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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

[メモ] インドネシア政府マスタープランで明らかになった経済回廊の開発詳細

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インドネシア政府が2025年までにGDPトップ10入りを果たすシナリオを記述した「マスタープラン」が見つかりました。約210ページの労作です。正確には"Master Plan for the Acceleration and Expansion of Indonesia’s Economic Development"ないし"MP3EI"(インドネシア語を元にした略称)と呼ばれていて、Coordinating Ministry for Economic Affairsのサイトからダウンロードできます。(ダウンロードには時間がかかります。こちらの米国インドネシア商工会議所サイトでも同じファイルが得られます)

目を通すと、日本政府の協力によって特定・設定されたインドネシア経済回廊がすでに一人歩きを始めていることがわかります。

スマトラ経済回廊

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ジャワ経済回廊

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カリマンタン経済回廊

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スラウェシ経済回廊

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バリ・ヌサテンガラ経済回廊

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パプア・ケプラウアンマルク経済回廊

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マスタープランは、同国の人口構造は若年層比率が高く、2020年にかけて人口ボーナス期を迎えることから飛躍的な経済成長のポテンシャルがあるとしています。成長を具体的なものとするためには、天然ガス、石炭、地熱、パーム油、ココア、すず、ニッケル、ボーキサイトの8つの主要産業と、これら主要産業が展開する6つの経済回廊への集中的な投資が必要であると述べています。
各経済回廊の経済発展シナリオの記述にはそれぞれ20ページ以上が割り当てられており、発展の具体像を得ることができます。英語で得られる経済回廊関連資料としては過去に例がないほどの詳細なものだと思います。

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経済発展を可能にするためのメカニズムとして"Connectivity"(接続性)に焦点が当てられています。これは、経済活動のノード(中心都市、中核地域、運輸交通ハブ)が相互に結ばれ、資源や製品や人が適時に迅速に移動できることによって望ましい経済活動ができるという考え方で(当たり前と言えば当たり前ですが)、経済活動全体をネットワークとして捉えます。具体的には経済回廊内部における接続性があり、経済回廊同士を結びつける回廊間の接続性があり、さらには個々の経済回廊と世界各地を結ぶための国際ゲート(国際空港)への接続性があります。今後はそれらの接続性確保のための投資が活発に行われることになります。すなわち、道路(有料道路)、首都交通、鉄道、港湾、石炭鉄道、空港などです。また、情報系の接続性ということでICTも投資対象に入っているようです。

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このマスタープランは、アジア開発銀行と世界銀行から支持されているほか、中国政府も支援する方向です。また、インドネシア政府は韓国のパートナーシップを取り付けています。関連報道を見る限り日本の姿がありませんが、日本はすでにジャカルタの首都圏投資促進特別地域など、従来から進めてきたインフラ輸出政策において2兆円を超える投資を決めていることと、民間ベースで複数のインフラ案件が進捗しているため、今回新たに決まったマスタープランでは名前が出ないということなのでしょう。しかしながら、インドネシアへ複数の国がアプローチし始めており、投資競争のような状況が生まれつつあることは記憶に留めておきたいところです。

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