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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

顔面神経麻痺を患った話 (6/6) ながーいお付き合い

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実は顔面神経麻痺は誰もが発症する可能性がある病気。ただし軽度の場合には比較的短い期間で元通りに回復出来るようです。しかしながら私が2019年の正月明けに発症した状況は症状を判断する専門医による40点満点の機能評価で4点。医師からも余り見ないほどの重症だと言われた状況でした。
そしてそれから足掛け5年も経って症状も随分と落ち着きました。
最初の段階で医師からは「元の顔に戻る可能性は非常に低い」」と言われていたのですが、黙っていればそれとはわからない程度にようやく回復してきた今、今回は6回目。
これで一応最終回にします。

 

自分にとっての予兆を思い起こしてみる

予防しようがない話といえばその通りなのですが、それでも体の不調のサインや何かの予兆になりそうな状況の例を知っていれば病気を抱え込んで妙な苦労をしなくても済むことがあるかもしれないと思っています。私の場合、今あらためて思い起こすと長いものだと30年以上前から、そして少なくとも発症の5年くらい前にはこんなことが全部起きていました。多分私にとってはこれらが顔面神経麻痺の予兆だったのですが、当時はお気楽にスルーしていました。

  • 元々30代前半くらいから特に曇天の日に眩しさを感じたり頭痛が出ることがあってサングラスをすると治っていたのだけれど、実はこれは左目の瞼が下がっていて光の入る量が減り左右の光の量の差を脳が処理できなくなって頭痛に。その光量の差を補うために脳が瞼を上げようとしたら右の瞼だけが上がって更に差がついてしまうがサングラスで目に入る光量を下げることで解決出来ていた。
  • 40代に入った頃から疲れると左目だけ何故か眼瞼下垂気味になることがあったが、それがいつの間にか常態化していた。また口角も左側のほうが下がり気味になることが多かった。要は疲れてくると顔の左右バランスが崩れて左側全体が下がり気味になる傾向があったし、それ自体には自分も気づいていた。
  • 目を大きく開こうとしたときの額の皺の入り具合が左右で違っていて実は左のほうが皺が少ない感じだったが、左右で違うのは人間として左右対称にはできていないのでそれが普通だろうと思っていた。
  • 口の中の左側だけ時々奥歯で噛んでしまい口内炎のようになっていた。
  • ドライアイの症状は左目のほうが酷く目が乾いてコンタクトレンズが剥がれるほどなのに、その状態の時ですら何故か時々涙が止まらなくなる事が時々あった。(後に実は涙腺の問題でのドライアイだけでなく目の下側が下がっていたため涙の回収もうまく行かなくて涙が流れ出してしまい結果的に目が乾いていたというのが発覚)
  • 発症の1年くらい前から顔の右側だけで笑うなと妻に言われ始めていたが本人にはそんな自覚はなかった。
  • ストローやタバコを無意識に唇の左側や真ん中ではなく右側で咥えるのは癖だと思っていた。
  • 時々原因不明の味覚障害が出て、たいてい2週間程度で回復していた。
  • 時々左耳だけ小さな音が聞こえなくなり音の方向感覚がおかしくなっていたが、これは数日で治まることが多かった。ただし元々耳管から唾液が中耳に逆流したり湿潤性中耳炎になりやすい体質だったので、症状が起きた時の痛みの出方が違う(中耳炎は激痛だけれど時々無痛なのに音が聞こえにくくなっていた)にも関わらず他の原因があるとはあまり考えていなかった。

こんなに何か出ているなら医師に相談すれば良いのにと今なら思いますが、たとえば通常の健康診断では何も触れない部分だし、それらがある日(おそらく)全部つながることになったなんて想像もしていませんでした。完全にノーガード。正直自分を責めてもどうしようもないのですが、どうやら私の場合はこれらが積み重なる根本原因があったようで、それが顔面神経麻痺という事に結実してしまったといえるようです。
おそらく。多分。

 

今ってどうよ

味覚や臭覚は完全に戻りました。

聴力の左右差は残っています。これは多分鼓膜の周囲の筋肉の問題。更に左耳の後ろを最初の手術でザグった関係で空間が広がっていて、たとえば耳を覆う形のヘッドホンを付けると左耳で聞こえる音が高度差で耳が詰まった時のような音になります。また一度目の手術で鼓膜と内耳の間を一度分解している関係もあるのか、聞こえる音の質が左右で異なります。
音の詰まりについてはいわゆる耳抜きをするとある程度元に戻るのですが、二回目の手術の時に左の耳の穴からメスを入れて開いた関係で左耳の穴が実は右より真っ直ぐかつ大きくなってしまい、たとえばいわゆる「カナル型」のイヤホンは左右の穴の大きさの差の問題以前に左耳への収まりが悪くなって使えなくなってしまいました。それでも仕事上でヘッドセットが必要になる状況はあるので、今は骨伝導のヘッドセットを使っています。鼓膜から耳小骨の部分はちょっと面倒くさいのですが内耳は元からきちんと機能しているので。

そして口の動き。ハンバーガーとかを大口あけて食べるには指で左の唇を広げないとちょっと食べにくいのですが、去年くらいから一応人前でも食べられるようにはなりました。
一方、丼やマグカップから何かを飲むときは気を付けないとまだ駄目です。ちょっとこぼれてきます。ラーメンにはレンゲが必須です。レンゲでもこぼれるんですけどね。
因みに口がきちんと動かないおかげで人前で歌は歌えません。正確に言うと意思をもってぎゅっと閉じれない口の左端から唾液が微妙に流れ出してしまい、それを拭いながら歌うことになるので面倒くさいんです。まぁカラオケ行けないといっても、まぁそれだけの話ですが。

眼瞼下垂は明らかにあります。左の瞼は右より明らかに下がっていて、しかも疲れが溜まってきたりするとさらに下がって目の前が見えなくなったりするほどです。そうなってくるとテーピングのテープで額を引っ張り上げるしかないのは今も変わっていません。これには美容整形と同じ方法で筋膜を引っ張り上げる手術という対症治療はあり病気の治療のためなので健康保険は使えるよという話もあるのですが、そうすると本当に閉じられなくなるので今のところ踏み切れていません。

唾液と涙と鼻水の共同運動について、鼻水が明らかに連動するのは去年の夏くらいにはほぼ収まりました。でも今でも柑橘類、酢の物、酸っぱい系のグミ等は涙なくしては食べられません。ぱっと見た目は「おいしくて涙が止まらないんだ」とでも思ってくれたらよいとは思ってますが、まぁ仕方ない。そのうち収まるかも知れないし、ずっとそのままかも知れないし。

そして顔は... 顔の左側はやっぱり自分の意思通りに動くわけではないですが、それでも左の口角をぐっと左に寄せられるようにはなりました。そうすると一緒に左目も閉じるんですが、まぁそれはご愛敬。

 

ながーいお付き合い

顔面神経麻痺を患うこと自体それほど多いわけではないですが、私の知り合いの中にも実は数人いらっしゃることがわかりました。それでもたいていの場合は数週間で元通りに回復されていて、話を聞くまでそうとは知ることはありませんでした。

実際のところ、交通事故などで顔面神経自体を損傷して麻痺が残るケースは別として、病気として発症してずっと後遺症が残るケースはそれほど多くないようです。ただ実際のところゼロではないし、私自身がまさにそうなってしまいました。別に誰を恨むとかそういうのは全くありませんし、顔の動きがおかしくても私は私なのですが、特に発症直後のころは60近いジジイの自分ですら鏡をみて「この顔をひと様に晒して生きていたくない」と本気で思ったのは紛れもない事実です。何しろ隠しようのない自分の顔の半分がゾンビなんですから。

コロナ禍のおかげでマスクをして生活する状況が数年続き、その間に一番酷い時期を通り過ぎたのが私にとっては幸いだったと思っていますが、逆にその時期が無ければ色々悲観して外出できなくなっていたかもしれないくらいの思いはあります。その程度の精神的なダメージはありましたし、今も消えてはいません。

正直これで死ぬことは無いのですが、いろいろ考えたのは事実です。こんな私ですら自分の顔の状況を受け入れるのに時間がかかりました。ただ、本当に細かいことだけれど今も少しずつ機能を取り戻しつつあるのは時々気づいているので、そんな顔だけどこれからも付き合っていくかという気にはなっています。

 

誰の役に立つのかわからないのですが、今あらためて教訓じみた話を最後に。 

もちろん人それぞれ体の不調とも言い切れない何かがその後どうなるのかなど全くわかりません。何が何の予兆なのかなんて断定はできない話です。でもたとえば私のように生活するうえでマスクする以外に隠しようのない顔が壊れる顔面神経麻痺なんて面倒なことにならないように気を付ける方法はあります。
なんだか教訓じみた話にはなりますが、改めてここに書いてこのシリーズを終わりたいと思います。

  • 若いとか関係なく絶対に過労の環境からは逃げろ。
  • 飯をちゃんと食ってちゃんと寝ろ。
  • 人から「顔の片方だけで笑うな」とか顔の左右のバランスに関することを指摘されたら直ぐに耳鼻咽喉科へ走れ。
  • 普通にしてるのに口の片方だけが閉まらくて歯が乾くとか片目の涙が止まらないとか起きたら冗談抜きで一刻を争うので本当に即刻耳鼻咽喉科へ走れ。
  • 他の科目では駄目。耳鼻咽喉科。
  • 軽ければ多くの場合医師が判断する量のステロイド投与で数日で治る。
  • でも最初の発症でも私みたいに重症になることはあって、そこには運しかない。

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