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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

PKS取引の現状 - 2017年12月初旬時点

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少しご無沙汰いたしております。

現在の主務は、FITディーゼル案件のための大豆燃料の調達です。米国から始まって、中国、南アフリカ、インドとサプライヤーを探して周り、最終的にアルゼンチンに行き着きました。商談の突破口づくりをしています。

2015年の1月からPKSの取り扱いを始めましたが、最初は右も左もわからず、苦労しました。2015年11月に最大手木質バイオマス発電所運営会社様をインドネシア・スマトラ島のランプーンのPKSストックパイルにお連れし、3ヶ月かけて仕込んだ商材をお見せする機会がありましたが、現地の商慣行で当時はよくわからなかった不透明な部分があり、それが原因で成約に至りませんでした。その会社は現在では飛ぶ鳥を落とす勢いの木質バイオマス発電のリーディングカンパニーです。

PKS取引はそれ以降もずっとつかず離れずという感じでやってきています。

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◼︎現在の安値は人為的なもの

現在のインドネシア出しPKSの価格は、中央値で80ドルというところでしょうか。1年前と比べると10ドルとは言いませんが、6-8ドルは安くなっていると思います。

この安値の原因は、需給バランスによるものです。

PKSの価格は、インドネシア、マレーシアにPKSのサプライヤーが比較的多く存在しており、総合商社、燃料商社、ブローカーなどの売り手も多数存在している状況で、買い手の木質バイオマス発電所の数が限られている、必要量もまださほど多くはないという状況が続いていました。簡単に言えば、買い手市場の状況にありました。

そのため、買い手側は大いに強気になり、価格を下げるための方策を講じてきました。過去1年間、特にその傾向が強くなったと思います。端的には競争入札制度の導入です。競争入札により、最安値が出やすくなり、その最安値が業界で共有されることで次の最安値がより低くなるメカニズムができあがりました。その連鎖で、PKSの価格は月を追うごとに安くなり、現在の安値安定がもたらされています。

私はこの安値は人為的にもたらされたものであり、市場メカニズムが反映されていないと思っています。来年から再来年、さらにその後にかけて、大型木質バイオマス発電所の50MW級およびそれ以上が毎月1箇所程度、運開していくに連れて、需給がタイトになり、それに呼応してPKSの価格も高くなっていくだろうと考えていました。

価格の反転は、おそらく、2018年末から2019年にかけて。それまでは、現在の安値安定が維持されるものと考えていました。

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◼︎需要はどう変化するのか

しかし、インドネシアにいるバイオマス燃料専門家の知人Eko Sb Setyawan氏(メインのブログ。サブのブログ)によると、最近、ヨーロッパ、韓国、中国の買い手がPKSを買い始めていると言います。また、これと相次いで、別なインドネシアのPKS関係者からも、同じ話を聞きました。これらが本当だとすると、これまで、日本の買い手がメインだったところへ、他の三系統の買い手が加わるということになります。

現在、日本全体で、過去12ヶ月では、約150万トンのPKSを輸入していると推計しています。2016年末で100万トン程度でした。これが2018年末に200万トンになるかどうか。2019年末で250万トンといったところでしょう。需給は徐々に締まっていきます。

価格が反騰するのは、2018年末から2019年いっぱい。それぐらいで考えていたのですが、仮に、ヨーロッパ、韓国、中国が積極的に買い始めると、ダブつき気味だった供給がすぐに締まります。この締まった感覚が現在の主要な買い手に伝わってるのかどうか不明ですが、年間20万トン以上買う最大手の1社が、先々の買い枠を確保しに動いているという情報はあります。ちなみに弊社では商社等の中間的な買い手数社、エンドの発電所保有企業3社程度とやりとりできる位置にあり、それとなく情報は出入りしています。

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◼︎狭い市場では急騰が瞬間的に起こる

PKSの市場は、限られた数の参加者による狭い世界であり、株式市場のように膨大な数の売り手買い手がいて、市場メカニズムが健全に動作して価格形成がなされる、という風ではありません。仮に先々の供給がタイトになる見通しが立った時点で、日本の買い手はすぐにインドネシア、マレーシアの双方で買い枠を押さえにかかりますから、そうなると、価格は1〜2ヶ月のうちに急激に上昇します。

買い方の動きは売り方であるインドネシア、マレーシアのPKSサプライヤーにすぐに伝わります。彼らもまた彼らで日本と同様に、売り手同士で情報共有を行っているため、日本側の買い姿勢の変化はおそらく一晩のうちに業界をかけめぐるでしょう。翌日からFOB価格がぐっと上がる、ということが想定されます。

私はこの現象を、ベトナムのCNSL(Cashew Nuts Shell Liquid、カシュー油)の価格で見ています。数日前まで、FOB 250ドル/トン程度だったものが、その後に、350ドル/トン程度に急激に上がりました。何が起こったのか聞いたら、日本人が買い付けに入ったという情報が一晩のうちに、カシュー生産者の間で共有され、価格が高めで決められたのだそうです。これは、突き詰めて考えてみれば、カルテルです。しかし、狭い市場ですから、やむを得ないというところもあります。

このような状況ですから、現在の中央価格帯のFOB 80ドルがいつまで続くかわからないということがあります。買い手側は、これまで、かなり安い価格水準を謳歌してきたため、これからは、需給の現実、市場価格の現実に向き合わなければならない。そういう局面なのかなと考えています。

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