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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

読後メモ:「アンビエント・ファインダビリティ」

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「アンビエント・ファインダビリティ」
Peter Morville著/浅野紀予訳 オライリー・ジャパン

この本は、現在、インターネット界全般が抱えているサーチにまつわる問題に関する深い考察というよりも、世の事物すべてに関係する検索行為の”博物誌”みたいな内容になっている。また著者はおしゃべり好きである。
従って、僭越ながら、博物誌系の記述と饒舌な部分とを読み飛ばさせていただいて得られたメモのうち、特に重要なのが以下。

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言うまでもなく、探索可能な対象物とシステムの成功事例は、密接に関連していることが多い。オレンジ色の海の上ではオレンジ色の救命胴衣は発見できないかもしれないが、Amazonが取り出す「SIP(その本の特徴的なフレーズ)」は書籍の海から即座に飛び出してくる。ファイダビリティが必要とするのは、定義、区別、差異である。物理的環境では、大きさ、形、色、位置が対象物を区別している。それに対してデジタルの領域では、言葉というものに頼る度合いが非常に大きい。ラベルとしての言葉。リンクとしての言葉。キーワードという言葉。
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検索可能空間を前にした時、ヒトは、名詞で関心領域を狭める。名詞によるサーチは、おそらくかなり普遍的な行為である。
その昔、インドで仏籍を収集するために西域をはるばる旅した玄奘三蔵の頭にも、黄金や胡椒を求めて喜望峰をぐるっと回って航海していた貿易商人の頭にも、固有の名詞があったはずである。その世界の一般の人たちにとっては非常に特殊な名詞が。そういうことに思いを致した一節。

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商品をもう1つ製造して在庫に加えるコスト、すなわち限界費用がゼロ同然になる経済においては、競争への挑戦と大いなる勝利は、ファインダビリティの中にある。
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納得至極。

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ファインダビリティに関しては、海の精セイレンの歌声のように、テクノロジが多くの者たちを破滅に誘ってきた。
 中略
ITの「I(情報)」の部分に注目するだけでは十分でない。また、われわれはHCI(Human Computer Interaction、人間とコンピュータの間の相互作用)の「C(コンピュータ)」をなくさなければならない。なぜなら、アンビエント・ファインダビリティはコンピュータの問題というより、人間と情報の間の複雑なインタラクションに関わる問題であるからだ。
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この認識がシリコンバレーの主流の間で広がりつつあるとすれば、Googleは早晩、ヒトを使った検索アーキテクチャというものに手を出すかも…という予感。AmazonのMechanical Turkもその路線だし。

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彼らが「採餌(foraging)」という用語を使うのは、生命維持の糧を探し回る有機体のメタファーを想起させるためと… 
 中略
情報採餌に関する彼らの研究結果は、Jacob Neilsenによって、このGoogle全盛の時代においてきわめて重要だと指摘された。そして彼らの「情報の匂い、痕跡(information scent)」という概念は、ウェブデザイン業界の専門用語の仲間入りを果たしている。
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「情報の匂い」という文字列を発見できただけでも、この本に目を通した価値はあった。情報は匂いを放つ。情報は匂いを放ってそれを求める人を誘引する。そこには痕跡ができる。1人の人間が作った痕跡を他の複数がたどることになる。痕跡がくっきりと浮かび上がるようになれば…。

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