さて、「新春夢想」も今日が最終日。夢想ですから、様々な非現実的な部分には目をつぶって、夢のある話を展開します。

以下はカリフォルニア州で高速鉄道導入を推進している行政系の主体が作成した「高速鉄道はすばらしい」ということを住民やステークホルダーに理解させるためのPRビデオ。ざっと見るだけでも楽しいです。
これによると、高速鉄道が排出する二酸化炭素量は、移動距離当たりで飛行機の20%〜25%しかなく、環境に優しい交通手段であることがわかります。また、消費者が支払う運賃も航空機に比べれば安い。航空機に乗るために空港まで行く手間がなく、都心から都心までピンポイントで行ける。さらには道路の渋滞もない。いいことづくめだと、このビデオは言っています。

以下の図は米国の高速鉄道専門メディアHigh Speed Rail Newsのニュースビデオから引用した主要国における高速鉄道の取り組み状況。現在、高速鉄道の営業距離がもっとも長いのは日本です(グリーンの部分)。次いでフランス、スペイン、ドイツとなっています。建設中(青の部分)と計画中(赤の部分)の合計で見ると中国がダントツですね。計7,000マイル(11,270km)もあります。スペインとフランスも2,000マイル(3,220km)前後ありますね。

Highspeedrailplan

このほか、上のビデオではメキシコ、ロシア、アルゼンチンでも高速鉄道が計画中であると言っていますし、英国でも計画があります。高速鉄道は世界各国でブームになりつつあると言ってもよいでしょう。

国や州が高速鉄道を推進する理由は、以下が主なものです。

  • 経済成長が続いており、近い将来において、人の往来が増加が見込まれるが、現状の輸送インフラ(自動車、在来線、飛行機)では対処しきれない。
  • 輸送分野における二酸化炭素の排出量を減らす必要がある。
  • 高速鉄道の建設が雇用を生み、営業開始後も雇用を生む。
  • 移動の利便性が増すことで経済効果が見込める。

こうした理由を共有できる国はまだまだあるでしょうから、高速鉄道の建設は今後中長期にわたって続くと見てよいでしょう。

このような高速鉄道の建設ブームに対応すべく、世界に名だたる新幹線を持つ日本としても本腰が入っていることはご存じの通り。政府は高速鉄道の輸出を「パッケージ型インフラ輸出」の1つの目玉にしていますし、米国初の高速鉄道となるフロリダ州では、JR東海など複数の日本企業がチームを組んで応札しようとしていることをこのブログでもお伝えしました。

■あえて型落ちした車両を海外に売る

このようなインフラ輸出を発想する際には、日本人としては、世界で最高水準の技術や製品を輸出したいと思うのが自然です。しかし、相手国では、必ずしも最高水準の技術や製品を望んでいるわけではなく、そこそこの価格のそこそこの品質を望んでいるというケースが多々あるようです。インフラ投資やインフラ輸出の経験が深い方の書いたものを読むと、しばしばそうした指摘に出くわします(加賀隆一氏「国際インフラ事業の仕組みと資金調達」など)。
現在、フロリダ高速鉄道に応札しようとしている日本チームの動きは、それはそれとして尊重されるべきですが、これから動き始める他の国々の高速鉄道案件では、ありていに言えば、グレードをやや落とした高速鉄道で、むしろコストパフォーマンスで勝負するという姿勢があってもよいと思います。そして、ボリュームを取っていく、というのはいかがでしょうか?

そこで注目されるのがJR東日本の秋田新幹線で使われている、在来線を走ることもできる車両「E3系」です(こちらも参照)

フランスのTGVの資料を読むと、軌間は標準軌(1,435mm)であり、専用軌道を走る時にはTGVなりの高速を出しますが、そのまま標準軌の在来線へ入って在来線なりのスピードで運行することもできるそうです。また、駅についても在来線のプラットフォームをそのまま使うことがあるそうです。これはこれで便利だと思います。

日本ではJRの在来線で狭軌(1,067mm)が使われていますが、専用軌道を走る新幹線は標準軌。秋田新幹線のこまちも、東京ー仙台は東北新幹線の軌道を走ることが想定されていますから、車両は標準軌です。新幹線区間をはずれても、その区間についてはレールが標準軌になっているので(その区間だけ標準軌に改軌したとのこと。ただし一部区間では狭軌と標準軌の併存)、そのまま走れるというわけです。TGVが高速鉄道専用軌道と在来線の軌道の双方を走れるのと、まったく同じ図式です。

この在来線も走れる高速鉄道という性格が、これから世界で動き始める高速鉄道計画では大いに受けると思うのです。すべての区間で専用軌道を建設しなくてもよい。在来線のホームもそのまま利用できる。こういうポイントが高速鉄道建設コスト総額の圧縮に生きるはずです。

ということで「新春夢想」最終日は、秋田新幹線こまちのE3系を海外にどんどん売ってはどうかというご提案でした。

JR東日本ではE3系の後継車両であるE6系をすでに開発済みで、こちらは新幹線区間でE3系よりも速いスピードが出せるそうです。この新型E6系ではなく、あえて型落ちのE3系を売って、価格で勝負し、ボリュームを稼ぐのもいいと思うのですが、いかがでしょうか?

dimaizum

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今泉 大輔

今泉 大輔

インフラ投資ジャーナリスト。インフラビジネスリサーチャー。
銀行系シンクタンク、外資系コンサルティングファームからのリサーチ受託を経て、米最大手ネットワーク機器会社に7年間あまりリサーチャーとして勤務。金融、製造業、電力業などを担当。現在はインフラ関連のリサーチサービスを運営。

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