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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

[メモ] 全国の未使用の下水道用地で太陽光発電事業を行うとどうなるか?

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自治体が下水道用の用地として確保している土地のうち、かなりな用地が使われずに余っていることを知りました。それを伝える記事が以下。

世界の水事情:地方自治体が国庫補助で買収した下水処理施設用地。30年以上の未使用面積が446万平方メートル 取得価格1093億円(2010/10/29)

全国で1,701万平方メートルの下水道用地が余っています。おそらく平坦な土地でしょう。

また偶然に、大阪府が未使用の下水道用地で太陽光発電事業を検討していることを知りました。リンク先にあるPDFを参照。

大阪府:国土交通省「新たなPPP/PFI事業」大阪府からの応募について

これはすばらしいアイディアですね。

大阪府のアイディアを日本全国の下水道未使用地1,701万平方メートルに適用してみると、どんな数字が得られるのかラフに試算してみました。

基準にするのは中部電力が今年1月から稼働させているメガソーラーいいだ(長野県飯田市)。ここの発電容量がちょうど1MWです。

[発電所概要](中部電力サイトより)
発電所名:メガソーラーいいだ
所在地:長野県飯田市川路城山(かわじじょうやま)
発電所出力:1,000kW(1MW)
想定年間発電量:100万kWh(一般家庭300世帯分の年間使用電力に相当)
開発敷地面積:約1.8万m2

全国の下水道未使用地1,701万平方メートルを太陽光発電に回すと、945MWの発電容量が確保できます。原発1基分1,000MWとほぼ同じ量。

これで期待できる年間発電量が9億4,500万kWh。(メガソーラーいいだの数字から太陽光発電の稼働率ないし設備利用率を計算すると、11.4%で設定していますね)

再生可能エネルギー特措法成立後に設定されるであろう太陽光発電の買取価格が、直近の報道では36円/kWhですか?(週刊ダイヤモンド8/6号による)。それを適用すると年間の収入が約340億円となります。

敷設コストはどうか。今年4月に公開された環境省の報告書の数字で計算します。

太陽電池設備費:39万円/kW
付随機器設備費:14万円/kW
設置工事費:7.7万円/kW
計 60.7万円/kW

945MW=945,000kWで上のkW単価を掛けると、日本全国の下水道未使用地に太陽光発電所を建設した場合の総コストは約5,736億円。

これで年間収入340億円だとすれば、投資回収に16.9年かかります。(20年営業してもIRRで2%にもなりません。)

これはつまり下水道未使用地に限らず、土地代がゼロの場合の太陽光発電事業の投資回収ということですね。これは長いのでしょうか。妥当なのでしょうか。
買取価格を40円に上げてみても、投資回収に15.1年かかります。

おそらくは太陽光発電の稼働率(設備利用率)の数字の低さに問題がありそうですね。メガソーラーいいだの数字の11.4%が現実的なものであるのならば、太陽光発電一般の投資回収はかなり長い道のりとなりそうです。

しかし一方、こちらのページで説明されている上田市のように20%ぐらいになるのであれば、話がかなり違ってきますね。(買取価格36円でも投資回収10年弱、20年営業するとIRRが8%強)とは言っても、依然として土地代がゼロという前提が付きます。

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後記。後から、上田市は同じ長野県で飯田市とさほど離れていないことに気づきました。おそらくメガソーラーいいだの想定年間発電量は低めに見積もられているのでしょう。

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