に代表される実需の急増は事実で、今後も懸念されるものの、今のように異常な水準まで高騰したままでは、「ものすごい勢いで石油離れが起こる」と予想されています。
現実問題、ガソリン消費量が激減していて、特に日中や深夜ではクルマの通行量が目に見えて減っている実感があります。自転車やスクーターの売上げが上昇しているというニュースもあります。消費者は敏感なのです。当たり前の話です。
財部さんは、いくらくらいが妥当な線かは明言されていませんが、「1バレル【70~90ドル】」というラインを示唆しています。冷静に事実を見れば、現状の高騰が続き、1バレル200ドルというのはありえない。願望を込めて、そう考えたいところです。
::: ::: :::
私たちが、石油価格の本当のところを知るのは難しいのかもしれません。いや、本当はどうなのかというのは、どうでもいいことであって、最終的な末端の小売価格が高いか安いか、消費者にとっては、これがすべてです。ただ、その原因について、マスコミの論調を過信するのは危険のようです。すなわち、「石油価格高騰は投機マネーが原因」→「そうか、ヘッジファンドが動かしているのか」→「やってられないなぁ」みたいな短絡的な理解は、どうも一面的なものでしかなく、そう決めつけてはいけないようです。
「日本のマスメディアはものごとを単純化することにしか興味がないようで、原油高騰もすべて「投機マネー」で片付けたがる」
財部さんの主張は辛口ですが、私自身も、自分で実態を調べる前に、マスコミの論調を事実と思いこみ、“そうなんだぁ、やってられないなぁ”と思っていたところは否めません。仮に、真相がわかったところで、石油価格が下がるわけではありませんが、ただ、風評ほど恐ろしい物はない。何が引き金を引き、騒動を起こすか判りません。世間を動かすのは、事実より風評、だったりしますから。
今はITのおかげで、私のような経済素人でも、いろんな情報を知ることができます。先に紹介したニューヨーク・マーカンタイル取引所のWebSiteでは、実際の投資家別の残高を公表しており、その気になれば、財部さんの指摘された実態を垣間見ることができるのです。物事の本質を見るために、単純化することはとても大事なプロセスですが、逆に単純化にこだわりすぎると、いつの間にか本質がすり替わり、一面的な、時には間違ったものの見方になってしまうことがあるという警鐘は、心にとめるべきではないでしょうか。。。