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徹底してネットワーク分野を成長させてきたシスコシステムズに未来はあるか!!:IT業界ウォッチャーシリーズ第6回

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今回はグローバルなIT企業の戦略ウォッチの第6弾になります。

今回モデルとするのはシスコシステムズです。

シスコシステムズは1984年に、スタンフォード大学で働いていたレンボサックトサンディラーナにより、設立されました。その後、この2人の創設者は、早くに退職しましたが、シスコシステムズ自体は、その後のITバブルとバブル崩壊を辛くも乗り切り、現在では世界有数のグローバルIT企業の一つなりました。

シスコの得意分野はITとは言っても、アプリケーションシステムではなくネットワークです。元々が企業向けのルーターからスタートしており、代々のCEOは、ネットワークという得意分野を軸にしながら製品ライン、サービスラインを増やしてきました。

特に1991年に入社した元IBMのジョンチェンバース1993年CEOになってから、この「得意な分野で世界一になる」という経営路線が明確となりました。

具体的に彼の経営戦略を見ていきましょう。

ジョンチェンバースCEOの経営理念は「選択するのは顧客」として「顧客に必要とされるソリューション提案を可能にするための技術にはすべて対応するサプライヤーになる」としました。

その経営戦略としてはGEのジェックウェルチが実行した「ナンバーワン、ナンバーツー戦略」を徹底的に実践しました。

「ナンバーワン、ナンバーツー戦略」とは「市場をセグメント化して、そのセグメントでNO.1かNO.2になることを目指す」戦略です。

そしてその戦術は基本的には、自社技術の開発ですが、それを補うものとして積極的なM&Aを実施しました。

ただ、シスコシステムズのM&Aは通常の企業のようにマーケットシェアを金で買うというよりも、PMI(Post merger & aquisition)と呼ばれる買収した後の人材活用に重点を置いたと言われています。すなわち買収した企業の優秀な技術者が、シスコブランドとして、技術開発、新製品投入に貢献する、ということです。それはシスコシステムズの買収後の社員の残存率の高さに現れているようです。

ジョンチェンバースがCEOになった1993年から現在まで190社近くの企業を買収しています。

1993年 1社
1994年 3社
1995年 4社
1996年 7社
1997年 6社
1998年 9社
1999年 19社
2000年 23社
2001年 2社
2002年 5社
2003年 4社
2004年 12社
2005年 12社
2006年 9社
2007年 12社
2008年 5社
2009年 6社
2010年 6社
2011年 6社
2012年 5社
2013年 10社
2014年 4社
2015年 6社
2016年 4社

特に2000年に23社も買収しています。この時期、シスコシステムズの時価総額がなんと5000億ドルとなり、時価総額で世界一になったようです。

買収した企業内容を見ると、

1993-1996 StrataComに代表される「高機能スイッチ」のベンダーを買収し、そのセグメントでNO.1になる

1997-現在 GeoTel Communications, Cerent, IBM Networking Hardware Division, Pirelli Optional Systems, Arrowpoint Communications に代表される「コンピューターネットワーキング」の企業を買収し、このセグメントのリーダーとなる

2005-現在 Scientific Atlanta, WebEX、Tandberg, NDS Groupに代表される 「映像ネットワークやWeb会議サービス、ビデオ会議」のセグメントでもシェアNO.1

また近年増えてきた新たな買収分野としては、

Sourcefire買収に代表される「コンピューターセキュリティ」の分野
Meraki, Jasper Technology買収に代表される「クラウド」の分野
AppyDynamics買収で、「アプリケーションパフォーマンスマネジメント」の分野

などが挙げられます。

このように従来から最も強いシェアNO.1の「スイッチングやルーター」を軸に「ネットワーク」の各セグメント分野から買収戦略により、NO.1, NO.2のシェアをとってきたのがシスコシステムズの戦略でした。

ただシェア指向かというとそうでもなく、過去10年の売上、利益、利益率を見ると

2007年 売上349億ドル 利益73億 利益率21%
2008年 売上395億ドル 利益81億 利益率20%
2009年 売上361億ドル 利益61億 利益率17%
2010年 売上400億ドル 利益78億 利益率19%
2011年 売上432億ドル 利益65億 利益率15%
2012年 売上461億ドル 利益80億 利益率17%
2013年 売上486億ドル 利益100億 利益率21%
2014年 売上471億ドル 利益79億 利益率17%
2015年 売上492億ドル 利益90億 利益率24%
2016年 売上493億ドル 利益107億 利益率22%

業績をみても、しっかりとした成長と利益を出している事がわかります。

最新の2017年第一四半期の数字を見ても成長は止まりましたが、まだまだ業績は良いようです。

売上高 124億ドル(1%増)
純利益 23億ドル

このようにジョンチェンバースの「ナンバーワン、ナンバーツー戦略」は非常に効果を挙げて、ネットワーク分野でシスコシステムズを有数のグローバルIT企業にしました。

今後はどうなるのでしょう。

2015年に、CEOが20年間シスコシステムズを引っ張ってきたジョンチェンバースからチャックロビンス代わりました。ただジョンチェンバースはしばらく会長職に留まるようです。従って、しばらくは従来の「ナンバーワン、ナンバーツー戦略」による技術開発、企業買収は変わらないでしょう。

チャックロビンスは2016年7月のラスベガスでのカンファレンス「Cisco Live US 2016」の基調講演で「デジタルトランスフォーメーション」とそれを後押しするシスコシステムズの姿勢を表明しました。またそのためのキーワードは「セキュリティ」「IOT」であると語っています。

またシスコは2016年に3月に企業ネットワークの最新アーキテクチャである「Digital Network Architecture(DNA)」を発表しています。このDNAは企業が求めるセキュリティやコンプライアンスの要件を満たしてインフラ層の仮想化とネットワークの制御、管理の自動化、クラウドアプリケーションとの用意な連携など、現代に要求される様々な要件を実現する製品アーキテクチャであると発表しています。

ただ、現代は、従来のようにオンプレミスで顧客がネットワーク機器を持つ時代から、クラウドベンダーから借りる時代に変化しています。

シスコシステムズは、昨今の急速なクラウド化、もっと具体的に言うならば、顧客がIT機器やネットワーク機器を買わずに「アマゾンウェブサービス(AWS)」や「マイクロソフトAzure」のクラウドサービスに切り替えている、動きに対してどう対応していくのか、まだ明確な戦略を見いだしていないように見えます。

ただそれに対する影響や試行錯誤は出ています。例えば

「2016年8月 シスコシステムズは全従業員の7%に相当する5500人の人員削減を発表」

つまりオンプレミス業務からクラウドサービスに移管することによって需要が先細りしているために、旧来型のサービスに従事する従業員を削減するものとも考えられます。


「2016年12月 シスコシステムズは約10億ドルを掛けて構築したクラウドサービス「InterCloud」を2017年3月に中止することを決定」

こちらはもっと深刻ですが、AWSやAzureに対抗するために投資したシスコブランドのクラウドサービスが、現段階では見込みがないためにクローズするということのようです。

シスコシステムズに未来はあるのでしょうか。

ただ最近の発表の中でシスコシステムズの戦略は少しずつ変わりつつあるようです。
2016年10月に日本法人の鈴木みゆき社長が語った内容によると、

「サービスビジネスの売上高比率はグローバルで28%、2020年までに50%まで増やす目標がある」

このサービスビジネスの中身は、複数のクラウド環境をまとめて管理する「CloudCenter」や、ネットワーク接続を監視するDNSサービス「OpenDNS」、そして2016年10月に発表したクラウドセキュリティの新サービスとして、「Cisco Umbrella」「CloudLock」などを指すようです。

最新の2017年第一四半期決算における各分野の売上高でも

製品 1%減
サービス 7%増
スイッチ 7%減
ワイヤレス、サービスプロバイダービデオ 2%減
コラボレーション 3%減
データセンター 3%減

とあり、「サービスビジネス」が唯一伸びています

このようにシスコシステムズは、「機器ビジネス」の減少分を、こうした「サービスビジネス」の拡充で補う戦略のようです。

ネットワーク分野の機器製品ビジネスではほぼ限界まで成長したシスコシステムズは、ビジネスもデルを根本から変えてしまう最近のクラウドビジネスにおいて、またそれに対して、今後どのようなサービス戦略でいくのか、大変興味深いものがあります。

(参考サイト:YCharts、IT pro, IT media、The wall street journal, ASCII.jp、日本経済新聞、Wikipedia)


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