いまどきの企業web担当者に求められること
10年程前のホームページ制作といえばテキストと画像もGIF画像で出来るだけファイル容量を減らす、もしくはページ容量制限に従って作成するというような制約事項の中で作成することも多く、従来会社案内やカタログ制作、各種メディアへのプレスリリースなど文章が主体であった企業広報担当者にとってはwebに対する知識や利用法を覚えることで制作会社と協力してサイト運営を行うことは比較的容易だったと思います。
そこに各種webシステムの活用の場面が増えてきたことで状況は一変しました。そうですシステムの発注に関して、社内のITチームと調整をしながらシステム開発会社やホームページ制作会社と仕事をしなくてはいけない状況になってしまった訳です。当然ある程度の規模となるとITチームがフロントに立ちますが、サイトはコーポレートサイトの中で稼動するわけですからブランド戦略上責任を負う広報チームもまったく関わらない訳にはいきません。
この辺から企業web担当者の深い悩みは始まっているのですが、オープンソースがどうしたこうしたとか、サーバをIDCに置くとか、ロードバランスで負荷分散、、、ってな話を広報担当者が全部理解しろっていうほうが無理というか、その勉強の機会・時間は会社にとっては損失なのかもしれないな、、、と制作会社の立場で見ていても感じること多数です。
そこに今度はリスティング広告、SEO、SEMというオンライン広告への出稿・管理などの仕事が増えて来た訳ですが、日本で上場企業は2007年において4000社に少し足りないくらいらしいですが、この会社がすべてマスメディア広告をやっているかというとそんな事はなく、広告取扱についてのレベル差は非常にある訳です。
それに非上場であっても広告に慣れている会社もあれば、広告といっても予算や実施規模は本当に幅広いものがありますし、思いっきりBtoBでマスメディア広告などは普段使わない、、、という会社のホームページにおいてもSEOのキーワードで色々な会社が営業かけたものですから、この分野になれていないタイプのweb担当の悩みはここでまた増えてしまったことになります。
そしてここ数年はブログメディアとか、動画活用などこれまた新しい流れが出てきたわけですが、テレビ広告を取り扱った経験がある広報担当者ってこれまた限られた数になると思います。(ここで宣伝担当はテレビCMなどを含むマスメディア広告に対する業務経験がある人として敢えて触れないようにします)
ちょっとここで整理をすると、上場企業のホームページ開設率が99.8%という数字があり、そこに非上場、中小企業の区分けに入る企業の数(ホームページの数)を加えると物凄い数になるでしょう。
ですが、製造業で戦後発展してきた日本の歴史を考えるとBtoBで成り立っている会社も多く、この数の会社すべてにいまどきのweb活用を行える広報・宣伝の担当者や部署が存在するか、、、というと状況は一変するのではないでしょうか。
個人的な見解ですが、BtoB企業においてグローバル対応(イントラにおける地域制約を越えた情報共有や活用を含む)や有能な人材の確保に向けたコーポレートサイトの活用は企業戦略の中でも最重要課題と思うのですが、BtoCのサイトにくらべ結果の数値化が難しい為になかなか実現できていない会社さんも多いと思いますが、企業担当者の方はどのようにお考えになるでしょうか?
ここでさっきの話題に戻ると、テレビ広告とわざわざ書いた理由は企業紹介ビデオとは基本的にコンセプトが違うことを理解してほしいからです。ブランド戦略上、重要な位置を占める企業サイトにおいてはいろいろなタイプのユーザが訪問してきます。そこには映像としての演出方法としては退屈かもしれないが、そういう見せ方が適切な企業紹介映像コンテンツの需要もあれば、多くの人に注目してもらうためのテレビコマーシャル的なアプローチが必要な映像コンテンツへの需要も存在するからです。
多分皆さんの会社には現在、「簡単に映像制作・配信を可能にします。」という営業活動が行われていると思うのですが、今まで広告映像の制作経験が無い担当者の方は、是非テレビ番組制作やCM制作がどのように行われているかを勉強していただきたいと思います。
勉強というと堅苦しいですが、たとえばお手軽なところではNHKの見学でも良いでしょうし、バラエティ番組の観覧でもいいです。とにかく業務の現場を一度でも見て欲しいのです。撮影現場もそうですが、映像編集やMAと呼ばれる音声収録と編集作業の現場の経験もきっといろいろな局面で役立つと思います。
仕事に変更はつきものですが、その変更がどの程度実作業に影響を及ぼすのか?を理解することで管理工程についての真剣度は大きく変わってくると思いますし、映像編集やナレーションの内容について企業担当者がOKを出したものはその時点で印刷物と同様、完成物として扱われます。
後からやっぱり、、、というのは依頼者の責任において費用負担をしてやり直しが必要になりますから、発注者の判断能力、責任についての自覚を鍛えるにはまさに最適な現場と言えるでしょう。
「いまどきのweb担当者に求められること」として書き始めましたが、簡単にポイントを整理すると、
- プレスリリースなど各種原稿(文章)作成能力
- 会社案内、製品カタログなどに始まる各種印刷物の制作管理能力
- 上記い以外においても企業広報担当者として必要とされる基本能力・素養は有しているという前提
- テキスト、図版レベルでのホームページ活用についての基本知識とアイデア創出能力
- セミナー登録フォームなど簡易なwebアプリケーションなどの仕様策定とプログラム開発会社との発注管理能力
- 開発事案においてIT部署との連携が必要な場合は社内・社外とのコミュニケーション能力も
- ブランド戦略における基本知識
- 各種マスメディア広告に対する基本知識
- オンライン広告についての基本知識と仕組みの理解
- 広告映像制作について印刷物の工程についての理解と同程度の知識を持てることが望ましい
こんな感じでしょうか、、、それと何より大事なのは自社のブランド戦略やweb施策として様々な事に興味を持ち、トライ&エラーをする覚悟があるかだと思います。
やることすべてが成功するなんて都合の良い考えには土台無理があります。回避可能な失敗はしないに越したことないですが、やはり失敗の中から学ぶことがその次に繋がることが多いよな、、、と感じることが多いです。
それは、末端の業者の立場だとしても企業担当者の方と共に努力をして失敗した案件は、必ず次に繋がっていて、その関係において超えたハードルの数が増えるほど関係性はどんどん強化され、結果としてアウトプットされるものの質は向上していくからです。
ここでは責任を他所に転嫁するのではなく、失敗を前向きに捉えることが出来る企業体質の有無も担当の方が前向きに仕事できる環境として非常に重要な要素と思います。