ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

頭を使わない時間を増やす

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ITに強いビジネスライターの森川滋之です。

前回、生産性の話をしました。

生産性には、物的労働生産性と付加価値労働生産性の2種類あるが、労働時間を減らすには付加価値労働生産性を挙げなければいけない。そのためには仕事を速くできるようになると同時に単価も上げていかなければいけない。では具体的にはどうすればいいか――という話でした。

このうち仕事を速くできるようになるというのは、まさに物的労働生産性を上げるということで、得意分野に絞り、さらにテーマを横展開することでそれは可能になると述べました。

物的労働生産性を上げるために、もう1つ重要な要素があるので、今回はそれについて書きます。

ライターに特化した話になっていますが、ITエンジニアなどでも十分応用が利く内容だと考えます(というより、私のライティングの進め方・考え方は、システム開発プロジェクトの進め方・考え方がベースになっています)。

頭を使わない時間を増やす

ライターはタイプが速いほうが有利とは思いますが、しかしむちゃくちゃ速くなくても大丈夫です。たとえば、1冊の本を書くことを考えてみましょう。

四六判1冊200ページでだいたい10万文字と言われますが、最近の本は図版および改行や空行が多いので、実際には平均すると75,000文字程度となります。

10日で執筆しようと思うと、1日7,500文字。休憩などを除いて正味5時間執筆するとして、1分あたり25文字という計算になります。

もしただ打つだけとしたら、これはかなりゆっくりしたペースです。しかし実際には考えながら打っているのでこんなものになります。ですから、ただ打つだけなら1分間に100文字も打てるスピードがあれば、10日で本1冊は十分書けるでしょう。

しかし、10日で1冊書ける人はなかなかいません。私の倍以上のスピードで打てたとしても、10日で書くのは難しいのではないでしょうか。

10日で(というより50時間で)1冊書ける人は、打ち始めたらあまり頭を使わないから書けるのです。タイプが速いから書けるわけではありません(なお昨年の私の実績では、35~40時間で脱稿していました)。

どうしてもタイピングが苦手なら、今は音声入力という手もあります。しかしそれでも考えながらなら、50時間で1冊は難しいかもしれません。

では、どうすれば頭を使わない時間を増やせるのでしょうか。

習熟するしかない

これはまったく身も蓋もない話になりますが、頭を使わないようになるためには習熟するしかありません。

クルマの運転と同じです。教習所で実技講習を受けていた頃は、何をするにも頭を使っていたはずです。しかし免許を取って、クルマを運転するようになると、個人差はありますが、だんだん考えずに運転できる時間が増えていったはずです。

かなり高度な世界だと、将棋や囲碁もそうだと聞いています。プロになると、私たち素人が考えないといけないことのほとんどは直観的に処理するのだそうです。アマチュアでも定跡・定石を勉強することで、直観的に処理できる部分はある程度増えるのではないでしょうか。私は将棋も囲碁も苦手なので、想像するしかないのですが。

執筆も同じで、書く量が増えるにしたがって、あまり考えずに書ける範囲が広がっていきます。そうなるとしめたもので、自分よりはるかにタイプの速い人よりもたくさんの文章が書けるようになります。

それでも現時点で、1分あたり30文字ぐらいです。ブラインドタッチで1分間に100文字以上は打てますので、まだまだ伸びしろがあると言えるでしょう。

物的労働生産性はメインの仕事だけではない

では、どこで頭を使うべきでしょうか。

ライターの仕事の流れは、「企画→取材&調査→構成→執筆&推敲→修正」となります(企画には入らないこともあります)。

この中で最も頭を使うべきは、企画と構成となります。

ちなみに取材&調査は、そのものの時間を短縮するのは難しいので、質問票をテンプレート化しておくなど、準備にあまり頭を使わないで済むようにします。

企画段階で十分な合意がないと、手戻りの原因になります。手戻りがあると、生産性が大きく低下します。特に脱稿(執筆&推敲が終わった段階)後に、単なる修正ではなく、手戻りレベルの書き直しがあるとたいへんなことになります。企画がしっかりしていないと、そういうことになりがりです。

構成は企画段階でもラフなレベルで考えることになりますが、取材&調査が終わった段階で十分に頭を使って見直すことが重要です。この段階で作った構成が執筆時にもほとんど変わらないのであれば、執筆そのものは自動作業のように進んでいきます。

なかなか完璧にはいきませんが、それでもできる限り頭を使ってしっかりした構成を作ることが執筆時間の短縮につながります。

書籍の執筆でなく企業の販促コンテンツでも、企画と構成に頭を使っておくと、執筆はほぼ自動的になります。いい加減な構成を作ると、執筆時間は倍以上になります。

あくまで私の経験値ですが、3,000文字ぐらいの仕事で考えますと、30分ぐらいでいい加減な構成を作って執筆を始めると、執筆&推敲に3時間半かかります。トータル4時間です。倍の1時間をかけてきちっとした構成を作ると、執筆&推敲が1時間40分程度で終わります。トータルで2時間40分です。かなり生産性が向上するのがお分かりでしょう。

頭を使わないから単純作業ではない

さて頭を使わない部分が単純作業なら、そこを機械化することで、さらに生産性を高めることができます。しかし、実際は単純作業ではないので、現時点では機械化が難しくなっています。

習熟した作業というのは説明できない、つまり分解等が難しいので、機械化が難しいのです。少なくともいま流行りのRPA(Robotic Process Automation)での自動化は無理です。

これを機械化できる技術があるとすれば、ディープラーニングでしょう。

たとえば自動運転は、ディープラーニングが現実化したため、こちらも現実的になりました。人間の名人に勝利したアルファ碁もディープラーニングが中核のアルゴリズムです。ディープラーニングで学習したAIに記事の要約をさせたら、人間の記者よりも優秀だったという話も聞きます。

企画書、構成案、取材音声および調査書類と原稿を突き合わせてディープラーニングさせれば、ほぼ自動的に執筆ができるようになるかもしれません。推敲は残ると思いますが、しかしかなり楽になるでしょう。

そうなるとライターは失業、とはなりません。企画・構成・取材・調査・推敲がライターの主要スキルとなり、これらに優れた人だけ残ることになるはずです。

執筆以外の作業が、将来的にも機械化が難しいという意味で、より難しいわけです。そちらに時間をかけられるようになれば、コンテンツの質は現在より著しく底上げされることでしょう。


最新のIT動向やITのビジネスへの応用について、経営者などビジネスパーソンに分かりやすく伝えることができるライターです。

最近いただく主なテーマは下記の通りです。

  • AI関係(機械学習、ディープラーニング、RPAなど)
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大手SI企業の基盤&ネットワーク技術者でしたので、インフラ&システム運用関係のテーマにも対応できます(クラウド、データセンター、バックアップ、レプリケーション、HCI等々)。

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