ITIL is ITIL
2013年1月1日から、ITサービスマネジメントの教科書的な存在である ITIL(IT Infrastructure Library)に、バージョン表記をしてはいけないことになりました。正確にはかなり前からそうなっていたんですが、移行期間が2012年12月31日で終わり、2013年1月1日から、いよいよバージョン表記をしちゃだめ、ということになるのです。
これは、かなり前から ITIL の生みの親である Cabinet Office(英国内閣府)が提言していた「IITL is ITIL(ITILはITILである)」ということを現実に移すことを意味しています。つまり、ITILをバージョンによって区別するのはナンセンスであり、(今後も改善されて変わっていくだろうが)基本的な考え方は変わらないということなのです。
そもそも、ITIL v2 をベースに社内改善を図ってきた企業の一部は、ITIL v3 が登場したことで困惑したことでしょう。見た目には、ITIL v2 と v3 は大幅に変わっているかのように見えるからです。実際にはほとんど同じことを言っていて、単にまとめなおした(それと足りない領域を加筆した)ものなのですが、ぱっと見は全然違うものに見えます。Cabinet Office は、この混乱をなんとかして収束させたかったのでしょう。
勝手な推測ですが、これは iPad にも言えるのではないか、と考えています。第3世代の iPad に「iPad3」という名前がつかなかったのは、この時点で第3世代のiPadが登場して1年もたたないうちに第4世代のiPadが登場することが計画されており、世間の混乱(あるいは批判)を避けるためだったのではないか、と思うのです。事実、第4世代のiPadは、iPad mini の登場の影でひっそりと発表されました。CPU周りなんか格段によくなっているにも関わらず、です。
これは、製品とサービスの違いのような気もします。製品の立場としては、バージョンを堂々と掲げて「従来製品よりも良くなりました、だから買ってください」って言ったほうが(顧客にとっても売り手側にとっても)いい場合が多いでしょう。一方サービスは、そもそも最初から「たゆまぬ努力と創意工夫によってどんどん良くなっていく」ことが宿命づけられていることもあって、バージョンという概念がありません。ホテルやレストランが「現在はバージョン 2.1 のサービスをご提供しています」なんて言いませんものね。
IT の世界は、ますますサービス業に近づいてきているような気がします。