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木質バイオマス発電の現状 - 間伐材の調達に不可欠な高性能林業機械

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今日は発電の話を。

昨年前半から東北のある県で5,000kW程度の木質バイオマス発電のプロジェクトの準備に携わっています。具体的なプロジェクトに関わりながら、プラントベンダー、林業関係者、材の供給を考える人たち、新電力(PPS)、地元の方々、などなどの話を聞いていくうちに、木質バイオマス発電の全体像がはっきりとしてきて、現在ではこちらで紹介されているセミナーでお話をさせていただくぐらいにはなりました(当日使用した資料がダウンロードできます)。

ここでは、木質バイオマス発電を考える際になかなかわかりづらいポイントについて、かいつまんで記してみます。

今年度の木質バイオマス発電の買取価格は「間伐材等由来の木質バイオマス」が32円/kWh、「一般木質バイオマス・農作物残渣」が24円/kWh、「建設資材廃棄物」が13円/kWhとなっています。

間伐材等由来の木質バイオマスとは、森林の健全な育成のために必要な「間伐」を行った際に出る「間伐材」を破砕・切削して作られる木質チップを燃料とした場合、および、「等」という言葉で括られている例外的な伐採によって出てきた材を破砕・切削した木質チップを燃料とした場合の発電プロジェクトを指します。

間伐と一口に言っても、わけがわかってくると大変に複雑で、以下のような事柄が関わってきます。

■補助金が付かないと間伐がわりに合わない

一般的な民間林かつ人工林(スギ林が典型)では森林保有者がいて、それを伐採する森林組合等、伐採を引き受ける主体がいます。森林保有者は、森林の価値を上げるためにしかるべきに時期に間伐を行いたい意向を持っていますが(間伐を行わないと、個々の樹木が太くならず、材の生産量が上がらないため)、間伐して→間伐材を林道に下ろしてきて→木材市場等で販売しても、間伐&集材&運搬のコストに見合う価格で売れないため、「間伐を行わない」という判断をするのが普通です。この状況を改善するため、林野庁は間伐に補助金が付く制度を運用しています。補助金付きの間伐は、一般的に個別の森林組合がその補助金を収入源の1つの柱とするために取り組んでいます。なお、この補助金付きの間伐は、間伐材を森から下ろしてきて、外に出さないと補助金が下りません(以下の切り捨て間伐ではダメ)。

一般的な間伐と言えば(補助金が付かない間伐)、間伐材を集めて下ろしてくるコストが出ないので、「切り捨て間伐」と言って、間伐した材をそのまま森に残してきます。これもこれで、生き残った材には日照が当たる、樹間が広くなるなどのメリットがあってよいのですが、捨て置かれた間伐材は森の邪魔となって、数年を経て腐らない限りは、林業の施業の障害となるでしょう。よって切り捨て間伐はよろしくない。しかるべき手続きを行って、補助金付きの間伐とした方がよいということがあります。

なお、経産省が間伐材由来の木質バイオマスに32円という高い価格を付けているのは、この切り捨て間伐状況にある材を引っ張り出して発電の燃料として有意に処理したいというもくろみがあったと思われるのですが、補助金の付かない間伐の材を固定価格買取制度の木質バイオマス発電事業用のチップ原料として売って経済的に見合うのかどうか、言い換えれば、補助金の付かない間伐の間伐材が木質バイオの現実的な燃料になるのかどうか、かなり疑問と言えましょう。どなたか事情をご存じの方、ご教示下さいませ。

■高性能林業機械とは

間伐で伐採したはよいが、枝葉のついた間伐材は大変に重く、引きずったとしても1人で引きずって林道まで下ろしてくるなどということはできません。必ず何らかの林業機械のお世話にならないといけません。林業先進国のオーストリアやドイツと比べて、日本の林業は機械化が進んでいないとはよく言われますが、それでも調べて見ると、高性能林業機械と呼ばれるものを導入して、生産性を上げている森林組合は多数あります。

高性能林業機械には、伐採して倒すことを自動化するハーベスタ、伐採後の1本の樹木の枝払いをしていわゆる「玉切り」を行うプロセッサ(ハーベスタはプロセッサも兼ねる)、伐採後の長い材をワイヤーで結わえて斜面を引きずり上げる/引きずり下ろす作業を自動化するスイングヤーダ、玉切り後の材を集積地(土場)まで運ぶフォーワーダなどがあります。

ハーベスタの例


YouTube: イワフジGPi30SVハーベスタ IWAFUJI harvester

プロセッサの例


YouTube: イワフジGP25Vプロセッサ IWAFUJI processor

スイングヤーダの例


YouTube: イワフジTW232Bスイングヤーダ IWAFUJI swing yarder

フォワーダの例


YouTube: イワフジU4BGフォワーダ IWAFUJI forwarder

こうした高性能林業機械の普及状況は、林野庁のウェブサイトで確かめることができます。伐倒を自動化するハーベスタの場合、全国で1,000台強普及しています。

やはりハーベスタの場合で、地域別で見ると、北海道で287台、東北で222台普及しています

所有者別で見ると、ハーベスタは652台が会社組織、242台が森林組合によって所有されています

伐採を業として行っている会社が存在し、かなりの設備投資を行っているということがわかります(一部は住宅用建材生産を業とする住友林業などの大手でしょうけれども)。


■生産がどの程度効率化するのか?

こうした高性能林業機械を導入すると、間伐の伐採、集材、搬出が効率化します。どの程度効率化するのか?

林野庁の高性能林業機械のページで公開されている「優良事例の紹介」では、各森林組合や林業会社において高性能林業機械を導入した後、どれだけ素材生産が効率化したかを定量的に記した資料が得られます(平成25年度の例)。

京都府南丹市の美山町森林組合の場合では、ハーベスタとフォワーダを各1台追加したことにより、1日1人の生産量が4〜5㎥だったものが7〜8㎥へと、60%〜75%も増加しています。

林野庁が高性能林業機械導入による生産量増大の目的としているのが、1日1人10㎥以上の生産(伐採して土場まで運搬される量が10㎥/人日以上であるということ)です。4人のオペレータで作業する場合、1日の稼働日数を220日として、8,800㎥程度が生産量の目標値だとしています。おそらくこれはかなり理想的な状況(路網が理想的に組まれている等)の値だと思われますが、高性能林業機械で効率化すれば、4人で年間5,000㎥程度の材の生産は可能であろうということは、言えそうです。

■5,000kW級を1つ動かすのに必要な材

木質バイオマス発電事業では、5,000kW級の規模で年間7〜8万トンの木質チップ燃料を焚きます。8万トンとすると丸太換算の材積では10万㎥。仮に、高性能林業機械を具備した4人で年間220日稼働した際の生産量が5,000㎥だとすると、そうした施業チームが10チーム16チームあれば5,000kW級を1つ動かせるだけのチップが生産できるということになります。言い換えれば、ハーベスタ+スイングヤーダ+フォワーダが10セット16セット必要です。これは現実的な数字なのか?まだまだ確かめなければならないことがたくさんあります。

材の生産量の目安として、上記の林野庁の高性能林業機械のページで公開されている優良事例をいくつか覗いてみると、1つの森林組合の生産量がおおむね年間5,000〜10,000㎥程度です。5,000kW級の発電所に必要な8万トンのチップ=10万㎥の材を集めるには、そうした森林組合が10程度5〜10程度必要であろうということになってきます。

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