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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

ジャカルタ市がごみ処理施設の公開入札を開始

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ジャカルタ市政府が発電を伴うごみ処理施設PPP案件の公開入札を始めています。興味のある方は情報を取り寄せてみてはいかがでしょうか?

Jakarta Globe: Tender Opens for Center to Treat Waste (2011/12/3)

■25年間のBOT

インドネシアのPPP制度では、運輸や水事業などセクター法がある分野についてはセクター法を管掌する各省庁が、また、対象施設が特定の自治体に存する場合にはその自治体がPPP案件の「発注者」となります。今回のごみ処理施設は、ジャカルタ特別市の発意により同市内に設置されるものなので、同市政府が発注者となります。

PPPのスキームは25年間にわたるBOT(Build-Operate-Transfer)。受注者は資金調達を行い、施設を建設して、25年間にわたって運営を行い、その間に投資回収を行ってリターンを出し、25年後に(おそらくはほぼ無料に近い金額で)ジャカルタ市政府に施設を譲渡します。

処理施設では1日1,000トン以上のごみ処理を行うことが想定されており、ごみ発電によって14MWの発電を行うことも期待されています。収益モデルはいわゆるサービス購入型。ジャカルタ市政府が受注者に対してサービス運用料を支払います。競争入札ではジャカルタ市から受け取る運用料の多寡を競うことになると思われます。

なお、日本で規模が近いごみ焼却施設に、スーパーごみ発電の成功事例としてよく引用される北九州市皇后崎工場があります。ここの処理量が1日810トン。発電容量は最大で36MWです(一種のコンバインドサイクル発電であるため発電効率がよい)。

■ジャカルタのごみ処理の現状

ごみは焼却するものと相場が決まっている日本とは異なり、多くの国々では埋め立て処理が普通です。ジャカルタの場合、ごみ処理施設には大きく分けて次の3タイプがあるようです。

・Transfer Station(集積所)
ごみ回収車がごみをいったん集積する施設。「固めて容積を小さくする」設備を備え、容積を小さくしたものを最終処理場(埋め立て施設)に運ぶ。この施設における「固める」プロセスは単純なもののようで、さほど容積が減らないようです。(以下のIntermediate Treatment Facilityを参照)

・Integrated Final Plant(最終処理場)
容積を小さくしたごみを埋め立て(landfill)ていく用地。埋め立てる前に、地面にはシートをかぶせ、Leachateと呼ばれる浸出液を回収するための導水路も設ける。発生するメタンの回収も行う。また、発生したメタンで発電も行う。さらには生ゴミからコンポスト(堆肥)を製造する。

・Intermediate Treatment Facility(中間処理施設)
今回競争入札の対象になっているのがこのタイプ。集積所から出て、最終処理場に行く前のごみの容積を、燃焼等を組み合わせて90%削減します。
ここで行われる処理は、
 ーコンポスティング
 ーメタンガス回収
 ー焼却および発電
 ーメカニカル・バイオ・トリートメント(内容不明)
など。(資料から内容がくみ取れない部分もあります。)

ジャカルタ市では毎日4,500〜5,500トンのごみが発生しています。市当局は中間処理施設を設置することで最終処理場に持ち込むごみの量が大幅に減るので、計3カ所のITFを動かすことにより、ごみ容量が8,000トン/日になってもむこう10年程度は大丈夫だと見込んでいます。最終処理場はGebangというところに1カ所あります。

■上位機種ではペイしない可能性

このようなごみ処理のトータルプロセス構築にあたっては、2000年前後にJBICの案件形成支援制度によって行われた調査が貢献しているようです。
従って、いくつかの方策を組み合わせて容積を抜本的に減らす中間処理施設のアイディアも、日本から出たものである可能性があります。(ということは、それにあてがう機器・技術も日本に存在しているということでしょうか?)

ただし、インドネシアのインフラPPP案件では、現地の物価水準に基づいて得られる事業売上が、日本の設備を持ち込んでペイするかどうかが一番の課題です。気持ちとしては、日本のスーパーごみ発電の施設を持ち込んで非常に効率のよいごみ処理+発電を行いたいところですが、おそらくは投資回収が難しいでしょう。比較的旧型の発電機能つきごみ焼却炉であって、「型」としては償却が済んでいるものを持っていくことができれば、25年の運営で好ましいIRRを出すことができるのではないでしょうか。

なお、インドネシアの場合、売電はkWh当たり3円程度のようです。報道にある「14MWの発電」で1日8時間、年300日動かしたとすると、1億円程度の売電収入となります。

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