システム開発はプロジェクトを作って行われることも多いもの。成果を求められる現代、「メンバーのやる気がない」「顧客との関係がうまくいっていない」など、プロジェクト運営でお悩みの方もきっと多いことでしょう。私もリーダーになりたてのころ、「どうしたらチームを1つにまとめ、成果を出しながら、メンバーがワクワク楽しく働く職場ができるのか?」が分からずに悩んだことを思い出します。
「そうだ!IT業界にはコミュニケーションのフレームワークがあるじゃないか!」と、PMBOK(Project Management Body of Knowledge)やPMP(Project Management Professional)を勉強しました。「共通のビジョンや明確な目標を持つこと」「役割分担や責任を明確にすること」など、どんな情報を、誰に、どのように伝えるのかを定義し、それがうまく運用できているのかをマネジメントする……「そう、これが正しいコミュニケーションの姿なんだ!この資格を取って、マネジメントスキルが分かれば完璧だ!」――そんなふうに考えていた時代もありました。
今では、そう思っていた当時が懐かしく感じます。
先週の土曜日、PMBOKとBABOKに関する講演会に行ってきました。わたしはITコーディネータの資格を持っています。資格を維持するためいには継続的な学習が義務付けられています。そこで、時々知識ポイントを獲得するために講演会や、参加している組織の勉強会などに参加しています。
ところで、PMBOKやPMPといえば、IT業界のプロジェクトマネジメントのフレームワークとして知られています。今回、PMBOKとBABOKの講演会を聞いて「IT業界のコミュニケーションの指導は、このままでいいのだろうか?」と、大きな危機感を覚えました。
もちろん、利害関係者を分析したり、どのような情報をやり取りするかなど、コミュニケーションをマネジメントすることはとても大切なことです。ですが、PMBOKやPMPが語られるときに、「何をコミュニケートするのか?」を語られることはあっても、「どのようにコミュニケートするのか?」を語られることはほとんどありません。「信頼関係が大切だ」「積極的傾聴が大切だ」はわかります。では、それを「どのようにするのか?」がわからないのです。そのために、多くの方は数値化したものを管理すること(つまり、マネジメントスキル)ばかりに意識が向き、「人そのもの」に意識を向けることが少なくなってしまうのです。
今まで、プロジェクト運営では、例えば、「目標管理」のような、様々な手段やノウハウが紹介されてきました。ひょっとしたら、私の専門分野であるコーチングもその中の1つなのかもしれませんし、PMBOKも、PMPも、BABOKもそうなのかもしれません。人材育成ツールやノウハウを中心に考えるあまり、本来最も大切であるはずの、「メンバー1人ひとり」を見てこなかったのではないかと思います。実際、わたしの周りにはPMPの資格を持っている方が何人かいます。その多くの方が、自分のチームをうまくまとめることができずに悩んでいます。
「目標管理は効果がない」「コーチングは効果がない」など、ノウハウの効果を疑う声が聞こえています。そして、「目標管理がダメならコーチング、それがだめなら、最近はPMBOKやPMPがいいらしい……」そのように、いろんなノウハウを次々と試すのは、ある意味仕方のないことなのかもしません。でも、「人そのもの」を見ていないので、ノウハウや手法をいくら変えても、結果はさほど変わらないのです。
また、最近のノウハウは分析やタイプわけなど、それを読むと「なるほど」と思える一方で、実際の現場で使おうと思うと、スキルや知識体系が複雑で難しく、とてもじゃないですが覚えられないものがたくさんあります。「うまくコミュニケーションを取るのはこんなに複雑なのか。やっぱり、コミュニケーションって難しいな」となってしまいます。
でも、本来私たちは、目標を他人から管理されなくても、褒められればやる気になるし、認められればうれしくなる。「人の役に立ててうれしいな」と思えば、もっとしてあげたくなるし、うれしくなれば新たなことを始めたくなり、おもしろければチャレンジしたくなる……その上で大切なことは、メンバーや顧客との間で、「伝える」「褒める」「問いかける」「聞く」などのような、もっとシンプルなことのはず。シンプルだからこそ応用もできるし、いろんな場面で生かせるのです。
難しいツールやノウハウもいいのですが、このような、「人としての原点」にもっとフォーカスした、シンプルな人材育成に関われたらいいなと思っています。
追伸:
手前味噌で恐縮ですが、ITmediaエンタープライズで連載しています「ビジネスマンの不死身力」で拙著の連載記事がスタートしました。1回目は職場を変える「会話のチカラ」です。今日、お話させていただいた内容の1つの解決策として、ご参考になれば幸いです。
Special
- PR -| ooki | 2010/03/08 10:29 |
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こんにちは。 記事も拝見させていただきました。また、いろいろとお聞かせいただければ幸いです。 | |
| タケウチ | 2010/03/08 10:43 |
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ookiさん、こんにちは。コメントありがとうございます。 > PMBOKおよびPMPは、ITのためでなく、元々建設業のために開発されましたよね、たしか。 > 当然ですが、PMPもコミュニケーションスキルも、それぞれ手法であって目的ではないですもんね。 | |
| ooki | 2010/03/26 06:56 |
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返信しそびれていました。 > ところで、建設業ではうまく回っているのでしょうかね? うまく廻っているため、海外でも受注しています。 竹内さんの記事も楽しく拝読しています。今後とも、よろしくお願いいたします。 | |
| タケウチ | 2010/03/26 07:54 |
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ookiさん、返信ありがとうございます。 また、いろいろ教えてくださいね。ありがとうございました。 | |
| YO | 2010/07/07 06:37 |
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はじめまして。 実は、私自身、PMBOK,BABOKの研修講師をしております。 特に、IT業界のエンジニアは、コミュニケーション力が、圧倒的に弱く、理論だけで通そうとします。しかし、理論ではなく、理屈です。下手すると、屁理屈になりかねないほどです。 PMBOK、BABOKは、理論としては、知らないよりは知っているほうが良いでしょう。しかし、大事なのは、それらの知識を踏まえた上で、「各エンジニアと、どのようにコミュニケーションを取り、どのように意図を伝え、どのように感情を動かすか」だと思います。 ですので、実務においては、PMのすべての業務量を100%とするならば、PMBOK知識ベース20% コミュニケーションなどの人間関係80% くらいの重要度ではないかと思っております。(特に根拠は無し。私の勝手な憶測) ですので、研修で「PMBOK」を教えても、それだけではあまり意味は無く、「頭でっかち」の知識になってしまう危険性をはらんでいます。大事なのは、理論を理解したうえで、エンジニアにどのように接し、どのように組織し、どのように気持ちよく動いてもらい、どのように問題解決するか、それをコントロールするのが、PMの役割ではないでしょうか。 書くと長くなるので、今回はこのあたりで切りますが、竹内様の方向性は間違っていません。お考えは、全くその通りです。是非、ご活躍されますよう、願っております。 また、コメントさせていただくかもしれませんが、よろしくお願いします。 突然のコメント、失礼致しました。
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| タケウチ | 2010/07/07 08:10 |
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YOさん、コメントありがとうございます。 > どのようにコミュニケーションを取り、どのように意図を伝え、どのように感情を動かすか」だと思います。 人は理屈ではなく感情で動くもの。まず、コミュニケーションを通じて信頼関係を作ること。その上で、PMBOKのようなスキルが生きてくるのではないかと思いました。 今後ともよろしくお願いいたします。 | |
| 江崎通彦 | 2010/12/03 00:40 |
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