日本でベンチャー企業が発達しないのは大企業が蓄積を吐き出さないから
昨日この記事をFBで見かけて、
ここ最近ずっと思っていた起業ネタについてやっと触れることが出来そうだったので、思いつくままですが書いてみたいと思います。
まず、自分の手元にある教科書「現代の経営学」にベンチャー・ビジネスは何と解説されているか
経営組織の解説において、新たな組織構築の探求ということで「社内ベンチャー」が紹介され、ベンチャー・ビジネスという以下の用語解説が出てきます。
新製品・新技術などのアイデアの発明と開発を行うことを目的とする小規模の独立的な企業。大企業の研究開発部門やデザイン部門に属していた人たちが独立して外部に企業を設立するケース(スピン・アウト・この場合、親会社が一部出資を行うケースもある)や、任意の少数の専門家グループが自営の形で設立する場合がある。
恥ずかしながら自分はこんな風にこの用語を理解しておりませんでした(苦笑)
ここで疑問を感じたのは、社内ベンチャーについての解説が先にあり、その流れの中でベンチャー・ビジネスの話が出てきたことです。
自分の予想が外れてしまったこともあり、もう少し詳しいことが書いてあるものはないかということで、「ゼミナール 経営学入門」にはどんな風に書かれているか見てみました。
こちらの「企業という生き物、経営者の役割」という章に、「資源分配としての企業」という項目があり、市場メカニズムを通じて、古い分野から新しい産業への労働移動がおき、設備移動も起きているが、企業の中でもそうした資源移動は起きるという経営判断の話が出てきます。
ここで考えたのは、日本においては確かに起業率は低くいとしても新しいテクノロジの採用などにおいては、このような企業内資源移動で賄ってしまっている部分がそれなりにあるのではないかと思ったのですが更に参考になりそうな話が続きます。
一国全体の資源分配を考えて見ると、「世の中すべて市場」というケースと、「世の中すべて組織」というケースの両極の間に現実は位置する
これは市場と組織のミックスは歴史の中で揺れ動いていますが、組織の圧力が強ければ確かに起業する数も減るという話になりますよね。
この資源分配メカニズムが経済合理的な優劣に応じて使い分けられながら、組織は学習し、市場は実験する、組織は蓄積し、市場は利用するという話に繋がって、その対比の例としてアメリカのパソコン産業の例として
ワークステーション「アルト」ゼロックス本社が真剣な資源投入を行わず、不満のたまった技術者たちを引き抜いた、Appleのスティーブ・ジョブズに引き抜かれた人たちやビル・ゲイツに誘われマイクロソフトに入った人々がパソコン時代を作っていった話が紹介されていて、つまりはこういう話、
ゼロックスという大組織が、バロアルト研究所で蓄積をした、しかし、その技術資源を利用したのは、アップルやマイクロソフトであり、彼らに続くシリコンバレーのベンチャーたちである。市場メカニズムというメカニズムを利用して、あそこに商売のネタがあるぞと目ざとく考えた企業家たちが、大組織が蓄積したものを掠め取っていって、それをビジネスに仕立てて大儲けするのである。
ベンチャー起業、ベンチャー・ビジネスという用語の定義をきちんとする必要もあるかと思いますが、前述の大学生向けのテキスト2つに共通している「大組織が蓄積したもの利用する」ということを基本前提として、日本においてベンチャーが育たない理由を考えるとそこから見いだされる答えはいろいろあると思います。
「ゼミナール 経営学入門」でこのあとに出てくる話をかいつまんで紹介しておきます
- 企業家たちが利用するさまざまな資源は誰かが蓄積しなければこの世には存在しない。
- 単独の個人がまったく組織の力を借りずに蓄積したものが大半なのではない。
- ゼロックスの例の他にもIBMが蓄積し、ベンチャーが利用するということが広範に起きている。
- IBMはダウンサイジングのプロセスでその蓄積結果を大量に市場に吐き出し、それをシリコンバレーという市場の場が使っている。
- シリコンバレーは世界中の組織でさまざまに蓄積された資源を、ぜひ使ってくれと人々が世界中から集まっている。
では我々の日本はどうでしょうか?
日本は組織のメカニズムへ偏っていた時期が長く、そういう意味では無駄なものも含め膨大な蓄積があり、それを組織がうまく使えていないでおり、それぞれの組織にある蓄積をうまく結びつけて、市場で上手に活用する人が出てきても良いのでは
と「ゼミナール 経営学入門」の著者は指摘します。
こう考えると、確かに日本企業は過去の実績や前例を求めるからベンチャーが育ちにくいという事だけでなく、そもそも日本の大企業が蓄積した技術を吐き出すことや、それらがダウンサイジングしたときに得られるビジネスチャンスに興味がないから育たないという考察も成り立つような気がするのですがどんなもんでしょう?
それでは最後に、創業からそれなりの年数経過してからのお話ですが、ベル研究所が発表したCCD(電荷結合素子)に着目し、日本のソニーがデジタルビデオカメラを開発していく流れの最初の部分がこちらに書かれていたりしますので、ご興味ある方はご覧いただければと思います。
P.S.
いろいろ日本で中小・零細がやりにくい事を書き並べることも出来たのですが、自分の学んだ技術をベースに独立起業するケースとベンチャーを一緒に書いてしまうと混乱しそうだったのでまず「ベンチャー」ってどういう定義なのってところに触れてみました。