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「同時同量」を理解して計画停電を避ける仕組みを考えよう

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豆知識的なものですが、今回の計画停電の背景を理解するためにも、スマートグリッドの基本を理解するのにも不可欠な概念「同時同量」についてご説明します。

■いま使っている電気はいま発電された電気

家庭や企業が消費している電力は、リアルタイムで発電されたものであり、その時々において、需要と供給とが一致しています。

仮に、消費電力量が発電電力量を上回るようなことがあると、電圧が低くなったり、周波数が不安定になったりして、家庭や企業に影響が出ます。電球の光がまばたきするように不安定になるのが、わかりやすい例です。繊維産業の紡績機械では、周波数が少し変化しただけで、糸を巻く精度にぶれが生じ、製品の品質に大きな影響が出るそうです。微細な加工が必要な半導体工場にも大きな影響が出ます。

消費電力量が発電電力量を著しく上回る場合には、送電網に設けられた保護機能が働き、送電が止まってしまいます。家庭でブレーカーが落ちるのと同じことが送電網スケールで起こるわけです。これが停電です。

発展途上国の都市では、よく停電が起こるという話を聞きますが、これは、その時の電力需要にその時の発電がリアルタイムで追いつかなくなって、送電網のブレーカーが落ちてしまう現象なわけです。

■同時同量

こうした電力供給品質のぶれや停電を防ぐために、電力会社では「同時同量」で発電を行っています。同時同量とは、発電量と電力消費量を常に一致させることを言います。

同時同量を維持するには、家庭や企業が消費する電力量を予め読んで、それに適合した発電量を確保する必要があります。

一般的に、1日のうちで、電力消費量が多くなるのは、朝のみんなが活動を始める時間帯、そして、夜のご飯時です。また、夏には、気温がもっとも高くなる1時〜3時ぐらいにみんなが冷房を使うため、その時間帯がもっとも多くなります。電力需要がもっとも高まる時間帯をピークと呼んでいます。

同時同量を維持するために、電力会社では、みんなが電力を使わない時間帯には発電設備のある部分を眠らせておき、みんなが電力を使うピークには持てる発電設備の大部分を使って電力需要を満たします。

■ベース電源、ミドル電源、ピーク電源

以下の図は、電力の需要に応じて、どのような電源が使われているかを示す模式図です(出典:新日本有限責任監査法人サイト)。

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電源は、発電のエネルギー源に従って区別されます。大きくは、水力発電、原子力発電、火力発電、揚水式水力発電に分かれます。
これらの電源は、「1日24時間動かしておくのに適した電源」と「電力需要に応じて動かしたり止めたりするのに適した電源」とに分けることができます。
一般的な水力発電と原子力発電とは、24時間365日、動かしっぱなしにしておくのに適した電源です。従って、1日の電力需要の変化の中で、ベースの部分を担うベース電源になります。

石炭、石油、天然ガスによる火力発電は、需要に応じて動かしたり止めたりがしやすいので、ベース電源で足らない時間帯になると動かします。これは電力需要のミドル部分を担うので、ミドル電源と呼ばれます。例えば、朝、みんなが起き出して、家電製品やエアコンなどを付ける時間帯には、電力会社管内の複数の火力発電所でタービンが回り始めます。

電力の需要は、1日の時間帯の中で、おおむね同じようなパターンで推移するので、電力会社の側では予測しやすいのです。また、季節によって変化するということも、電力会社の需要予測では織り込みます。よく言われることですが、1年のうちで、最大の電力需要があるのは、真夏の甲子園の決勝戦がある日の午後2時〜3時頃です。日本全国津々浦々で冷房をがんがん動かしながらテレビを観るからです。これも毎年同じことが繰り返されるので、予め読めます。需要が予め読めれば、それに応じて電源を立ち上げたり、停止させたりします。

このようなピークの時間帯に、ベース電源とミドル電源では足りない分を供給するのがピーク電源です。ピーク電源には、火力が使われることもあり、揚水式水力発電が使われることもあります。揚水式水力発電については、こちらをご覧ください。

電力会社では、このようにして、その時々の電力需要に合わせて、ベース電源に加えてミドル電源やピーク電源を動かしたり止めたりしながら、同時同量を実現しています。

■今回の震災で発電所が被害を受けたことで…

今回の震災では、福島第1原子力発電所が大きな被害を受け、東京電力のベース電源の大半が失われた格好になりました。こちらのインプレス家電ウォッチの記事によると、現在停止している東京電力管内の原子力発電所の発電容量は1,239.6万kWだとのことです。ベース電源でこれだけの発電量が失われたことで、東電では残る電源や他社から融通してもらた電力でベースを作らざるを得ず、ピークへの対応が不十分な状況に置かれています。

(発電容量の規模感をつかむには、標準的な原子力発電1基が100万kW(キロワット)であることを尺度にすればよいでしょう。動いていない1,239.6万kWは約12基分ということになりますから、かなり大きいです。ちなみに太陽光発電の分野で、大規模な発電所をメガソーラー発電所と呼びますが、この場合の発電容量は1MW(メガワット)です。単位を揃えれば標準的な原子力発電所は100万kW=1,000MWですから、原子力発電所1基はメガソーラー発電所1,000カ所分の発電容量を持っていることになります。)

また、同記事によると、太平洋岸にある火力発電所も被害を受けています。ミドル電源ないしピーク電源に用いられるものです。動かなくなった分は680万kW。原子力発電所7基分に相当します。これもやはり大きな容量です。

これらが得られないことで、東京電力では、同時同量を達成するのに大変な苦労をしているのです。

■計画停電をしなくても済むようになるには

何も手を打たないでおくと、電力消費が発電量を上回って、いきなり大規模な停電が発生します(2003年にニューヨークで大規模な停電が発生しましたが、あれと同じことが起こります。東証や金融機関でいきなり停電が発生するとどういうことになるかを想像してみると、かなり深刻な事態だということがわかります)。

従って、同時同量を維持するには、現在の限られた総発電容量でもってまかなえるだけの電力消費に落とす必要があります。そのために、東電管内のあるエリアを指定して、そこだけ、予め通知をした上で、電力供給をカットするということを行うわけです。それが計画停電です。複数のエリアが回り持ちで停電するので、輪番停電とも呼ばれます。やむを得ない方策だと言えます。

計画停電をしなくてもよくなるためには、東京電力が持つ発電所の発電容量が復活する、あるいは、新しい発電所が作られる、あるいは、東京電力以外の電力会社から不足分を融通してもらう、ということが必要です。

報じられているように、東京電力では、休止中の比較的古いタイプの発電所を大急ぎで動かすための準備を進めています。また、地震で被害を受けた火力発電所についても、復旧を急ピッチで進めています。
新しい発電所を作ることについては、政府がこれから定める中長期のエネルギー戦略次第(原子力を4割まで持って行く路線に変更があるかないか)ということがありますから、今のところは何も言えません。また、リードタイムが数年かかります。

東京電力以外の電力会社から不足分を融通してもらうことについては、すでに行われているようです。しかし、容量としてはあまり大きくないようです。(よく指摘されるように、西日本の電気は周波数が60Hzであるため、東京電力管内に持ってくるためには周波数を50Hzに変換する必要があります。この変換設備が100万kWの容量であるため、西日本から東京電力に融通できる上限は100万kWとなります。下記エネルギー経済研究所レポートによると、北海道電力からは60万kWの融通が行われています。)
結局、休止中の火力の復活と、地震で止まった火力の復旧でどれだけの発電容量が確保できるかが鍵となります。

■計画停電は4月いっぱい、夏にも計画停電が必要になる

東京電力の現在の総発電容量は3,400万kW。これを夏までに上記の復活や復旧により5,000万kWまで持って行くことが予定されています。
エネルギー関連のシンクタンクである財団法人日本エネルギー経済研究所が緊急に発表した簡易レポート「東日本大震災による電力供給への影響について」によると、計画停電は4月いっぱい続き、その後は必要がなくなるそうですが、冷房需要が発生し始める夏になると、東電が夏頃にカバーできる5,000万kWの供給力を超え、同時同量が維持できなくなる可能性があります。
するとまた、夏期に、計画停電が必要だということになります。冷房需要のピークに計画停電が実施されることになるでしょうから、流通小売業、サービス業、飲食業などには痛手になるかも知れません。

■計画停電を避ける方策

しかし、見方を変えれば、社会が一丸となって、システマティックなピーク電力削減に動けば、夏期の計画停電は避けられる可能性があります。
大前研一氏は、「地震発生から1週間 福島原発事故の現状と今後(大前研一ライブ579) 」と題されたビデオにおいて、2時間生活時間を前にずらすサマータイムの実施と、土日の概念をなくして、各企業や学校などが回り持ちで週5日制を実施する(=2日分の休みを各々がずらして取る)仕組みを提案しています。(ビデオの最後の方にあります。)

これは非常にいいアイディアです。このような社会がシステマティックに行動パターンを変えることにより、ピークの電力需要は確実に減らせますから、計画停電を実施しなくてもよくなる可能性があります。

その他、ツイッターで浸透しているいわゆる「ヤシマ作戦」もピーク電力を減らすための1つの有用な社会方策です。

ソーシャルメディアがある現在、社会的な広がりを持つシステマティックなピーク需要削減は、もっと新しい方法があるかも知れません。大多数の人が、特定の時間帯に電力を食う行動をしないようにするための、簡単な取り決めがソーシャルメディアによって浸透すればいいわけです。(とは言っても私自身に妙案はありません。)

■日本型の新しいスマートグリッドの可能性

最後に補足すると、スマートグリッドも、同時同量を実現するための新しい仕組みだと言うことができます。

欧州の場合は、風力発電の比率が今後も高まることが予想されていますが、風力発電は発電量にふらつきがあるため(風がやむと発電できない)、ふらつきを吸収して同時同量を達成するものとしてスマートグリッドが発案されています。

日本の場合は、これまではスマートグリッドの必要性は低いと考えられていました。しかし今後は、発電の絶対量が不足している現状を分散発電でカバーする(各家庭、企業、地域などで再生可能エネルギー発電や小規模火力発電などを保有する)発想に立ち、かつ、上述の社会的広がりを持つシステマティックなピーク電力削減を組み合わせた、新しいタイプのスマートグリッドも有用かも知れません。

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