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●人、●%、●億円…メディアにあふれる「数値」から、世の中のことをちょっと考えてみましょう

【21%】 見えないところで何をするか~必ず伝わる、サービス業の真価

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 これは技術的な問題でも経営的な問題でもない、意識とモラルの問題だと思うわけです。船場吉兆で明るみに出た、食品の「使い回し」問題。あの事件がメディアに登場したとき、全国の飲食店関係者はどう感じたのでしょうか。たった1店のせいで、あらぬ嫌疑をかけられ、「ひょっとしてこの店でも」という視線を浴びせられ…どれだけ多くの方が迷惑をかけられたことでしょう。まじめに、汗水流してがんばっている飲食店諸氏からすれば、本当に勘弁して欲しい話だと嘆いているに違いない…

 と、思ってました。今日までは。ところが。「日経レストランが飲食店勤務者に対して行ったアンケート」(2008年5月16日付け 日経レストラン ON LINEでの調査速報)で、目を覆いたくなるような実態が明るみになりました。それによると、

  ・食べ残しの使い回しをしたことがある …… 15%
  ・刺身のツマなど一部食材・飲料の使い回しをしたことがある …… 【21%】

 これが実態だとすれば、とんでもないことだと言わざるを得ません。船場吉兆はまさに氷山の一角ってことです。わからなければ、何でも許されるのか。そんなわけはありません。見えないところで画策された偽装は、信頼を根底から裏切る、最も非難されるべき行為なのです。

 同時に行われた消費者調査では、「飲食店で、手をつけないで残った料理の使い回しが行われていると思うか」の問いに、「思う」と応えた人が86.5%に達しています。つまり、飲食店を利用する側も、多分使い回されているんだろうなと疑いつつ、食事を楽しんでいるということになります。

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 先日、あるラーメン屋で聞いた話です。その店は片田舎の一軒屋で、たまたま知人に教えられて行った店。聞いてなければおそらく一生知らなかったであろう、目立つ店構えでもなく行列ができているわけでもない店でした。その店のスープをいたく気に入った私は、どうやって作っているのか、店主に聞いてみました。店主は無愛想で何も応えてくれません。そりゃそうだ、聞いた私が浅はかだった、失礼なことをしちゃったなぁ…と尻込みしました。

 ところが思わぬ助け船が。たまたま隣に座っていたオヤジさんが、こっそり教えてくれました。「3日間、鶏ガラベースで煮込んでいるらしいよ」「以前は違う場所で営業してたんだけど、マスコミが来て、行列ができて店が忙しくなりすぎて、これじゃ旨いラーメンができないと、引っ越してきたらしいよ」。本当かどうかは、私にはわかりません。今は誰にも知られないところで、ただおいしいスープを作るためだけに、3日間を費やしている。だからこの味が出るんだろうなぁ。納得でした。

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 見えないところで、という点では、「食材の使い回し」も「入魂のスープ」もいっしょです。前(5月6日付けエントリー)に紹介した、「床屋さんのカルテ」も同じでしょう。一方は、見えないところで、お客をだます。また一方は、見えないところで、お客をうならす。天と地の開きがある、見えないところでの仕業。でも、世の中よくできたもので、いつかは伝わるんでしょうね。いや、絶対に伝わる。お客の、世の中の目はシビアですから。。。

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