オルタナティブ・ブログ > 平凡でもフルーツでもなく、、、 >

感覚人間の思いつき、、、気になった記事、、、雑記等

権利は全部自分のもので、何かトラブルあったら責任とれというのは、テレビ局からすると、まあ普通の感覚なんだろうな…と

»

仕事においての契約事や特許に関することは、後から揉めると泥沼化することが多いことや、契約内容についても専門家に依頼する財力と交渉力がないと一方的な内容を飲むしかないような事もあったりします。

そういう意味で、こういう領域での揉め事、喧嘩に巻き込まれない、もしくはうまく立ち回れるかも大事なポイントだと、ひとりのミュージシャンとしてレコード会社や音楽事務所と契約しながら仕事していた時代や、ここ15年の会社を経営してきた中で感じています。

そんなこんなで、テレビ朝日のスクープ映像映像投稿サイト「みんながカメラマン」の利用規約があまりにヒド過ぎると話題のようです。

権利は全部自分のもので、何かトラブルあったら責任とれというのは、テレビ局からすると、まあ普通の感覚なんだろうな…と

音楽のほうでも演奏に参加したミュージシャンにCDの売上に応じて収益の分配が受けられるまでにはそれなりの時間と交渉があって実現したことです。ちなみに買い取りという契約をしてしまえばどんだけレコード会社が儲かろうと、参加した歌い手さんミュージシャンは3万とか5万のギャラを払えば終わりで、投資する側として買い取り方式ほど有難い話しはありません。

このような例として有名なところとしては、およげ!たいやきくんの印税の件があります。

シングルの印税は子門・なぎら共に買い取り契約だったため、売上げに応じた歌唱印税は支払われず、子門は5万円、なぎらは3万円の吹込料の支払いにとどまった。しかし、子門には後にヒット記念としてレコード会社から100万円と白いギターが1本贈られている。

また、映画スターウォーズの契約に関連するエピソードも関連グッズによるビジネスモデルを考察するうえでは外すことができない事例かと

ルーカスは、配給会社である20世紀フォックスとの交渉において、監督としての報酬を抑える代わりに、作品に関わるすべての権利(商品化権など)を確保。これによって、登場するキャラクター・メカなどの関連グッズを大々的に製造・発売した初めての映画となり、ルーカスに莫大な利益と、映画作家としての自由を与えることとなった。

テレビ局の体質を知るところの事件としては、納豆データ捏造事件を思い出す方も多いのでは

この事件はスポンサーから電通、関西テレビそして一次請けの日本テレワークとその下に入る制作会社への予算の流れも報告書で明らかになり驚いた一般の方々も多いかと思いますが、業界的には当たり前の話しかと。

この事件の報告書はPDFでウェブにもアップされています。

ちなみにこの報告書のに契約関係の話が出てくる部分あり、

  • 関西テレビにおける「あるあるII」の粗利益約3.7パーセントと相当に低いものである
  • だが、関西テレビ全国ネットワークの看板番組を確保・維持することは極めて重要
  • 携帯サイトや二次利用による収益の拡大を期待したため大元の番組から多額の収益をあげる必要性はなかった

と、こんな指摘とともに最後こんな記載があります。

しかし、「あるあるI」「あるあるII」は一社提供番組で、なおかつ電通買いきり番組であったために、関西テレビは高視聴率番組であったにもかかわらず広告料の値上げ交渉を申し入れにくい状況にあった事情があげられる。

そして、報告書108ページの「あるあるI」「あるあるII」制作予算の推移とか見ると、ほんと制作会社を経営しているものとしては泣けてくるものある訳ですが、こんな感じでテレビ局や代理店ががっちり儲かる仕組みは押さえておいて、制作会社には権利関係は一切認めず使い倒す構図はいまだに続いていると思います。

Photo

このような経験から、自分の場合は個人という立場であってもスタジオ・ミュージシャンのほうが隣接著作権で保護される部分があり本当に良かったと思いますし、実際その恩恵を現在も受けています。

つい最近、知的財産、IT法務に特化した法律事務所の方々と仕事をさせていただく機会があり、テクノロジーが高度化するなかで知財管理や知財戦略と呼ばれるところの重要性は高まるばかりだと肌で感じました。

権利が犯されていればそこに適切な主張をしていくことは当然しなければいけません。Tesla Motorsがもつ特許を開放すると発表したことは日本でも大きく報じられました。ほかの自動車メーカーがTeslaの技術を採用して産業を拡げるためにはこの方向性は正しいだろうという論評があり、この点については私も同意です。

ただ、イーロン・マスクはTEDに出た際にクリス・アンダーソンからロケット製造コストを75%削減するにことを実現したイノベーションと特許に関して印象的なやり取りがあるのでご紹介しておきたいと思います。(13分55秒あたりから)

イーロン・マスク:私たちは様々な技術を 大きく進めました 機体 エンジン 電子機器 打ち上げの運用 革新したことは 山ほどあります 私たちがしたことを この場でお話しするのは ちょっと難しいんですが—

クリス・アンダーソン:真似されたら 困りますものね 特許を取ってないから 私からするとすごく興味深いことです

イーロン・マスク:ええ 特許は取りません

クリス・アンダーソン:特許を取るのは 取らないのより危険だと?

イーロン・マスク:我々の主要な競争相手は国家で 特許を強制できるか 疑わしいもので (笑いと拍手)

ここでのイーロン・マスクの話しは。逆説的ではありますが、今回テレビ朝日が一般投稿者をどのように捉えていたのかを考えるに示唆を与えてくれるものだと思います。

ネットの普及とソーシャル化が進むなかで一般の声が様々なところに届くメリット・デメリットがあります。このような時代においては、旧来メディアが変革を必要としていることは多くの人が指摘していることかと思います。

今回の件では、テレビ朝日のような旧メディアの人たちは平成生まれの人たちが働くようになっている現在も昭和的な発想から抜け出せていない現実を感じさせてくれました。

実はテレビ局が権利を総取りで、制作会社はただたた作り続けるしかない構図については、業界を健全に発展、育成していく観点からも認識されている課題なはずです。

今回の騒動を機に、個人との向き合い方だけでなく、制作会社との関係においても権利収入を認める領域を拡大して、より多くの領域にお金が配分される仕組みが検討される一歩になったら良いのですが…

Comment(0)