オルタナティブ・ブログ > インフラコモンズ今泉の多方面ブログ >

株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

興味深い藤井良広上智大教授の環境配慮型震災復興インフラの提案

»

4月18日付日経朝刊の経済教室欄「復興財源を考える」シリーズ5の上智大学藤井良広教授による「民間資金の活用、環境債で」を非常に興味深く読みました。

震災復興のための財源を捻出する目的で国債を増発するのではなく、新設する賃貸集合住宅などのインフラにおいて新しいタイプのキャッシュフローを生む枠組みを埋め込み、そのキャッシュフローを財源とする新しいタイプの債券、環境債を機関投資家や年金基金に購入してもらうのはどうかという提案です。

インフラ事業一般では、営業が始まったインフラから上がるキャッシュフローを配当や返済の原資としてインフラファンドが出資したり、銀行によるプロジェクトファイナンス(融資)が行われたりします。有料道路、発電所、鉄道、上下水道事業、港湾などみなそうです。
この「インフラが生むキャッシュフロー」は、震災復興の目的で建設される集合住宅、港湾、鉄道、物流施設、生産設備、発電所などのインフラ設備でも期待できるものです。インフラ一般に収益の変動が少なく、将来におけるキャッシュフローを予測しやすいため、インフラファンドの場合は15〜25%程度の年リターンを期待して投資します。銀行によるプロジェクトファイナンスの場合でも、融資期間が超長期にわたることもありますが、想定される利率はかなり高めです。それもこれもインフラのキャッシュフローを生む力が評価されてのことです。
インフラは往々にして独占的なポジショニングを持っているため、競合との価格競争に巻き込まれにくい、新規参入が起こりにくいという特性があります。そのため一般的な市場で行う事業活動に比べてキャッシュフローが多くなるのです。

藤井教授の提案は、そこに環境経済の視点を付加しています。具体的には、省エネや節電の設備に投資することで得られた経済効果を投資家にリターンとして渡す枠組み(いわゆるESCOがこの枠組みの典型です)、太陽光発電などの分散発電の余剰電力を売電してキャッシュフローを得る枠組み、削減された二酸化炭素のクレジットをキャッシュフロー化する枠組みを組み合わせることにより、機関投資家などにとって価値の高い投資対象になるとしています。具体的には、それらのキャッシュフローを償還原資とする環境債を発行し、並行してその債券が流通する市場を整備すればよいと述べています。同種の債券市場の枠組みは米英でも「気候債」として整備されつつあるとのこと。

このようなインフラが生むキャッシュフローに着目したアプローチには大きな可能性があり、震災復興にも役立つと思います。

[関連投稿]
震災復興には海外資本にも開放したインフラPPPの枠組みを

Comment(0)