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日本企業がグローバル視点で電子書籍ビジネスを考えたらやっぱりEPUBだったというお話

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昨日のIDPFのEPUB3コンファレンスの「3. EPUB3日本語対応・実践事例を中心に —いつから始まるか? 誰がそれを担うのか?」についてレポート的な事を書こうと思っていたのですが、ここ最近急激にEPUBだと皆が騒ぎ始めているのにちょっと違和感を感じなくもない私と谷川さんであったりする訳ですが(苦笑)

このこの3部の話を読むまえに、EPUB3の国際化にあたって大きな貢献をされた村田 真さんのこちらの書類まずは一読いただくことをお勧めします。

この中で「国際標準という戦い」という項目があり、そこでは駄目な発想ということで以下のような指摘がされていて、

  • 国内合意から始めるという発想
  • 国内の肩書で勝負するという発想
  • 夜郎自大の発想

逆に、国際の場で勝つ発想としてこんな例示が

  • 台湾・香港はもちろんのこと,中東の要求まで対処しよう。その一環として日本語にも対処しよう。
  • ベテランエキスパートの国際的な人脈を大事にしよう。
  • 肩書・所属組織はほとんど気にしない。
  • 国内では単に情報交換だけしかしない。
  • 日の丸を立てない。日本の都合を前面に出さず,日本独自と見られないように心掛ける。

この話は、3部の話だけでなく4部の「4. 総評として 日本語対応の現実を踏まえ—評価と課題」にも関連してくる話になってくるのですけど、3部に登場している方々のプレゼンを拝見すると、いかにワールドワイドのマーケットで効率良くビジネスを展開していくかという検討したらやっぱEPUBになったんだろうというのが強く感じられました。

  • 3. EPUB3日本語対応・実践事例を中心に—いつから始まるか? 誰がそれを担うのか?

    井上 啓氏(ソニー・エレクトロニクス デジタルリーディング事業部 ソフトウェア担当バイス・プレジデント)/安藤 連氏(楽天 イーブックジャパン事業 プロダクト担当部長)/田代豊氏・岡本正史氏(集英社 デジタル事業部)

つまり日本のことだけじゃなく見てる前提が世界レベル、集英社は日本発でコンテンツを広めるためにどんな方策が良いか、たしか岡本正史氏はADPSを利用し多言語化したマンガコンテンツの開発、流通にも深く関わっていた方のはず。そしてソニーの井上 啓氏は普段は日本ではなくサンノゼで仕事をしていると自己紹介されていたのも印象的でしたが、ソニーと楽天はこのあとご紹介する写真にもあるようにビジネス戦略の基本中の基本としてグローバル戦略があるという構図。

英語圏の電子書籍閲覧環境として文字ものならEPUB2で十分という意見もあるなか、村田氏の言葉を借りればWebと電子書籍のシナジーを追求しながら世界中の言語・文化を扱うという理念を追求していくとEPUB3で実装してきた仕様は英語圏以外の人類の電子的な読書環境をより良いものにしていこうという理念がやはりないと出来ないですし、その環境整備が結果としてビジネス面でも大きな成果を与えることになるかもしれないという事で動き出したのがこの2012年7月なのだ…という気がします。

各社の取り組みの特徴的なところをご紹介しておくと

集英社のEPUB 3.0仕様に基づいたOpen Manga Format6月15日からこのフォーマットでの配信がスタートしているとのことで、EPUBをEasy to Publishと見立てたOMFの概念図はこちら

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OMFパッケージャーはページデータに書誌情報を入力するだけでOMFファイルが生成されるようになっているとのこと。

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OMFからstandard.opfとしてあまり多様な表現能力がないEインクデバイス向けの出力を管理しつつadvanced.opfのほうではxhtmlとJavaScriptで色々仕掛けを行ってく仕様で、静止画像だと伝わりにくい部分ありますが、こちらの写真にあるような様々な表示方法への対応をしてくれていて、

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集英社としてはこのOpen Manga Formatを広めてきたい考えということでフィックス型のレイアウトのコンテンツ制作手法としてどう浸透していくか注目したいところです。

さて次はソニーのEPUB3展開について。

アメリカ・カナダでは2006年から自社ストアを稼働させ、日本は2010年からで、UKストアはこの4月から展開、

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デバイスについてはパートナーストアと提携しながら20カ国でビジネスを展開しているとのこと。

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デバイスについては、専用端末のほか、2011年にタブレットのビューワー、2012年の6月にスマートフォン向けのビューワーを装備、

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今後はPCのほうへとマルチ・デバイス対応をさらに進化させる予定とのことですが、日本後縦書き対応については読書に最適なReaderデバイスをまずは対応させていくとのこと。

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そして最後にここ数日話題をさらっている楽天のkoboに関してのプレゼンはこちら。さすが社内公用語が英語なだけにスライドは英語のみ、もしくは英語と日本語の併記となっています。

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まずkoboの特徴、デバイスもさることながら、アマゾンKDPと同様の個人向け出版プラットフォームを海外では展開している点かと思います。

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楽天koboは、提供する全ての日本の書籍のフォーマットとしてEPUB3を選択とありますが、これも海外の会社がEPUB2対応がベースだったことを考えれば当然とも言える流れかと思います。

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koboはもともとカナダの会社ですし、ソニーもこのビジネスは米国で一番最初にストアがオープンしているので、サービスをグローバル展開しようとしたときに、EPUB2から引き続き3をサポートしていくのは真っ当な流れで、ここに日本だけ独自仕様に持ち込むことのほうが無茶というか余計な仕事増やすだけだというのは多くの方が理解いただけるかと思います。

日本語は特殊ですし出版の歴史として大事にしたい事が沢山あるのは理解できますが、そっちの立場で見える眺めと、まず世界中の言語・文化を扱うのが前提だという眺めにおいては大きな差があります。

国際の場で勝つ発想もしくは国際の場で通用する発想を必要としている方々には、日本企業がグローバル視点で電子書籍ビジネスを考えたらやっぱりEPUBだったという観点で、この講演いろいろ参考になる事が多かったのではないでしょうか。

最後に、今回登壇された方々世界的に有名な会社にお勤めで経歴や肩書きも申し分ない方々な訳ですけれど、ビジネス規模の違いはあれ、オープンなフォーマットであるEPUBを利用して世界相手に電子出版を行うプラットフォームが存在しているという事を忘れてはいけないと思いますし、こういう場で大企業の取り組みと肩を並べて小さな会社や個人であっても成功するチャンスがあるのが自分がEPUBを推してしまう理由だったりするんですよね。

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