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ビジネスモバイルITベンチャー実録【朝メール】から抜粋します

ITでの大敗。どうやら日本は個人能力が低いからです?

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[組織の力]=[個人能力の総和]×[組織IQ]
この公式ご存知ですか?

★日米のITビジネスに大きく差がついてしまっています。そしてその要因を考えているのですが、大きくは個人力での差がでてしまっているのではないかという仮説を持っています。どうやら組織IQを偏重重視しすぎたところに敗因があります。その考えに至った背景について。

【朝メール】20080620より__

===ほぼ毎朝エッセー===

□□組織IQ

先日、日経新聞の夕刊を読んでいたら気になるコンセプトが目が停まりました。そこには、[組織の力]=[個人能力の総和]×[組織IQ] と書いてあったのです。つまり、個人個人の力の総和だけでは物事は決まらずに、それを融合する組織としてのIQが大きく効果を上げるというのです。しばらく経っても頭の中に残っているのでちょっと調べてみます。

「組織IQ」は、1990年代半ばにスタンフォード大を中心としたチームが開発した概念のようです。そしてそれは5つの指標で数値化されるとあります。

(1)外部情報(顧客、ライバル企業、技術などに関する情報の感度)
(2)内部知識(組織内の知識共有と組織学習水準)
(3)意思決定(迅速に決断する仕組みと決断の速さ)
(4)組織フォーカス(決まった方針に組織全体が経営資源と努力を集中するレベル)
(5)知識創造(創造に向けた支援策など)

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さて、この調査をしている中で、2002年の面白い記事を見つけました。その5つの指標の日米ハイテク企業での比較です。「組織IQ」についてシリコンバレーの28社と日本の大手ハイテク企業17社の比較を実施しています。果は次のようになっています。日本が優れているものがプラス、アメリカが優れているものがマイナスという指標です。

(1)外部情報       +0.071 大差ない
(2)内部知識       -0.167 アメリカが優れている
(3)意思決定       +0.006 大差ない
(4)組織フォーカス +0.216 日本が優れている
(5)知識創造       +0.326 日本が優れている

つまり日本企業は「組織IQ」はいいレベルに来ているのです。しかし、この15年間の企業実績では、特にIT分野においてはアメリカの企業には恥ずかしいほど負けています。なぜでしょう。

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そこでこの公式についてあらためて考えます。

[組織の力]=[個人能力の総和]×[組織IQ]

日本の教育なのか文化なのか、学校でも企業でも、個人能力を伸ばすことは比較的少なく、全体の調和を優先する傾向にあります。飛び級や一本釣りも少ないです。嫉妬心というのも大きくブレーキをかけているとようです。

日本企業が重視しがちな「組織IQ」的な要素だけではかなわず、個人能力の優劣がとても大きく効いているようです。個人能力を強化できれば、組織としての知恵、つまり『(5)知識創造(創造に向けた支援策など)』は、2乗で効いてくるのです。そこを見落としているようです。

個人能力を伸ばすためには、外部から優秀な人材を確保するというショートカットがあります。それが現れる転職という現象が、先端IT企業で多発している事実は見逃せないと思います。日本でもIT業界では転職がより多く発生していますよね。

そう同じような「組織IQ」であれば『個人能力の総和』を高めれば、圧倒的な「組織の力」を発揮することができるのです。競合他社に勝てるのです。組織的なアプローチの重要であるとともに、個人の能力が高まるということもいかに大切か、そういうことを教えてくれた公式でした。どうりでこの概念が気になってしまっていたわけです!

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★この手のことは具体的に比較したほうがいいので、e-Janをサンプルにして考えてみます。いい点を+、改善必要な項目を-で記載してみます。

(1)外部情報(顧客、ライバル企業、技術などに関する情報の感度)
+少人数であること、同じ部屋に皆でいること
+販売パートナー企業に恵まれている
-情報を蓄積、分析をもとに戦略的な方向付けをする活動がされていない
-体系化した社員教育が無いため、アンテナ感度に個人差あり

(2)内部知識(組織内の知識共有と組織学習水準)
+少人数であること、同じ部屋に皆でいること
+開発を英語でやっているためにJavaの最新技術を使えている
-開発を英語でやっているために詳細仕様に理解が甘いことが多い
-体系化した教育マテリアルが存在しない
-仕様書、ドキュメント類が未整備である

(3)意思決定(迅速に決断する仕組みと決断の速さ)
+少人数であること、同じ部屋に皆でいること
±お客様意見から迅速(拙速)に開発し製品に反映する体質であること
-意思決定を実行する考察や体力が不足気味であること

(4)組織フォーカス(決まった方針に組織全体が経営資源と努力を集中するレベル)
+少人数であること、同じ部屋に皆でいること
-小さい意見を組織全体での活動に反映する点に改善余地あり

(5)知識創造(創造に向けた支援策など)
-特に仕組みなし (大いに改善すべき点!)
  ※これは職場環境や教育プランなどを含めたあたり

以上、定性的に列記してみましたが、e-Janは少人数であることによることのメリットに頼り切っている状態であることもわかります。少人数であるが故の体力不足感があるということもわかります。つまり、今後人数を拡大しながら「組織IQ」を、より高くしていく、そういった動きをすることが大切なわけです。定量化できるもののようなので、一つの計器として測定を続けていくというのもいいかも知れませんね。

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