竹内義晴の、しごとのみらい:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 竹内義晴の、しごとのみらい

10年後、仕事を「ツライもの」から「楽しいもの」に変えたい

システム開発はプロジェクトを作って行われることも多いもの。成果を求められる現代、「メンバーのやる気がない」「顧客との関係がうまくいっていない」など、プロジェクト運営でお悩みの方もきっと多いことでしょう。私もリーダーになりたてのころ、「どうしたらチームを1つにまとめ、成果を出しながら、メンバーがワクワク楽しく働く職場ができるのか?」が分からずに悩んだことを思い出します。

「そうだ!IT業界にはコミュニケーションのフレームワークがあるじゃないか!」と、PMBOK(Project Management Body of Knowledge)やPMP(Project Management Professional)を勉強しました。「共通のビジョンや明確な目標を持つこと」「役割分担や責任を明確にすること」など、どんな情報を、誰に、どのように伝えるのかを定義し、それがうまく運用できているのかをマネジメントする……「そう、これが正しいコミュニケーションの姿なんだ!この資格を取って、マネジメントスキルが分かれば完璧だ!」――そんなふうに考えていた時代もありました。

今では、そう思っていた当時が懐かしく感じます。

先週の土曜日、PMBOKBABOKに関する講演会に行ってきました。わたしはITコーディネータの資格を持っています。資格を維持するためいには継続的な学習が義務付けられています。そこで、時々知識ポイントを獲得するために講演会や、参加している組織の勉強会などに参加しています。

ところで、PMBOKやPMPといえば、IT業界のプロジェクトマネジメントのフレームワークとして知られています。今回、PMBOKBABOKの講演会を聞いて「IT業界のコミュニケーションの指導は、このままでいいのだろうか?」と、大きな危機感を覚えました。

もちろん、利害関係者を分析したり、どのような情報をやり取りするかなど、コミュニケーションをマネジメントすることはとても大切なことです。ですが、PMBOKやPMPが語られるときに、「何をコミュニケートするのか?」を語られることはあっても、「どのようにコミュニケートするのか?」を語られることはほとんどありません。「信頼関係が大切だ」「積極的傾聴が大切だ」はわかります。では、それを「どのようにするのか?」がわからないのです。そのために、多くの方は数値化したものを管理すること(つまり、マネジメントスキル)ばかりに意識が向き、「人そのもの」に意識を向けることが少なくなってしまうのです。

今まで、プロジェクト運営では、例えば、「目標管理」のような、様々な手段やノウハウが紹介されてきました。ひょっとしたら、私の専門分野であるコーチングもその中の1つなのかもしれませんし、PMBOKも、PMPも、BABOKもそうなのかもしれません。人材育成ツールやノウハウを中心に考えるあまり、本来最も大切であるはずの、「メンバー1人ひとり」を見てこなかったのではないかと思います。実際、わたしの周りにはPMPの資格を持っている方が何人かいます。その多くの方が、自分のチームをうまくまとめることができずに悩んでいます。

「目標管理は効果がない」「コーチングは効果がない」など、ノウハウの効果を疑う声が聞こえています。そして、「目標管理がダメならコーチング、それがだめなら、最近はPMBOKやPMPがいいらしい……」そのように、いろんなノウハウを次々と試すのは、ある意味仕方のないことなのかもしません。でも、「人そのもの」を見ていないので、ノウハウや手法をいくら変えても、結果はさほど変わらないのです。

また、最近のノウハウは分析やタイプわけなど、それを読むと「なるほど」と思える一方で、実際の現場で使おうと思うと、スキルや知識体系が複雑で難しく、とてもじゃないですが覚えられないものがたくさんあります。「うまくコミュニケーションを取るのはこんなに複雑なのか。やっぱり、コミュニケーションって難しいな」となってしまいます。

でも、本来私たちは、目標を他人から管理されなくても、褒められればやる気になるし、認められればうれしくなる。「人の役に立ててうれしいな」と思えば、もっとしてあげたくなるし、うれしくなれば新たなことを始めたくなり、おもしろければチャレンジしたくなる……その上で大切なことは、メンバーや顧客との間で、「伝える」「褒める」「問いかける」「聞く」などのような、もっとシンプルなことのはず。シンプルだからこそ応用もできるし、いろんな場面で生かせるのです。

難しいツールやノウハウもいいのですが、このような、「人としての原点」にもっとフォーカスした、シンプルな人材育成に関われたらいいなと思っています。

追伸:

手前味噌で恐縮ですが、ITmediaエンタープライズで連載しています「ビジネスマンの不死身力」で拙著の連載記事がスタートしました。1回目は職場を変える「会話のチカラ」です。今日、お話させていただいた内容の1つの解決策として、ご参考になれば幸いです。

タケウチ

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コメント
ooki 2010/03/08 10:29

こんにちは。
おおむね賛成で、一点だけ。
PMBOKおよびPMPは、ITのためでなく、元々建設業のために開発されましたよね、たしか。
建設業は部材で管理するのに対し、特に小規模のシステム開発は個々人のPCの中に成果物があるので、余計に管理しづらいわけで。
なので、仰有るとおり、コミュニケーションスキルが必要になると思います。
当然ですが、PMPもコミュニケーションスキルも、それぞれ手法であって目的ではないですもんね。

記事も拝見させていただきました。また、いろいろとお聞かせいただければ幸いです。

タケウチ 2010/03/08 10:43

ookiさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

> PMBOKおよびPMPは、ITのためでなく、元々建設業のために開発されましたよね、たしか。
そうなんですね。ところで、建設業ではうまく回っているのでしょうかね?

> 当然ですが、PMPもコミュニケーションスキルも、それぞれ手法であって目的ではないですもんね。
そうですね。
スキルはとても大切ですが、今、多くの場面で、スキルを中心に伝えられ、
スキルに人を当てはめてしまうようなところが、私が危機感を抱いた点だと思いますね。

ooki 2010/03/26 06:56

返信しそびれていました。

> ところで、建設業ではうまく回っているのでしょうかね?

うまく廻っているため、海外でも受注しています。
日本の建設業の海外進出は、プロジェクトマネジメントの成果と言えるんですよ。
もちろん、PMBOKだけではなく、コミュニケーションスキルの高いプロジェクトマネージャーが多いということですね。
最近、コーチングと称して「深く頷く」とか「相手に正面から向き合う」といった「形」から入るえせコーチが多いように感じます。
そもそもコミュニケーションを資格制にした時点で失敗なんですが。
目的を達成するためにどのようにfacilitateするのか、のはずなんですけどね。

竹内さんの記事も楽しく拝読しています。今後とも、よろしくお願いいたします。

タケウチ 2010/03/26 07:54

ookiさん、返信ありがとうございます。
ookiさんのコメントを読んで思ったんですが、日本人は元々、相手の気持ちを考えたり、「あうんの呼吸」のような、非言語の部分でのコミュニケーションが得意だったのかもしれないな~と。そういうマネージャーがたくさんいたんじゃないかと。
そこに、横文字のいろんなスキルが登場し、形で示せること、数値で示せることが正しいような風潮が流れてきたんじゃないかと。
日本人が本来得意な感性や、感じるという部分に立ち返ったら、うまく行きだすような気がしてきました。

また、いろいろ教えてくださいね。ありがとうございました。

YO 2010/07/07 06:37

はじめまして。
記事、拝見させていただきました。

実は、私自身、PMBOK,BABOKの研修講師をしております。
竹内様のご意見、全て、その通りです。

特に、IT業界のエンジニアは、コミュニケーション力が、圧倒的に弱く、理論だけで通そうとします。しかし、理論ではなく、理屈です。下手すると、屁理屈になりかねないほどです。
しかし、人は理屈で動くのではなく、感情で動きます。ですから、一番大切なのは、感情をいかに動かすかに尽きます。

PMBOK、BABOKは、理論としては、知らないよりは知っているほうが良いでしょう。しかし、大事なのは、それらの知識を踏まえた上で、「各エンジニアと、どのようにコミュニケーションを取り、どのように意図を伝え、どのように感情を動かすか」だと思います。

ですので、実務においては、PMのすべての業務量を100%とするならば、PMBOK知識ベース20% コミュニケーションなどの人間関係80% くらいの重要度ではないかと思っております。(特に根拠は無し。私の勝手な憶測)

ですので、研修で「PMBOK」を教えても、それだけではあまり意味は無く、「頭でっかち」の知識になってしまう危険性をはらんでいます。大事なのは、理論を理解したうえで、エンジニアにどのように接し、どのように組織し、どのように気持ちよく動いてもらい、どのように問題解決するか、それをコントロールするのが、PMの役割ではないでしょうか。

書くと長くなるので、今回はこのあたりで切りますが、竹内様の方向性は間違っていません。お考えは、全くその通りです。是非、ご活躍されますよう、願っております。

また、コメントさせていただくかもしれませんが、よろしくお願いします。

突然のコメント、失礼致しました。


追伸:PMBOKは、元々、建設業やプラントなどの、大プロジェクト向けに作成されたもので、ITを念頭に置いたものではありません。ですから、理論的にも、ITにはマッチしない部分が多々あります。PMBOKを使うときに、「この部分は、ITではあてはまらない」「この部分は使える」と言う事を意識しないと、大失敗します。(特に、理屈先行型のPMですと、PMBOKでこのように言っているから、こうすべき などと、訳のわからない理不尽なことを言い出します)しかしながら、建設業などにおいては、PMBOKはかなりの成果を挙げている事も事実です。

タケウチ 2010/07/07 08:10

YOさん、コメントありがとうございます。
現場でご活躍の専門家からのすばらしい知見とコメント、光栄です。

> どのようにコミュニケーションを取り、どのように意図を伝え、どのように感情を動かすか」だと思います。
同感です。「どのように」が大切ですよね。

人は理屈ではなく感情で動くもの。まず、コミュニケーションを通じて信頼関係を作ること。その上で、PMBOKのようなスキルが生きてくるのではないかと思いました。

今後ともよろしくお願いいたします。

江崎通彦 2010/12/03 00:40

PIMBOKとBABOKのわかりにくいところを解決する方法、DTCN-WBSの方法「WBSの再定義と使い方」の本を出版しました、ご利用ください、
http://dtcn-wisdom.jp/00001-PMSE.pdf
またその展開方法の解説書は、下記のbabokへの適用研究で見ることgくぁできます。
http://dtcn-wisdom.jp/J-historical%20reference/0001-BABOK-henotekiyou.pdf


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竹内 義晴

竹内 義晴

NPO法人しごとのみらい理事長
コミュニケーションの専門家 研修講師 心理学トレーナー 「職場がツライ」を変える会話のチカラ 著者。

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