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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

[ニュースの背景]GEが中国のスマートグリッド関連企業などに20億ドルを投資(上)

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財務力の強い大企業は、中国を含む新興国のインフラ投資において「企業対国」の良好な関係を構築しながら大胆な投資を行う…、これが1つのパターンになりつつあるのかも知れません。GEの動きを見ているとそう思わざるを得ません。

先日、GEが中国に対して2012年頃までに20億ドルの投資を行うというニュースが出ました。

中国で20億ドル以上を投資へ=米GE
米GE、中国に1,600億円以上を投資へ
米GE、中国に1600億円投資 鉄道など合弁事業拡大

先日取り上げたモルガンスタンレーのインフラ投資に関する報告書”The Infrastructure Opportunity: Repair, Build and Stimulate”には、道路、鉄道、港湾、空港、水関連、電力などのインフラ投資について、先進国においても新興国においても、膨大な需要があるということが記されていました。

例えば、資金力が弱い東南アジアなどの国においては、このインフラ投資に関して外国政府の資金供与を期待し、そのような枠組みを作ります。簡単に言えば、お金を貸してくれる国に手を上げてもらいます。その代わりに、その国の企業に対して、建設などの便宜を図って上げます。典型的な例が、先日の中国からインドネシアに対して66億ドルのインフラ投資の合意がなされたというニュースです(China to Plow $6.6b Into Indonesian Infrastructure)。この件では中国が資金を出す見返りに中国企業が建設等の便宜を得るそうです。

インドネシアは今後5年間で港湾、空港、道路、電力などのインフラ投資を1,400億ドル分必要としているそうで、海外の資金を当てにしています。ちなみに日本からの投資も活発です。またこちらの記事には、日本が今後15年間にわたってインドネシアに対し500億ドルのインフラ投資を行うことが決まった(In October, officials announced a commitment by Japan to invest more than $50 billion in infrastructure here over the next 15 years.)と書いてあります 。

これに対して、中国では、すでに資金が潤沢という状況であり、外国政府はもとより外国企業からの直接投資でも、単純にお金を持ってきて何かをしてあげるというタイプの投資は望んでいないようです。むしろ中国は技術が欲しいわけです。
おそらく今回のGEによる20億ドルの投資は、GEが持つ技術の移転を相当程度認める形の投資になっている模様です。50/50比率の合弁企業は多分に技術移転の中身を含むものであるのではないでしょうか?

今回のニュースの大元となっているプレスリリースによると(GE to Invest More Than $2 Billion in R&D, Technology and Financial Services Partnerships in China)、以下のような案件が目白押しです。

・中国国家電網公司の子会社Wuhan NARIと50/50の合弁会社を設立し、送電網のモニタリングと診断を行う製品を製造する。
・上海の送電機器メーカーShanghai Tianling Switchgear Co.を国家電網公司の子会社であるShanghai Electric Power Co.ともに買収し、経営権を持つ。
・China South Locomotive and Rolling Stock Corporationの子会社Chengdu Locomotive & Rolling Stock Worksと50/50の合弁会社を設立し、ディーゼル機関車の推進機関、関連機器、部品の開発を行う。
・Beijing National Railway Research & Design Institute of Signal & Communicationと50/50の合弁会社を設立し、鉄道レールや都市交通信号システムの供給を行う。

この発表に先立って、GEは、風力発電の製造会社をHarbin Power Equipment Companyを合弁で作ることを明らかにしていました。また、今年4月には中国の揚州市と提携し、スマートグリッドのデモンストレーション施設をオープンさせています。非常に意欲的に多数の案件を準備してきていることがわかります。この背景では、オバマ大統領と胡錦濤主席との合意(こちらこちら)も奏功しているものと思われます。

GEの中国における事業の取り組みには、まだまだ記すべき事項がありますので、この話は上下で分けます。ご了承下さい。

次回は、中途になっている韓国のスマートシティ新松島について詳細を見ます。

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