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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

旅書籍メモ:「ぶらりあるき サンティアゴ巡礼の旅」安田知子著

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先日来、ウチのピーポーズのサイトの改修を進めていて、おおかた原型ができあがりました。考えているのは、非オンラインのリアルな[pepoz]です。色々な知見をお持ちの方にリアルな場でご登場いただいて、レクチャーをいただき、それに関連したおいしい食事をいただくというような内容を考えています。オンラインの[pepoz]から撤退するわけではなく、まず非オンラインで道筋をつけてから再びオンラインを盛り上げる、ということを考えています。

取り組むべきジャンルをまず5本に絞り込みました。

個々のジャンルについて、どんな世界を展開していきたいか、関連する書籍をご紹介することから始めています。以下はその第一弾。弊社サイトの3本の投稿を1本にまとめた上で転載します。

■旅のテーマ

Spainstation

「黄金の旅」の テーマ設定には色んなアプローチがあると思います。その1つに「日本百名山踏破」とか「日本百名湯めぐり」とか、全部制覇するのにかなりの日数を要するも のを選定し、1つずつ着実にこなしていくパターンがあるかと思います。四国八十八箇所をめぐる巡礼もその1つ。そして巡礼と言えば…サンチャゴ巡礼が頭に 浮かびます。

サンチャゴ巡礼は数が付く「○箇所めぐり」ではありませんが、いざ実行しようと思うと全行程800km、少なくとも40日はかかる非常に大型の旅の枠組みです。これも「○箇所めぐり」の1つと考えてよいでしょう。

2007年7月から11月にかけて日経夕刊で週1回「還暦カミーノ~スペイン巡礼記」が連載されましたが、お読みになった方も多いかと思います。同紙編集委員の土田芳樹氏が還暦を迎えたのをきっかけに、自らの足でサンチャゴ巡礼路を歩き、レポートを書くという企画でした。当サイト運営人dimaizumもこの連載で初めてサンチャゴ巡礼のことを知りました。

サンチャゴ巡礼、なぜ気になるのでしょうかね?

「黄金の旅」の中身を考えて行くにあたって、サンチャゴ巡礼は絶対にはずせないと思いました。というのも、サンチャゴ巡礼は今日思い立って明日行けるような旅行ではありません。相応の準備が必要です。
その準備も、長丁場に備えた体のコンディションづくりはもちろんのこと、情報収集も必要ですし、それも単なる旅行の目的地の情報収集とは異なる、いわば一種の勉強が必要になると思います。

サンチャゴ巡礼がポピュラーな巡礼として確立した背景には何があるのか。多くの人はなぜその巡礼に赴くのか。自分が行く際には、どういう納得の仕方で行くのか(旅行が大型であるだけに、自分なりの納得が必要になります)。
出かける前にサンチャゴ巡礼に関するもろもろの事項の理解を深めておいて、そうしてすっきりとした納得感を持ち、それから行くのが順当ではないかと思うのです。

800kmを歩くというのは、自分が歩く場合もそうですが、1,000年前の人が歩いた時にも、現代に欧州の方が歩く場合にも、相当に大変なことで す。その大変さを乗り越える自分なりの納得感というものが1,000年前の人にもあったでしょうし、現代の欧州の方にもあるでしょう。そうしたものを理解 していくなかで自分の納得もできていくのではないかと思うわけです。

まずは関連の書籍を読むのがいいかと思います。ということでオンライン書店で数冊取り寄せてみました。まず最初に読んだのが安田知子著「ぶらりあるき サンティアゴ巡礼の道」(芙蓉書房出版)。

安田知子氏は1975年福岡生まれのライター。略歴には「40カ国以上を旅する。旅先では市場やスーパーマーケットを覗いて、食堂でごはんを食べ て、通りで見かけたカッコイイ人を眺めるのが旅の基本スタイル。2004年に初めてサンチャゴ巡礼路を歩き、以来、歩く旅に魅了される。」とあります。ま だお若い方ですね。

この本は非常に興味深く読めました。著者が自分の目で確かめ、歩いて確かめ、食べて飲んで確かめたものをさらりと書き綴っているのですが、最初は好 奇心と高揚感でいっぱいだったものが、800kmの行程が進むのに応じて、段々と単調な日々になり、著者の心境にも変化が訪れ、考えが深まり、そして最終 目的地のサンチャゴ・デ・コンポステーラに着いて感激に包まれる。そうした行程の一部始終がしっかりと追体験できるように書かれているのです。従って読み 終わると、自分も800kmを歩き終わったかのような満足感が得られます。旅行記として非常に優れていると思いました。

■サンドイッチとワイン

Spanish_ham_sandwich_bocadillo

地名表記ですが、日本では「サンティアゴ」、「サンチャゴ」の2つの表記がともに数多く用いられており、Googleでの検索結果も、どちらを使う かで違ってきます。また、Amazonで書籍を検索する際にも、どちらをキーワードにするかで結果が違います。本サイト(今泉注:ピーポーズのこと)では「サンチャゴ」を用い、書名な ど固有名詞として使われている場合には「サンティアゴ」も用いることとします。

さて、旅書籍メモ、安田知子著「ぶらりあるき サンティアゴ巡礼の旅」の続きです。この本では巡礼路を歩いて行く間に食べたり飲んだりすることのできるものや店に関する記述がたくさんあり、非常に楽しいです。
まず、巡礼者たちがほぼ毎日口にするのが「ボカディージョ」(bocadillo)というサンドイッチ。

公園で巡礼者四人とボカディージョを食べていると、隣に座っていたアメリカ人の巡礼者が言った。
「この巡礼中にどれだけのワインを飲み、何本のボカディージョを食べるのかな?」と。
「ボカディージョ」とは、スペイン語でサンドイッチのこと。これも巡礼中に覚える単語の一つ。スペインのパンはフランスのバゲットよりも大きめ。これに生ハムやチョリソ(乾燥ソーセージ)、チーズを挟んで食べる。
巡礼路でランチや休憩中に食べることが多く、巡礼者のお弁当みたいなもの。
ボカディージョは、朝からアルベルゲ(巡礼宿)で作っていくこともあるし、歩いている途中に、村の商店やパナデリア(パン屋)に寄ってパンと具を買うこともある。そして、公園のベンチや木陰でボカディージョを作って食べる。
中略
また、バルでもボカディージョを作ってくれる。種類はハム、チーズ、チョリソ、ツナなど一通りあるが、トルティージャ・フランセサ(プレーン・オムレ ツ)をよくオーダーした。運ばれてくると、オリーブオイルの風味がすごい。スペインでは、バターではなくオリーブオイルをたっぷり使う。熱々のオムレツと パンだけのシンプルなものだが、とても美味しい。
中略
そして、ボカディージョのために、巡礼者のバックパックの中には、パン、それに生ハム、チョリソ、チーズ、ツナ缶、パテなどが入っていることが多い。

この記述を読んだだけで食べたくなってしまいます。なお、掲げている写真は本物のボカディージョです(非常にキレイに撮られていますが、巡礼路で食べるものはもっとワイルドそうです)。
あとは、ワインです。

巡礼中に、ワインを飲まなかった日は一度もない。私はワイン好きというわけではない。ただ飲む機会が多かっただけ。レストランでの食事にはワインが付いてくるし、アルベルゲでも誰かが買ってくるし、またバルでもワインが一番安い飲み物だったからよく飲んだ。
中略
スペインでは、ワインをガバガバ飲む。気取った感じがなく、九州での焼酎の飲み方に似ている。それは銘柄、水、氷、グラスなんかに特別にこだわらずに飲むということ。
中略
また、ヴィアーナでは突然の雪で、民家の軒下に避難したら、家の人が中に入れてくれてワインを出してくれた。そして、帰りに自家製の白ワインを一本持たせてくれた。
それにしても、よく飲んだ。特に歩いている途中にバルに寄って飲んでいた。ビールもいいが、トイレに行きたくなるのでワインにする人が多い。

この引用部分だけを読むと、著者だけが特別にワインを飲んでいるように受け取られるかも知れませんが、欧州の巡礼者、特にスペインの巡礼者がそうい うスタイルで巡礼を続けているとのことです。というより、日常の食においてワインをケチらずに飲むということがあり(値段も安そうです)、そのスタイルを 巡礼の時にも続けているというのが正しいところでしょう。日本から行った巡礼者も彼らと一緒に歩いていると、自然とそのスタイルに染まってしまうというこ となのだと思います。

現地のカフェ兼食堂兼居酒屋であるバル(Bar)についても非常に魅力的な記述が多々ありますが、それについては、この本で直接お読みいただいた方がよいでしょう。

■100kmだけ歩く

著者の安田知子さんは、パリを拠点にしてお仕事をされているようで、こちらにインタビュー記事がありました。この本の後で「パリの老舗」(ピエブックス)という本を書いていらっしゃいますね。

さて、この本を読んでわかるのは、サンチャゴ順礼が非常に多種多様であるということ。一般的には、ピレネー山脈のふもとからサンチャゴまでの800kmを淡々と歩き通すことがサンチャゴ順礼だと思われていますが、実はそうではないようです。

まず、順礼路をいくつかに分割し、例えば毎年の休暇時期に5日間ずつ投入して、10年近くかけて800kmを踏破するというパターンがあるそうです。1回に100kmずつ、8回に分けるといったパターンもあるのでしょうね。

それから、800km全部を歩かなくても、途中の大きなレオンという街から歩き始める人もいれば、最後の100kmだけを歩く人もいるそうです。

サンチャゴには、巡礼者に順礼証明書を発行する事務所があるそうで、そこでは、道々歩いてくる間にアルベルゲ(順礼宿)などで押してもらったハンコにより、徒歩で100km以上歩いたことが証明できれば、コンポステーラという順礼証明書が発行してもらえるそうです。

ということで、800km全部を歩かずに、バスで移動しながら条件を満たす人もいるとのこと。その他、自転車での踏破も認められているそうで、 200km以上を走ったことが証明できれば、コンポステーラを発行してもらえるそうです。これだと、実際に自分がサンチャゴ順礼路を歩いてみる際にも、自 分に合ったパターンで挑むことが可能になりますね。

もう1つ、この本を読んで、サンチャゴ順礼について漠然と持っていた先入観が吹き飛んだことがあります。日本にいて「サンチャゴ順礼」という言葉を 聴くと、どうしてもそこに「求道」のような歩くスタイルを思い浮かべてしまいます。「精神修養」「修行」「苦行」のようなニュアンスをくっつけて考えがち です。

彼女が経験したサンチャゴ順礼はまったくそういうものではなかったようです。タフではあるけれど、楽しい毎日…。順礼路で知り合った仲間と毎晩、食べて飲ん で楽しい時間を持つ…。シャワー共用、個室のない大部屋で眠る日々だけれども、仲間意識が生まれ、独特の連帯意識が生まれる…。そんな雰囲気の順礼だった ようです。

これは世界各国からサンチャゴ順礼に集まってくる人々のなかに欧州からの巡礼者がやはり多く、彼らの順礼のスタイルがそうだということなのかも知れません。前投稿で書いたワインの飲み方と同じ事情があるようです。

いずれにしても、この本では、安田さんの目を通して、サンチャゴ順礼の現実の姿を知ることができました。

*下の写真はサンチャゴ・デ・コンポステーラ・カテドラル

Santiago_de_compostela_cathedral

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