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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

[メモ] 海外インフラPPP案件の入札コスト

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インフラ輸出政策により日本企業の取り組みが活発化している外国政府のインフラPPP案件の受注活動。入札参加からプロポーザル提出を経て無事落札に至り、プロジェクトファイナンスのクロージングが済むまで、どのぐらいのコストがかかるのでしょうか?

"InFinance"という金融専門誌の2010年8月号に"Focus on PPP bid costs"という記事が出ており、そのなかで、プライスウォーターハウスクーパースでプロジェクトファイナンスのアドバイザリーを行っているパートナーKate Evans氏が次のように書いています。英文の下に訳を掲げます。

The cost of bidding for PPPs is significant both in terms of time and resources. Private sector mobilisation for a PPP proposal response typically occurs months before release of the EOI. Most formal tender processes (from release of the EOI to contractual close) range from 10 to 12 months, however, the formal process for more complex projects can last for up to 24 months. Therefore, the average time commitment required to participate in a PPP tender process is generally of the order of 18 months.
Bid costs (direct and indirect) for each bidder are generally around 1% of total construction cost, although a large proportion of these costs are fixed, which makes tender participation for smaller projects comparatively more costly than tendering for larger projects. In a market where multi-billion dollar projects are not uncommon, these costs are significant and arguably create a barrier to entry, limiting accessibility (and competition) to the PPP market.

PPP案件への入札コストは、時間という意味でも資金という意味でも、きわめて大きい。民間企業のPPP提案書に関わる作業はEOI(Expression of Interest、外国政府による案件入札希望者公募)の数ヶ月前から始まるのが普通だ。多くの公開入札プロセス(入札者公募から契約締結まで)は10ヶ月から12ヶ月に及ぶが、より複雑なプロジェクトでは24ヶ月かかることもある。従って、PPP入札プロセスに投入する期間は平均18ヶ月程度である。
入札にかかるコスト(直接的なものと間接的なもの)は個々の入札参加者において総建設費の1%程度だが、これらのコストの大部分は固定費的であるため、小規模なプロジェクトでは大規模プロジェクトよりも相対的に大きなコスト負担を入札参加者に強いる。何十億ドルもの案件が一般的ではない分野では、こうしたコストはきわめて大きな負担となり、実質的な参入障壁、ないしPPP市場へのアクセスの妨げ(すなわち競争の妨げ)となっており、議論の余地を残す。

ここで言う総建設費(total construction cost)は、総事業費と同じ意味だと思います。目安は総事業費の1%ということですね。
この記事では費目がわかりませんが、大別すれば、1)社内でかかる人件費等の経費、2)国際的法律事務所、大手金融機関などに依頼するリーガル、ファイナンシャル等のアドバイザリー手数料、3)提案書作成に不可欠な調査・設計等の経費、の3つに分かれると思います。おおむね1/3ずつというところではないでしょうか。

引用部分にあるように、これらの多くは固定費的にかかる費用であるため、受注額が小さくなったとしても、同じようにかかるわけで、小規模な案件では総事業費に占める受注コストの割合が高くなる可能性があります。

政府側でも同じことが言えて、国際PPP案件ではリーガルやファイナンシャルのアドバイザーを起用する必要があり、これらは国際法律事務所など国際市場で展開する専門家ということなので、相応の費用が発生します。小型案件でこうした専門家に助言を頼んでいると経費率が高くなるため、国際プレイヤーにオープンにして意味のあるPPP案件は1億米ドル以上という目安があるそうです。

とは言え、インフラPPP案件はいったん受注が決まれば、独占的な環境において安定的な事業運営が見込める性格があります。競合がいない状況において20年といった長い期間の営業が保証されるわけで、その部分をしっかりと見れば、きわめて妥当なコストだと言うこともできると思います。

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