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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

「世界経済を救うのは女子の物欲です!」(by Sweet編集部)

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早朝作業の時間を確保すべくウィークリーマンション赤坂に泊まった翌朝、風呂に入りながら読むものがないので、近所のコンビニに走りました。雑誌売場でまず「InRed」を手に取ってぺらぺらめくっていると、巻末の自社広で「『Sweet』は60万部発行」という文字列が目に留まりました。

雑誌「Sweet」。60万部なのか。スゴイ。

ということで、「Sweet」の表紙を見ると、黄色いドレスを着た女性(これが実は浜崎あゆみ)の胸のへんに「世界経済を救うのは女子の物欲です!」というコピーが躍っています。世界経済の現況に敢然と立ち向かう姿勢がすがすがしい。
これは買わずばなるまいと、ウィークリーマンション赤坂の部屋に持ち帰って、ちらちら読んでみました。

いくつかわかったことを記すと、いわゆるリアルクローズの世界には、だいたい7,000円~30,000円の価格帯のアイテムを扱う無数のブランドがきら星のごとく存在しており、”女子”の選択肢は無限と言っていいぐらい多様であること。

2つ目に、購入希望者が殺到することを想定して、アイテムごとに発売日や入手可能な場所を詳細に記すパターンもあるということ(従来なら価格とブランド名を記すぐらいだった)。つまり、売れている雑誌にアイテムを商品を露出させるということが、すでに「チャネル化」しているということ。

3つ目に、この号で扱っている服飾、アクセサリー、靴、かばん、帽子などのアイテム数は少なく見積もっても数千に上り、借用と返却、撮影、商品情報の管理、レイアウト時の商品情報のひも付けなどの手間ヒマが、ともすれば労働集約的な作業になるのだろうけれども、そのへんの管理をどうやっているのかすごく謎であるということ。

4つ目に、コストのかかった付録が付いているのは最近の傾向であるからよいとして、その付録のパッケージにも「消費者相談室」的なコールセンターの電話番号が明記してあり、スゴイなということ。

5つ目に、読ませるためのページというのは、従来的な雑誌の感覚からすればほとんどないに等しいということ…。

だいたいこのへんでしょうか。

物欲喚起装置としての役割を明確に意識していて、もうそれあるのみという姿勢が60万部につながっているのだと思います。もちろんその背景には、(株)ブランディング(元(株)ゼイヴェル)が醸成してきたTGCの熱狂的な環境があるわけですが。

業界事情をよくわかっていれば、中にある様々なコラボ企画の背景に同誌編集部と多数のアパレルブランドとの非常に密な連携が読み取れると思います。

おそらく「Sweet」は1つのリテールビジネスであり、編集部員はバイヤーであり、アパレルブランドと「次に何を売るのか」を一緒に考え、毎号毎号取り扱った商品の売上も把握していて、次号で取り扱う商品の売上を向上させるべくさらなる工夫を凝らす、というようなサイクルが回っているのでしょうね。

別な言い方をすれば、既存の雑誌が注力してきたポイントとはまったく違う部分に力点を置いて雑誌が作られており、従来の雑誌編集者とは一線を画す動きをするスタッフが相当数いる。それによって60万部が可能になっている、ということなんでしょう。ビジネススクールのケーススタディとしてみっちりヒアリングするとおもしろいケースになると思います。

この雑誌を買ったのはいいとして、問題はくっついてきた付録(Cherというブランドのトートバックとポーチが入った箱)をどうするかですよね。捨てるわけにも行かず、自分の鞄に入れて家に持ち帰りましたが、どうしたものやら。

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追記。

「プチプラ」という言葉を初めて知りました。上で、7,000円~30,000円の価格帯と書きましたが、それよりも一段下の価格帯が「プチプラ」(petit price)としてまとめられています。「値頃感のある価格」というほどの意味合い。雑誌全体がプチプラの商品だけで埋まっているとすれば、その雑誌は売れないでしょう。プチプラのひとつ上の価格帯の商品で物欲を喚起しつつ、現実的な選択肢としてプチプラも用意する、というのがいいのでしょうね。

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