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「このはなたれ小僧が分かったような口叩いてんじゃねぇ」―同じ立場でなければ本当の気持ちは分からない

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私がまだサラリーマンだったころ
独立準備のために
ビジネススキル的なことから哲学的なことまで
たくさんの本を読みました。

たくさんの本を読んだ後
「経営者には○○が必要だ」とか
「経営者そういう気持ち、分かる」とか
ブログに考えをまとめて書いていました。

今から思えば
「このはなたれ小僧が分かったような口叩いてんじゃねぇ」
と思うほど、恥ずかしいことを書いていたなと思います。

ボクの好きな一冊に、経営コンサルタントの椎名規夫さんの
「人を動かす力」という本があります。

人を動かす力 (アスカビジネス)

この本の中に、読むたびに「そうだなぁ」と思う
好きな一節があります。

人を動かす力を持つリーダーは、原則的に相手の気持ちを感じることはできても、理解することができないことを知っています。ある条件のときを除いて、相手の気持ちをわかることはできないのです。

「ある条件」の例として
椎名さんは次のようにおっしゃっています。

たとえば、東日本大震災では、多くの方が家族を失いました。もし、その当事者をカウンセリングしたとします。そうすれば、相手の悲しみが伝わってくるかもしれません。そこで、「あなたの気持ち分かります」と言えますか?言えないと思います。しかし、「あなたの気持ちがわかります」と言える方も存在します。それは、同じ体験をしたことがある方です。

私は最近、この言葉を胸に刻むことが多いです。

私がサラリーマンを辞めて
経営者を経験し、今思うことは
サラリーマンの時に言葉にしていたことと
実際に体験してみて分かったこととは
大きくかけ離れていたということです。

そんな、口で言うほど甘いもんじゃなかった。
マーケティングの本に書いてあるほど、お客さんと出会うのは簡単じゃなかったし
お金を稼ぐということは、理屈で言うほど簡単じゃなかった。

そういう、厳しさがたくさんありましたよ。ぶっちゃけね。

逆に

お客さんと出会う喜びや、感謝の言葉をもらった時のうれしさ
少しずつ形になっていく充実感。
そんな、やってみて分かった喜びもたくさんありました。

42.195km走ったことがある人しか、その苦しさとゴールしたときの喜びは分からない。
一生懸命走っている人に、
「その苦しさ、分かります」とか、「もっと頑張って走れ」とか、言えないよね。

リーダーになったことがある人しか、人をまとめる辛さと楽しさは分からない。
本当はいいチームを作りたいと思っているけど、それが叶わない人に
「大変ですね」とか、「お前のやり方が悪い」とか、言えないよね。

その立場になったことがある人しか、分からないことがたくさんあります。
だから、昔の自分を振り返ると、
「このはなたれ小僧が分かったような口叩いてんじゃねぇ」
改めて、そう言ってやりたいと思うんです。

私が何かしらの相談に乗るとき、相談者の気持ちになれるのはごくわずかです。
私には、解決できることは何もありません。
その人の課題は、その人の課題。
何とか、乗り越えてもらうしかありません。

でも、できれば、本当の苦しみや喜びが分かるように
私自身、たくさんの経験を積んでいきたいと思うのです。

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