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ビジネスモバイルITベンチャー実録【朝メール】から抜粋します

すぐに謝ること、情報を流すこと。長年のJRの知恵です

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★二日続けて電車の遅れに巻き込まれました。そこにひたすら続くアナウンス、その理由について考えてみました。

【朝メール】20050520より__

===ほぼ毎朝エッセー===

□□お客様にはご迷惑をおかけして申し訳ありません

昨日の朝です。駅についてみると発車時間でもないのに電車がいます。ホームまで階段を駆け下り、その電車に乗ろうとします。でもやはり、なんだか様子が違いました。ブザーが鳴っています。電車は停止しているようです。駅員さんが何やら叫びながら走っています。

「2両目で急病人発生!」

電車の扉からは人々が不安げな顔で半身を乗り出して様子を伺っています。自分も先頭1両目に乗るため歩いて行きます。歩いている途中に野次馬よろしく様子を見ていると、2両目には駅員さんたちが4-5人集まってきています。

1人の駅員さんが、紺色の生地の担架を持って走ってきます。

「こちらです!」

乗客の一人が声をかけています。彼らはどやどやと車両に乗り込んでいきました。

しばらくすると、担架の上には薄グレーのスーツを着たおじさんが寝ている状態で運び出されました。心臓発作なのか何なのか、朝から倒れてしまって大変です。それを見届けてから自分は車両に乗り込みます。しばらくすると、電車が発進します。アナウンスが流れます。

「えーっ、ただいま急病人発生し救出のため、電車が止まっておりました。お客様にはお急ぎ中、大変ご迷惑をおかけしております。東戸塚駅ぃ、5分遅れで出発しております。遅れまして心よりお詫び申し上げます。」

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今朝のことです。ホームで電車を待っているとアナウンスが流れます。

「1番線に到着の電車、東京行きです。津田沼行きですが、本日に限り東京行きとさせていただきます。」

自分は新橋駅で乗換えをするので、東京駅が終点となっても影響はないので、電車に乗り込みます。電車の中では車掌さんが詳しくアナウンスで説明をしています。

「今朝方、総武線快速千葉駅線路内で異常が発見されたため、横須賀線は東京駅で折返し運転を行っています。そのため、総武線、千葉方面をご利用の方は、品川駅にて山手線か京浜東北線にお乗換えになり、秋葉原より総武線、あるいは東京駅より京葉線をご利用くださいますようお願いいたします。お客様にはお急ぎの中、大変ご迷惑をおかけします。
東京駅での折返し運転のために、この先、電車が詰まっています。そのため、徐行運転あるいは電車が停止することもございます。大変ご迷惑をおかけして、心よりお詫び申し上げます。」

ひたすらこのアナウンスが繰り返されます。そのたびに、繰り返し謝っているのです。

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繰り返し流れる謝りのアナウンスを聞いて考えていました。

「これって、『謝る専門職』ってかんじだよなぁ。人はこのアナウンスを聞いてどんな心境になるだろうか?」

電車が遅れることで利用者はスケジュール変更を余儀なくされます。スケジュールがギリギリで動いているような場合はそれにより待ち合わせに遅れたりします。余裕を持って移動している時でも、電車の中はそれほど快適なものではないので、その中での時間をより長くすごくことを強いられることは不愉快です。だから一瞬、利用者には『怒りの感情』が湧いてきます。

そこにすかさず、繰り返し謝りのアナウンスが流れます。謝ること、情報を流すことで、『怒りの感情』が成長する前にそれが『納得の感情』に変わっていくことが感じられるのでしょう。

「そうか。仕方の無いことだもんな。」

繰り返しの謝りアナウンスは、多数のクレイムを長年受けてきたことによるJRのノウハウなのでしょうか。車掌さんの人格もありそうです。

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我々の仕事においても、多くのケースで謝らなければならない場合があります。プログラムのバグだとか、運用上の回線の切断だとか、殆どの場合は直接自分が発生させた問題ではないことも多いです。それでも、お客様にとってみては、「お宅さん、サービス品質悪いっすねぇ…」こういった『怒りの感情』をちょくちょく発生させてしまっているのです。

そのようなときに、先手を打って、謝ることと情報をシェアすることで、お客様には『納得の感情』に変わってもらうことが必要なのですね。結局はサービス全体に対する不満感を和らげることになります。いわゆる潤滑剤のような機能でしょうか。

謝ることについて社内でこんな会話が出ることがあります。

「法人向けの仕事ってひたすら謝ることばかりですよねぇ。」

「んだね。なんだか、一生分謝っているような気がするよ。」

「でも、なんでこんなに謝らなければいけないんでしょうか。」

「謝ることにはコストかからないからね。」

「でも、それによる精神的ダメージは大きいですよね…。」

謝ることが愉快な人はいないと思います。なるべく謝らないで済むようにプロセスを改善して行くのは当然です。でも、どうしても、うまく行かなく、謝る必要が出る場合があります。そんな時は潤滑剤の機能としてすばやく謝る、その情報を出す、このような習慣を身につけることができたらいいと考えさせられる横須賀線でのアナウンスでした。

「お客様にはご迷惑をおかけして申し訳ありません。こころよりお詫びいたします。」

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★この頃は始発出社をしていなかったので、トラブルに巻き込まれる率が圧倒的に高かったです。早朝出社は電車トラブル巻き込まれ率減少という効果もあるのですね。

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