「不完全力」の時代が来た
完全・完璧であるものは、人を寄せ付けません。
逆に、不完全であり、つっこみどころ満載であるものほど、「仕方ないなあ、やれやれ」というセリフとともに、多くの人を惹きつけ、そこに互いが変化しあう相互作用が発生し、個々人では成し得なかったような、発想に満ち溢れたものや、喧々諤々として熱く楽しめる熱気や、新たな人と人の繋がりが生まれます。
今回はこの、「不完全力」が、ソーシャルメディアが普及し、個別スキルの高い人達が1つの仕事に集結することに大きな価値がある時代だからこそ、とても大切なポイントであることをご紹介致します。
###今回の要旨###
・人と人が交わることで価値が生まれる時代
・それを実現するためには、ツッコミどころがあるのが大切
・僕らが手慣れたスキルや手法は、実はツッコミどころを造らない
・ツッコミどころを造るには、具体的な方法がある
それでは、本編です。
■人と人が交わることで価値が生まれる時代
ここ10年、目覚しいテクノロジーの進歩によって、半年も年月が経過すると、それまで常識だったことが、通用しなくなることしばしです。例えばですが、スマホの無料通話/メッセージアプリであるLineは、サービス開始から1年足らずでユーザ数が2,000万人を突破、今や中高生も当たり前のように使うサービスとなりました。
こうした時代になると、例えばLineをどう使うかが書籍となる頃には、次のトレンドになるツールが出現し始めていますし、こうした新しいツールの情報そのものもウェブニュースやブログ・ソーシャルメディアに流れており、固定的な情報は、どんどん陳腐化し、さらに誰しもが知っていることとなるため、もはやあまり価値を持たなくなります。
それに代わって価値が高まってきているのが、実際にそうしたサービスを利用した複数の世代の人たち同士が、その利用経験や、自分の観点での感想などを共有し、話し合い、そこから新たな利用法や、将来への活用方法を妄想し、トライしていくといった、人と人が交わるという場面、経験の量となります。
■それらを実現するためには、ツッコミどころがあるのが大切
実際に、こうした複数の異なる観点を持った人同士が交わり、何かを仕掛けたり、一緒にプロジェクトを行うためには、ある種の「ツッコミどころ」が大切となります。
言い換えれば、
「この場に必要なのはAというスキルの人とBというスキルの人と・・・」
という風にして人が集められた状況よりも、
「このメンバーではAということができないし、Bってのも見当がつかない・・・」
という風に、危なっかしくて、助けたくなる状況の方が、
「しょうがないなあ、じゃあAなら僕が」
「Bだったら、あの知り合いの◯◯さんがいいよ」
という風に、より多様性に富んだ人たちが、自分の意志でどんどん飛び込んできてくれます。
そして、元々が「助けてあげよう」「僕が居なければ困るでしょ?」というスタンスで集まってきてくれているため、お互いのやり取りに遠慮もありませんし、より深く踏み込んだ検討や話し合いができ、そこから新しいものが生まれやすくなります。
■僕らが手慣れたスキルや手法は、実はツッコミどころを造らない
さて、一方で、いわゆる「プロジェクト・マネジメント」や、「プランニング」といった、僕ら多くのビジネスマンが教えられ、実践してきた方法は、この「ツッコミどころ」というスペースを、結果的に消してしまいがちです。
例えばですが、プロジェクト・マネジメントであれば、「主なリスクの洗い出しとその対策」という場面で、およそプロジェクトに必要そうな人材やパートナーはカバーしますし、常にプロセスの管理では、必要な人材や労働力が確保できるということに主眼を置くため、ツッコミどころは少なくなっていきますし、「ツッコミどころが少ない」ほど、よいプロジェクトであると思い込みがちです。
ですが、こうしたプロセスに慣れ過ぎると、そもそものプランを立てる際に、「自分の知っている範囲の人材」でカバーできることしかやらなくなったり、「失敗するかもしれない、弱みを見せることになるかもしれない」といった要素が排除され、「完璧で、とりつくシマがなく、周りはそのプロジェクトにちょっかいを出しにくい」という状況をどうしてもつくってしまいます。
もちろん、程度問題ではあるかもしれませんが、現在の変化が激しい時代では、こうした「完璧で取り付くシマがない」ことには、想像もつかない人から助けてもらったり、出会ったり、結果としてコラボしたりするチャンスを失ってしまう恐れがあります。
■ツッコミどころをつくる3つのコツ
では、実際にこうしたツッコミどころをつくり、多くの人に手助けしてもらい、そこに創発と熱気ある営みをするためには、どのような工夫があるか?この点について、最後に紹介したいと思います。
1:心からワクワクする何かに取り組み、無理目なピンを打つ
これは、プランニングをするときに、まずは「これが実現したら、どれだけ楽しいだろう?」という風に、心が小躍りするようなことを、初期のメンバー同士で話し合い、妄想を繰り広げ、固め、それを実現せざるを得ないような、現実的な「ピン」=固定条件を設定してしまうということを指します。
例えばですが、先日8月28日に渋谷ヒカリエで実施した「BiblioArena100」というイベントでは、「100人の前で、1VS1のプレゼンバトルを戦い、100人が一斉にプレートで判定するっていう舞台をつくったら、楽しいよね、興奮するよね!」という想いを最初に持ちました。
そして、そのための「ピン」は、さっさと「8月末に、100人を集めたイベントを実施します」と、FacebookやTwitterにて公言してしまうことです。
この「ピン」を置くことで、実現に向けた「手助け」を借りざるを得ない状況を、自ら創り出すことができます。
2:自分たちのコアな強み以外のことは、全部助けを求める
次に、このプランが決まったら、まずは徹底的に、自分たちの強みであることについて時間を使い、それ以外のことについては、極力助けてもらう前提でプランを組みます。
例えば、今回のイベントであれば「場のデザインと進行方向」については、企画チームが絶対的な経験、それからスキルを持っていたため、この部分については集中的に検討を行いました。
一方で、「集客」や「物理的な場所の確保」、それに「Ustreamによる中継」といった点は、そこそこしかノウハウがなかったため、無理に自前で解決しようとせず、「集客がピンチ」「場所がない・・・」といった形で、FacebookやTwitterを通して、周囲の人たちにヘルプサインを出していました。
こうすることで、いかにも危なっかしくて、でもどこかちょっかいを出したくなるような雰囲気の土壌ができてきます。
3:手助けを待つのではなく、手助けを求めて出かけていく
そして、実際に困っていることについては、誰かが手助けを申し出てくれるのを待つのではなく、「お願いするだけだったら、ダメで当然」という心持ちで、どんどん他の人に助けを求めていきます。
実際にやってみると分かるのですが、これは「助けを待っている」状況に比べて、遥かに広範な人に、遥かに高い確率で助けてもらうことができます。逆の立場になって考えてみればそうなのですが、自分のことを頼って、困っている状況で来てくれたら、もしその企画の内容に賛同でき、その人に何か魅力や可能性を感じることができたら、自分なら必ず協力します。
そんな、厚かましくも図々しい仕掛けをすることで、それまで接点のなかった多くの人に、協力していただき、そこから実際に、お互いがワクワクする仕掛けの指し手側に回ることができます。
こうしたステップを踏んでいくと、結果的に、それまで知りあうことがなかった人、あるいはこれまでメッコリと一緒に仕事をする機会がなかった人と、その営みの成功という共通ゴールに向かって、死力を一緒に尽くす経験ができ、互いの本質だったり、本当の相手の魅力が見えてきます。
そして、ひとたびこうした営みをしておくと、多くの人に対して「借り」をつくることができるため、今度はこうした人達が新しい仕掛けをしたり、何かの手助けが欲しいときに、気兼ねなく声をかけてもらうことができます。
そして、この「借り」と「貸し」の連鎖によって、普段であれば出会うことがなかったであろう人、接することがなかったであろうテーマ、組み合わされることがなかったであろうチームの一員となることができ、様々な可能性が拡がっていきます。
とても高い「完全力」の人で満ち溢れているこの日本だからこそ、たまには「不完全力」を発揮してみませんか?
それでは
▼上記文中に紹介した「BiblioArena100」というイベントの結果・詳細はこちらから
http://www.hikarie8.com/court/2012/08/biblioarena-100-100.shtml
▼このコンセプトをベースとして、友人たちと運営しているICJという団体のFacebookページはこちら
http://www.facebook.com/InclusionJapan
※このICJでは、上記にご紹介したコンセプトをベースに、以前様々な方々へ「借り」があり、それを元に多彩な依頼を受け、新たなイベントの仕掛けなどを行なっています。
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