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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

米政府の取り組み - スマートグリッドの現状についてのメモ(2)

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スマートグリッドの醍醐味は、以前コンピュータ業界で起こった、ホストコンピュータをダム端末が取り巻く構造から、ユーザーが1人1台のパソコンを持ってネットへつなげる構造へと変化した、まさにそれに似たことが起こる可能性を感じさせるという点にあります。発電の民主化と言おうか、電力供給のパーソナライゼーションと言おうか。
その革命的な本質から目をそらしていないのが米国のプレイヤーに共通した特徴です。ただし、あくまでも可能性であって、現実にそうした革命的変化が起こるかどうかは今後の各プレイヤーの活動次第です。

スマートグリッドは消費者になじみのない発電や送配電を含み、かつ、国の低炭素化政策や次世代のプラグインハイブリッドカーなども関係しているため、非常に範囲が広く、捉えにくいです。けれども、関係するプレイヤーを整理して、それぞれの利害得失を考えていくと、よく理解できるようになると思います。

なお、「スマートグリッド」の意味を改めて確認しておくと、米国や欧州ではおおむね、複数の発電主体と複数の電力小売事業者がメッシュ状の送配電網によって結ばれて、日々の電力供給が行なわれています。このメッシュ状の送配電網を「グリッド」(格子)と呼んでいます。「スマート」(賢い)には「ITでコントロールされた」「双方向の」「次世代型の」といったニュアンスが込められています。2つ合わせて「次世代型送配電網」といったところ。メリットを受けることになる末端の一般家庭世帯もここに含めて考えます。
なお、日本の場合、日本列島を貫く送配電網はメッシュ状ではなく”串型”になっており、その点で「グリッド」という言葉がそぐわないという特性があります。

米国のスマートグリッドを動かしているプレイヤーは主に、政府、政府系標準規格団体、電力業界団体、電力会社、既存の電力系機器ベンダー、新たな市場機会を窺うIT系技術ベンダーの7つに分かれます。ざっと概況を見ていきましょう。

〔政府〕
米国のスマートグリッド政策はオバマ政権を待たず、ブッシュ政権時代の2007年から始まっています。この頃、ブッシュ政権ではエネルギー消費の抜本的な効率化を推進する政策を複数提示しています。具体的な目標は以下。
1) 10年間でガソリン消費を20%削減
2) 2017年までに350ガロン原油相当の再生エネルギーを導入(ガソリン消費15%減を受け持つ)
この延長で2007年12月に法案"Energy Independence and Security Act of 2007"が成立しました。同法で掲げられている目的は、エネルギー安全保障、再生エネルギーの活用、消費者保護、工業生産・建物・自動車におけるエネルギー消費の効率化、低炭素化とエネルギー蓄積の新技術の開発研究、国家レベルのエネルギー効率の向上。

同法のsection 1303において、スマートグリッドの振興を目的とした"The Federal Smart Grid Task Force"(以下SGTF)の設置が謳われています。

SGTFは、エネルギー省長官を理事とし、電力を含むエネルギー関連の規制事務局であるFederal Energy Regulatory Commission (FERC)、日本工業標準調査会に相当するNational Institute of Standards and Technology (NIST)に加えて、エネルギー政策に直接間接的に関わる省庁からも代表を集めて、以下を議論・調整しています。
 1) スマートグリッドの研究開発
 2) 広く浸透させることが可能なスマートグリッドの標準とプロトコルの開発
 3) 現行の電力関連規制とスマートグリッド技術および方策との整合性
 4) 電力インフラの開発、信頼性確保、安全性確保とスマートグリッド技術および方策との整合性
 5) 電力供給、需要、送電、配電に関わる多様な要素とスマートグリッド技術および方策との整合性、および関連施策

このように「スマートグリッド」という明示的な枠組みを設けて、省庁横断型の推進組織を作っていることが大きな特徴となっています。また、そこに、広範な浸透のカギを握る標準およびプロトコルの開発も大項目として入っていることに注意する必要があります。スマートグリッド技術が仮に国際標準的なものに育っていくとするならば、推進主体の政府に「標準を形作ろうとする意思」があるかないかで中身に大きな違いが出ます。言い換えれば、国内プレイヤーが恩恵を受けることができる国際標準になるのかどうかが、政府の「意思」によって決まります。

SGTFの活動の一環で2009年7月に、Smart Grid System Reportが刊行されています。これは現在の米国のスマートグリッドの動きを包括的に記しており、日本の関係者の方にもかなり参考になると思われます。また、米政府が考えるスマートグリッド政策の方向性がわかります。隔年刊行だそうです。

オバマ政権のグリーン・ニューディール政策は、この後に位置づけられるものです。周知のように、オバマ政権では、米国経済への刺激策パッケージである米国再生・再投資法 (American Recovery and Reinvestment Act of 2009)を成立させ、このなかにエネルギー分野の施策複数を含めて、計613億ドルの予算を割り当てています。スマートグリッド関連の主な施策には以下があります。
 1) スマートグリッド関連 110億ドル
 2) 各州政府に対するエネルギー効率化政策支援 63億ドル
 3) 再生エネルギーおよび送配電技術の新規導入支援 60億ドル
 4) 中間所得世帯に対する家の省エネ方策支援 50億ドル
 5) エネルギー省内電力供給エネルギー信頼性局(Office of Electricity Delivery & Energy Reliability)が実施する既存送配電網の近代化およびスマートグリッド関連施策に対して 45億ドル
 6) 連邦・州政府の政府ビルにおけるエネルギー効率化方策 45億ドル
 7) 西部地区の送配電網の更改に対して 32.5億ドル
 8) エネルギー効率化方策の研究 25億ドル
 9) 次世代自動車蓄電池の研究 20億ドル
 10) 電気自動車開発 4億ドル
これらだけでも約450億ドルという規模になっています(多いようで少ない?)。

これにより、ブッシュ政権が敷いたスマートグリッド振興の基本路線に積極的な予算措置が講じられたということになります。

*まとめるのに時間がかかっておりまして、当初予定の全3回から増えそうですが、小まめにお出ししていきます。

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