「やる夫が○○するようです」というシリーズが注目を集めています。

音楽史からサブプライムまで――2ちゃんねる「やる夫」シリーズの超わかりやすい“講義”とは? - 日経トレンディネット
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20080306/1007773/

私が初めて目にしたのは小説家に挑戦するものでした。某出版社の編集の方が作られたようで、文学賞の方向性の違いなど普通の人が知らないような深い知識まで解説されていました。総花的ではありますが、今の時点で気になる特徴を考えてみました。

2つのタイプ

やる夫シリーズは大きく2つの要素があります。

  • 知識を披露する
  • 経験を披露する

音楽史やサブプライムなどは知識披露型で、先生役(やらない夫・長門などが担当)と生徒役(やる夫)で学校の授業のように進行します。一方でマクドナルドのバイトや新聞の勧誘などの経験披露型では時系列的にやる夫が遭遇する出来事がテレビドラマのように紹介されます。

目的の提示

スレッドのタイトルからして音楽史を学ぶですとか、バイトをするということが明確に示されます。そしてその中でやる夫自身の目的が示されます。おおむね、異性にもてることや他人から羨ましがられることが目的であるようです。何が目的なのかはっきりと提示されているので、ストーリーの流れを追いかけやすくなります。

つっこまれ役

「つっこみ役」が存在します。漫画で学ぶシリーズとして先生役と生徒役で進行することは多く見受けられます。そういった事例と比較して過激なつっこみが入ります(やや暴力的すぎるほど)。わかりやすい前フリを行うことで、つっこみ役がつっこむのと同時に自分もつっこみを入れやすくなります。つっこみ役の人物と感情を共有する事で、ストーリーにののめり込みやすくさせます。また、やる夫がいかにも失敗しそうなイベントを引き起こした場合、読者は無意識につっこみを入れます。読者は心の中でつっこみを入れることによって、それまでの自分の認識がどうであったかとは関係なく、そのつっこみの内容を自分の考えとしてしまいがちです。作者の主張がAであり、読者の主張がBである場合、作者がストレートに「Aである」と表現すると読者に違和感が生じてしまいます。ところが作者がnot Aの例を出した場合、読者は「そこはAだろう」という反応になりがちです。作者はnot Aのやり方を失敗例として挙げ、その後にAのやり方を成功させるという展開をすることで読者を説得してしまいます。カルト宗教や疑似科学的な健康グッズなどで見受けられる方法であるようです。このやり方だけを切り出してもやる夫シリーズの営業トークというまとめが1つ作れそうです。

なお、ブログでも「俺は専門家だぞ」とばかりに専門知識を大上段に振りかざして解説すると一般受けしにくくなります。そこでよく「日常生活でこんなことが実際に起きた」⇒「どうやらそれはこういうことを言うようだ」⇒「それについて自分はこのように思う」という論法が取られます。

良い人悪い人

つっこまれ役と重複がありますが、良い人と悪い人によるメリハリの聞いたやる夫指導があります。グッドコップ&バッドコップ(良い刑事と悪い刑事)と言う言葉を聞いたことがある人がいるかと思います。やる夫の失敗に暴力的なつっこみを入れ、やる夫が落ち込んだところに優しい人が助け舟を出します。読んでいておもしろくもありますし、読者も良い人のアドバイスに対して心を開きやすくなります。自分が当事者となって良い人悪い人をされるともっと強力に作用してきます。

ローボールハイボール

最初に1万円で売ると言った商品を1000円に値下げされると安く感じます。実際には100円かもしれません。最初にやる夫が独学に挑戦し、難解過ぎて苦しむという展開があります。そこに解説役がやってきて「覚えるのはこれとこれだけでいい」と言われると「なーんだ2つだけポイントを押さえればいいのか」と納得できます。モチベーションも上がって理解が進みやすくなります。いきなり「この2つは大変重要なので覚えてください」と言われるよりも読者思いのやり方です。

けんじろう と コラボろう! > アメリカ人ビジネスマンが必ず使う6つの交渉テクニックとその対策http://blogs.itmedia.co.jp/kenjiro/2007/12/post_0361.html

失敗例の提示

必ず成功に導くプロセスを考える事は非常に困難です。一方で、ありがちな過ちに陥る過程を分析して事前に注意を促す事は容易である事が多いです。やる夫はお約束でありがちな失敗例を数多く列挙してくれます。これらは初心者にありがちな失敗や間違いを減らす事に寄与しています。

共通の敵

やる夫と読者に共通の敵を設定する事でストーリーに感情移入しやすくなります。やる夫が恋する異性にライバルが現れるという展開ではやる夫を応援してあげたくなります。ポイントは、読者にとってライバルが好ましからざる人物像として描かれる事です。敵役の人物にAを言わせて、やる夫にBを言わせれば読者はBこそが正しいと思いやすくなります。

オーディエンスの存在

自分以外の人がコメント入れているのを見て、それに流されるという効果があります。予備校などの授業のあり方で言われる事ですが、自分以外の人が納得しているとなんとなく自分も納得している気になってしまいます。本格的な学習への架け橋としてまず興味を持たせるという使命においては、挫折こそが真っ先に避けるべきものです。そう考えるとやる夫と多数の読者を利用して多少強引にでも最後まで読ませる事も重要であると言えますが、こと正しい知識を身につけさせようとするならば多数のものわかりの良い読者は未理解部分の認識を邪魔します。なお、まとめサイトでも>>1の投稿だけを忠実に抜くだけでなく、肯定的な意見を多めに散りばめた編集になっているところが多いようです。(敵役についてはオーディエンスから否定的な意見が出ると盛り上がる要因になります。)

ビルドゥングスロマン

ダメダメな状態からスタートして、やる夫が成長していきます。おもしろおかしいストーリーにするために最後はニートに戻ったり逮捕されるというオチもありますが、その過程では特異な才能を発揮する事が多いようです。某学習教材の勧誘パンフレットでは、私がターゲットにされていた頃は必ずスポーツと恋愛(または友情)と学業のすべてで成功するという流れになっていました。ほぼ必ず最初は「成績が落ちた」ですとか「勉強が大変で部活のレギュラーから落ちた」というところからスタートします。最初から完璧な主人公が成功に至るプロセスを上から目線で紹介してくれても「そんなの当然だろう」という気持ちになって共感がわきません。不完全な主人公が等身大の視点で未来を切り拓いていこうとする姿勢に人気が集まるのでしょう。

認知的不協和

アスキーアートを多用しても、掲示板への投稿だけで伝えられる情報は限られています。バイトの体験などは比較的情報量が少ないですが、学術系のものに関してはかなりバッサリやらなくてはまとめることができません。この情報量の少なさゆえ、まったく知らない分野についてゼロから学ぶのにはつらいジャンルもあります。そこで、自分が多少なりとも知っている分野について再確認を行うという読み方もあります。色々と見ていると横からマニアックな捕捉を入れる人が少なくありません。自分が興味を持った学問について「こんなのおもしろく思うの自分だけかな?」という迷いがある場合、自分以外の読者が「勉強になる」とか「なるほど」と肯定しているのを確認し、「自分が大変な思いをしてあの学問を修めたことは正解だったのか」という認知上の不協和を打ち消す効果があるのではないでしょうか。私個人としてはマルクス経済学が盛り上がっているのをみてそのように感じました。

生々しい情報

自分だけが知っているのには惜しいが、公開するには生々しすぎて躊躇されるような情報が含まれていることがあります。このあたりは匿名掲示板ならではです。匿名ではありますが、トリップやIDにより>>1であることは保証されますので、貴重な情報を公開することにより皆に喜ばれる事を実感できます。

 

色々な人がやる夫になって物語を作っています。1人がやっているわけではありませんので、そのモチベーションを推測することも簡単ではありません。これだけ有名になれば今後は「自分もやってみた」という動機の人が増えるでしょう。では初期の作者のモチベーションはというと、

  • まとめブログに載りたい
  • >>1000まで続くスレッドを立てたい
  • 良スレの>>1として崇められたい
  • わいわいやりたい
  • 「便所の落書き」なんて言われるところでの知的なやりとりというギャップがおもしろおかしい
  • 自分が作ったストーリーを読んでもらいたい
  • 知識豊富なところを見てもらいたい
  • 自分の専門に仲間を引き込みたい
  • 自分がやっている学問におもしろいと思う人がいるかどうか確認したい

あたりでしょうか。私も何か作ってみたいと思ってはいるのですが、やる夫で学ぶLotusScriptなんてさすがに人気出ないですよね。

      / ̄ ̄\   GetAllDocumentByKey(strKey)って第二引数省略?
    /ノ( _ノ  \     このViewの作りなら部分一致の文書までコレクションする必要ないだろ
    | ⌒(( ●)(●)     常識的に考えて・・・・・・。
    .|     (__人__) /⌒l
     |     ` ⌒´ノ |`'''|
    / ⌒ヽ     }  |  |              
   /  へ  \   }__/ /             / ̄ ̄\
 / / |      ノ   ノ           / ●)) ((●\’, ・
( _ ノ    |      \´       _    (   (_人_)’∴ ),  ’
       |       \_,, -‐ ''"   ̄ ゙̄''―---└'´ ̄`ヽ   て
       .|                  ______ ノ    (
       ヽ           _,, -‐ ''"  ノ       ヽ   r'" ̄
         \       , '´        し/.. >>@ | J
          \     (           /      |
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山口 陽平

山口 陽平

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