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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

「消えるiPad」の先にありそうな未来

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iPad関連記事がたまたまTLで流れていて(@TKool経由)、リンク先のワイアードビジョンに飛んでみたらすごかったです。なお、@TKoolさんとは2度お会いしたことがあります。実は某社で某職…つまりプロ。

ワイアードビジョン:iPadの本質は「透明なデバイス」(動画)

この記事ではかなり革命的なことを言っています。

このタブレット機には何か、根本的に異なるものがあるのだ。
その違いは、この言葉に要約できるだろう。「iPadは消える」ということだ

 中略

この2つの点――インターフェースが「無い」ことと、反応が素早いこと――によって、ユーザーが何を見ていようとも、その表示しているものに、心理的な「具体性」が生じる。つまり、単にブラウザーで「Wired.com」を見ているのではなく、Wired.comを手に取って見ているように感じるのだ。
このことは、写真や動画についても、カレンダー・エントリーについても、電子メール・メッセージについても言える。ユーザーは、実際の画像やページやメッセージや映画を「そのまま手に取る」かのように感じるのだ。

「iPadは消える」とは、iPadを1ユーザーとして普通にさわっていると、そこにユーザーインターフェースがなく、ハードウェアとしてのiPadも感じることなしに、「コンテンツそのもの」「ウェブページそのもの」を触っている/手に取っている感覚になる、ということを言っているのですね。すごいことです。

この刺激的な指摘から、端末の将来を見通すことができます。

ハードウェアはバックグラウンドに下がる。
ユーザーインターフェースも意識する必要のないものになる。
「欲しい!」と思ったコンテンツが空から降ってきて、瞬時に、自分の眼前や手元で再生が始まる。
「読みたい!」と思った資料が空から降ってきて、瞬時に、自分の手元で読める。
そういう感じになるのでしょうね。

そういう感じになる、という人まかせな未来ではなくて、Appleは自分が敷いた道で、そういう未来へ引っ張って行っているわけですね。未来デザイナーというか。未来オーガナイザーというか。

そのへんの未来ぶりは、この上掲記事の末尾にある動画を見れば、かなりは実感できます。

---なお、上の「空から降ってくる」という表現は、30-40Mbpsの速度が出るLTE(今年末からドコモが提供予定)で、接続時のレイテンシが体感的にはゼロで、ということを踏まえて言っています。

自分が言いたかったことは、この先にあります。

上では「コンテンツ」や「資料」が空から降ってくると書きました。
少し先の未来においては、空から降ってくるのは、「コンテンツ」や「資料」だけではないのですね。
ソーシャルメディアが社会インフラ化する時代を先取りしたという評価が一部で聞かれるMicrosoftのWindows Phone 7 Series。この携帯端末用OSが示唆しているのは、携帯端末でふだん何かを操作する際には「アイコンよりも『人』でしょ?」という発想です。同記事中のリンク動画をご覧ください。

多くのアプリケーション/ツールが、自分がやりとりしている「人」を起点としたアクションにひもづけられていて、「人」をクリックすることで一連の機能が操作できる。そういうユーザーインターフェースになっています。

おそらく、ソーシャルメディアが社会インフラ化した暁には、そのようなインターフェースが非常に都合がよくなるはず。
例えば、いま現在、Twitterイベントで知り合ったYさんとコラボしているとします。そのコラボ関連の動作を行う際には、「Yさんを起点とした会話暦、メール暦、シェアしたドキュメント一式」が「Yさんをクリックすること」で瞬時に出てくるのが便利になります。「人」をクリックすることで始まる一連の動作とは、そういうことです。
MicrosoftのWindows Phone Series 7をデザインした人たちは、ほぼ間違いなく、そういう未来をイメージしてこのOSを作っています。

「人」をクリックすることで一連の操作が始まるコンピューティング。

仮に、これが近未来におけるコンピュータ環境のデファクト的なメタファーになったとします。

するとですよ、すると!

先の「iPadは消える」と組み合わせるとどうなるでしょうか?

「人」をクリックすると、その人が空から降ってきて「ハロー」です。もちろん、近未来の話をしていますw。

ある意味で持ち運び可能なTelePresence。
体感できる実態を伴った「人」が空から瞬時に降ってきて「ハロー」。
で、昨日、仕事でリアルな打ち合わせをした続きがその場できてしまう。
電話やメールのやりとりに伴う煩雑な、回数を重ねなければすり合わせができない、などということはない。「顔見て話せば、瞬時におk」の世界になるわけです。

Appleが未来を作ろうとしているという話をするのに、Microsoftも「人」中心のメタファーで未来を作ろうとしているという話が加わってしまいましたが、未来はこうした企業の切磋琢磨によってできるものなので、よしとしましょう。

追記。
上記のWindows Phone 7 Seriesのユーザーインターフェースを説明する動画を観て以来、これからのテクノロジーは、ソーシャルメディアがインフラ化することを前提に、「人」にひもづけられるツール/アプリケーションとして提供されないと、普及が難しいのではないかと考えるようになりました。ソーシャルメディアが社会インフラ化する状況において、個々のユーザーがどんな利用をするか?という発想でテクノロジーを形に落とし込んでいかないと、誰も使わないテクノロジーになるのではないかということです。
つまり、ソーシャルメディアがテクノロジーを引っ張る。そういう未来が来る可能性がある。
今まではテクノロジーがソーシャルメディア的なモノ全般を引っ張ってきたわけですが。その逆になるということです。
テレビも白物家電も電気自動車もお家の中のスマートグリッドも、おそらくは、そうなるのではないか?

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