先日書いた「起業についてひと言」に、ツイッターで多数のコメント、ご質問をいただきました。意外と起業を考えている人って多いんだな、という印象を受けました。
 前回も書いたように、起業を考える人が増えることは良いことだと考えています。弊社のオフィスがある上海でも、大学卒業生の半数は起業を目指しています。僕の大学があるシンガポールや、シンガポールに似た文化のある香港でも同様に、大学卒業と同時に当たり前のように起業する人たちがいます。それはそれで、文化として根付いているところもあり、僕は良いことだと考えています。
 日本は、元々がサラリーマン社会であり、定年まで働く文化があったものが、必ずしもそうではなくなってきた。証券会社が倒産し、大手都市銀行が合併し、航空会社まで破綻してしまった現代において、定年まで働くことだけを考えることに無理があるわけで。
 しかし、だから、起業を考えるというのは短絡的な気がしています。佐々木さんも書かれているように、1円起業(正確には会社を作ること)が出来るからといって、1円で会社は運営できません。
 中には「一人でやるから、コストは最低限で済む」という人もいますが、一人でやるということは、全部一人でやらなくてはならない、ということです。営業活動以外に、提案書、見積書、請求書、発注書といった書類作成、発行。そして銀行に行くのも、郵便局に行くのも、税理士との打ち合わせも、領収書のとりまとめも、ぜーんぶ自分でやらなくてはならないのです。
 会社員時代には「誰かが」やってくれたことは、誰もやってくれないのです。そこが大きな違い。パソコンを買うのだって、オフィスの掃除だって、コピー機のトナーの取り替えも、全部自分なんですよね。
 もし仮に、「社長と呼ばれたい」「社長の椅子」「社長室」なんて、少しでも考えているのなら、起業はお薦めしないですね。
 もちろん中には、ベンチャーキャピタルから投資してもらって、という方もいらっしゃいますが、それはそれでROI(投資対効果)を考え続けなくてはなりません。投資してもらって、でもお金使っちゃって、「じゃあ、しょうがないですね」とはならないわけです。こちらは、自分のお金で起業するよりもリスクが高い。

 日本には、ベンチャーを育てるという風土は根付いていません。まだまだ逆風の中を歩くしかない。もちろん中には個人投資家(エンジェル)になってくれる人もいるでしょうが、平野さんが書かれていた、個人投資家の道を閉ざそうとする動きがある国で起業するためには、それなりの覚悟が必要であるということです。

 もう一度言いますが、起業しようとする心意気、起業を考える風土が根付くことは良いことだと考えています。しかし、現実逃避的に起業を考えることは薦めませんし、応援もできません。ぜひ、自分ときちんと向き合って、何をすべきなのか、この事業をやりたいから起業するのだ、といった「準備」をしていただきたいものです。

kumaboo

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大木 豊成

大木 豊成

スマートフォン法人導入コンサルティングのイシン株式会社 代表取締役。
著書に、iPad on Business、ソフトバンク流『超』速断の仕事術、ファシリテーターの道具箱(共著)がある。

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