「ライフタイムバリュー」という言葉があります。意味は「その人の人生における特定分野への支出総額」。

著作権関連の動きはもうまったく追いかけていなくて、何がどうなっているのだかわかりません。今日び各人が追いかけねばならないテーマや分野は細分化されているので、ここの投稿(好奇心領域の分散受け持ち体制)でも書いたように、各人がそれぞれの担当領域を定めてしっかりと守ればよいと考えております。

けれどもこれだけは言えます。インターネットのあちこちで音楽系の動画や楽曲にアクセスすることができると、その人が生涯において音楽に支出する金額は確実に大きくなる、と。
1960年代以降の音楽はすべて「繰り返して聴くことによって価値が高まる」側面があります(例外はあるだろうけれど)。人は、よりよい状態で「繰り返し聴く」ためにそれを買うのです。
買うのに先立って「繰り返し聴く」ことがなければ、価値を感じることもなく、過ぎ去っていくのです。その人の人生においてまったく関係のない楽曲として通り過ぎていくのです。1回や2回では足らない。4~5回フルバージョンを聴いて初めて買おうぐらいな気持ちになるのです(経験が豊富だと1フレーズ聴いただけで買うべきCDかどうか判別つきますけどね。そうなるまでに相当の投資が必要)。

キリンのCMのサイトでユーミンが「あの日に帰りたい」を1フレーズ歌っているのを聴いたとします。あぁーええわーと思うと、今日びGoogleなんかで必ず曲名を検索することになります。するとYouTubeにどこぞの人が上げたフルコーラスの動画がヒットする。
見てみます。
「あぁーええわー」が募る。
何度か繰り返し見る。
「あぁーええわー」が「あぁー買おうかどうしようかー」に変わる。
アマゾンかなんかへ飛ぶ。荒井由実で検索してみる。収録アルバムが「YUMING BRAND」だったことを突き止める(と同時に思い出す)。
脳内購買検討リストに入る。
買うか買わないか、いつ買うかは状況次第…

そんな具合で、特に音楽系コンテンツの場合、「ネット経由で聴く/観る」というのと「買う」というのとはホップ&ステップぐらいの位置関係にあります。
なので、「買う」ことの促進のためには、低解像度版については自由にディストリビューションさせた方がいい(高解像度版については別)。

10代20代の頃に買うことがないとしても、人生長いし、30代40代50代になってから買うということはすごくあるわけです。音楽産業の将来にとって非常に大事な若年層の「ライフタイムバリュー」を大きくするには、色んなところで耳にすることができたり、動画を見れたりする方がよいと思います。法律で締め付けてはダメ。

追記。

楽曲を買うという行為は、投資の側面が非常に強いということもあります。CD1枚2700円で買う→スカだった→どうしてくれるんだ、オレの2700円!ということになりがちです。これは1曲200円程度の音楽配信でも同じ。スカだった場合のダメージは相応にあります。

スカでないことがわかるためには、予め、繰り返し聴くことができる機会が必要です。スカなCDにたくさん当たった経験があれば、そういう消費者の気持ちがわかるんだろうけどなぁ。

それからスカかどうかは、個人の嗜好によっても違ってくるので、そこがまた難しいところ。最適解は、いつでも好きに低解像度版を聴けるようにすること。これあるのみ。

たぶん現在音楽市場から離れてしまった人の多くは、選曲ノウハウを培うことができずに、スカ(あくまでもその人にとってのスカです)にめぐり合う経験が何度か重なって、「もうCDなんか買ってやるもんか」という気持ちになった人だと思う。このへん、リサーチする必要があると思います。

dimaizum

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今泉 大輔

今泉 大輔

インフラ投資ジャーナリスト。インフラビジネスリサーチャー。
銀行系シンクタンク、外資系コンサルティングファームからのリサーチ受託を経て、米最大手ネットワーク機器会社に7年間あまりリサーチャーとして勤務。金融、製造業、電力業などを担当。現在はインフラ関連のリサーチサービスを運営。

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