中村昭典の、気ままな数値解析:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 中村昭典の、気ままな数値解析

○人、○%、○億円…メディアにあふれる「数値」から、世の中のことをちょっと考えてみましょう

 私が在籍する中部大学に、今春『デジタル・ラボ』という教育研究施設がリニューアル・オープンしました。ここには95台のMac Proが並び、将来のITエンジニアを養成するための先進機能が揃っています。注目なのは、横長の部屋の中央に配置された2台のフルハイビジョン・プロジェクタと、横幅【7.2m】の巨大ガラススクリーン。これにより、通常の講義室で収録された講義アーカイブ映像を、ほぼリアルサイズで表示することができるのです。実際に録画された講義アーカイブを映し出してみると、かなりの迫力。講義室の黒板の横幅は約7mですから、まさに原寸大の黒板が眼前のスクリーンに投影されるわけで、その臨場感はかなりのものです。

 問題なのは、講義をどうやって録画するか、という点です。大学では毎日、多数の講義が開かれています。こうした講義を収録するのに、固定カメラを回して放置しておくというのは現実的な手法ではありません。見るに堪えるようにするためには、時に黒板の板書にズームアップしたり、時には教壇の周りを動く教員を追いかけたりと、必要に応じてカメラワークを施さねばならず、そのためにはカメラマンが張りついて操作をする必要があります。となると、講義の収録にはかなり物理的な制約が発生することになります。

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 しかしこのボトルネックも、新開発されたソフトウエア技術で乗り越えつつあります。実際の講義風景は、講義室の後部に固定されたデジタルハイビジョンカメラでが無人・自動で撮影。そのソースを独自開発したソフトウエアで変換することで、必要に応じてズームアップやパンといったカメラワークがほどこされたコンテンツとして再編集することに成功したのです。変換はオートで行われますので、手間がかかりません。変換後にできあがった映像を見てみると、まるでカメラマンがカメラを操作していたかのような、自然な映像に仕上がっています。実際の編集作業では、元の映像ソースから一部分を切り出すことになりますが、ソースがデジタルハイビジョン映像ですので、編集による映像の劣化も実用レベルで抑えられます。変換された講義アーカイブは、専用サーバーに保存された後、用途に応じて再変換され、インターネットで配信されたり、またiPodなどの携帯情報端末で再生することも可能。まさに「いつでも」「どこでも」講義を見ることができるという夢のような環境が揃うことになったのです。

 このソフトを開発したのは、中部大学情報工学科の藤吉弘亘准教授。デジタルラボの施設責任者でもあります。藤吉准教授はこう話しています。

 「日本では講義アーカイブの収録も公開もまだまだ進んではいません。でもアメリカでは、iTunesのメニューに“iTunes U(niversity)”というのがあって、全米の大学が積極的に講義を配信しています。大学の考え方から違うのです。日本がこれに追いつくためには、講義の著作権や質の問題など、乗り越えるべき課題が多数ありますが、今回のソフトウエア開発で、少なくとも技術的なネックを乗り越えられると思います」

 このソフトウエアは年内にも大手メーカーから外販が予定されているそうです。まだまだ問題はあるようですが、日本中の大学で講義のアーカイブ化が飛躍的に進展するのも時間の問題なのでしょうか。

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 こうなると、近い未来、学ぶ“場所”としての大学というのは、あまり意味をなさないようになるのかもしれません。大学で仕事をする私がいうのも何ですが。IT技術をフルに活用することで、どこでも学びのコンテンツを得られる時代がすぐそこまで来ているわけです。本格的なインターネット大学であるサイバー大学が開学したのはちょうど1年前の春。今後、大学教育とIT技術の親和性は、e-ラーニングを含め、加速度的に高まっていくでしょう。もちろん、いくら技術が進歩しても、すべてのコンテンツがITで提供できるわけではありませんし、集い競って学ぶ意味は不変ですし、実験実習などの研鑽はいつの時代にも必要不可欠な教育研究プロセスだと判っています。でも、どこにいても学べるというメリットを享受できれば、今以上に深く進んだ学びが得られる。あとは学ぶ側の意識次第だと言えるのかもしれませんね。。。

中村昭典

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プロフィール

中村昭典

中村昭典

元リクルート・就職情報誌編集長。現在は大学でキャリア支援領域の教育研究者。
「一人でも多くの人に、働く楽しさを伝える」をテーマに、いろいろ試行錯誤する日々です。
趣味は海山畑で食材を調達すること、カフェで一人ボーっとしながら人間観察すること

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