麻倉怜士氏の記事で考える日本の2012年の住宅内コミュニケーション
旧聞になりますが、日経IT+PLUSに掲出された麻倉怜士氏の「07年ハイビジョンムーブメント爆発(下)進化・深化・真価をみせた3製品」はすごくおもしろかった。
麻倉怜士氏のテキストは「新しい市場がこのへんにあるよ」ということを明確に示唆していて、あえて命名すれば「市場創造型文筆家」の典型だと思います。消費者目線がしっかりとあり、変化の激しいこの世界にあって、消費者が実感できる価値はどのへんにあるのかを正確に理解しているように見受けられます。経験量がすごいんだろうな。
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KUROが登場したことで、各社のベンチマークがKUROになり、日本のテレビのクオリティーが底上げされるであろう。
パイオニアは06年まで廉売合戦に参加し深い傷を負ったが、この会社本来の、高級品をわかる人に売っていくという商法に変わったことは、会社的にも大きな意味があったのではないか。ユーザー・セグメントの三角形の半分から上を狙うという作戦はマーケティング的には存在するが、モノがそれにふさわしくないとまったく意味がない。今回のKUROは現代の薄型テレビにおける「スキミング戦略」というにふさわしい。
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パイオニアは好きなメーカーです。自分が使っている80年代のアンプ2台が同社製だということもあるし。日本が誇るオーディオメーカーですよね。同社の業績が最近低迷していたのを非常に残念に思っていました。それがプラズマの高価格帯の製品で復活する可能性が出てきたということで、喜ばしいことです。僭越ながら、世界各国の富裕層を狙ってボリュームをどんどん取っていって欲しいと思います。
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あのCMが凄いのは「もったいない」という言葉の前に言外に「贅沢しないと」がつくことだ。環境的思考というか節約のキーワードだった「もったいない」に贅沢思考を与えたのが斬新である。「もったいない」という言葉は世界的に有名になり、環境行政のキーワードにさえなるが、それは節約の話。これは節約とは関係ない。せっかくハイビジョンテレビを持っているんだからDVDじゃテレビの性能を十分に使っていなくて「もったいない」のである。
BDでせっかくもの凄く綺麗な映像が記録できる舞台が揃ったのに、DVDの貧弱な映像に残すのは、人生の損だと言っているのである。そこまでのパンチを含有したコピーだからこそ心の琴線に触れ、思わず財布を広げる。国際的に流行語となっている「もったいない」のポジティブな使い方を開発したCMとして高く評価したい。
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矢沢永吉が出演していたソニーのBDレコーダーのCMに関する言及。富裕層マーケティングを意識した秀逸な広告論です。すばらしい。
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1位は有機ELテレビが商品として登場したことだ。登場と同時に市場では瞬間蒸発の状態が続いている。12月の初旬に秋葉原のヨドバシカメラで訊いたところ600人待ちだといわれた。
中略
まず注目は画質だ。有機ELテレビの画質のすごさは、人類がこれまで見たことのない映像がそこにあること。これまでの映像はブラウン管をベースに考えられていた。液晶にしろプラズマにしろ目標はブラウン管だった。ブラウン管のよさは色再現性と階調再現性、そしてピーク再現だ。しかしブラウン管にも欠点がある。それはフォーカスが甘いことである。一方、液晶はフォーカスはよいが、色再現性と階調再現性がブラウン管のレベルに達していない。
液晶のフォーカスとブラウン管の各種の再現性を満たすのが、有機ELなのである。ソニー製品のコントラストは約 100万対1。実際のところ通常の絵では約5000対1だというが、これは液晶の6倍以上の数値だ。特にすごいのはピークが出ること。きらめき感が非常にクリアに出る。画素数は960×540ピクセルでフルHDの4分の1にすぎないが、コントラストがあると、画素が少なくとも非常にしっかりとした描写になる。
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ハイビジョンも有機ELもあまり詳しくありませんが、シスコの「TelePresence」、パナソニックの150インチの「ライフスクリーン」が出てきているなかで、日本のNGNのキラーアプリケーションはどうしてもこのへんを活用したものになりそうだ、ということをぼんやりと思い描いています。
そういう動きのなかに、麻倉氏の言うような有機ELテレビも加わってくるわけです。2012年あたりの日本の住宅内コミュニケーションは、かなり今とは変わったものになっているかも知れません。
追記。
この記事(【麻倉怜士CES報告1】主催者ブリーフィングで分かったデジタルの四つのトレンド)で麻倉氏が報じている4つのトレンドというのも興味深いです。リンクしているスライドの画像にある以下の英語と一緒に見比べると意味がハッキリしてきます。
1. It "Goes to Eleven" Phenomenon Alive and Well
2. 360°Solutions
3. Distribution Evolves
4. Mobility Redefined