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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

"meme"という考え方はすごく便利だ

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むかしジョン・レノンが「人に何かを伝達したい時は、言葉によるコミュニケーションよりも、音楽によるコミュニケーションの方が速い」ということを言っていたのを何かで読みました。その時は何のことを言っているのか、よくわからなかった。

テキスト書きの仕事は、ひとりで完結する部分が大きく、”表現されるもの”をひとりでコントロールしていくようなところがあります。多い時でも編集者役の人が1人ないし2人加わる程度。「人に何かを伝達したい時」は、自ら文字を書けばよいわけなので、別のコミュニケーション手段を使う必要はありません。

けれども、新しい理念をもった新しい会社を作るといった場合、つまり、”表現されるもの”が「会社」である場合には、コミュニケーション手段のことをかなり真剣に考えなければならなくなります。内部外部の関係者が複数になりますから。これは「新規事業」でもそうだろうし、「新製品」でもそうです。「イノベーション」全般にも通じると思う。

この時、コミュニケーションされなければならないものを「理念」とか「コンセプト」とかの言葉で捉えて、それを伝達していくことに頭をひねると、かなり遠回りすることになると思います。というのも、伝達されることを欲しているのは、もっと内部にある、不定形な何かであるから。

ここにおいて"meme"という考え方がすごく役に立つ。meme、ご存知だと思いますが。

-Quote-
ミーム(meme)とは、いわゆる文化的遺伝子で、文化内の「変異」が「遺伝(伝達)」的に承継され、「自然選択(淘汰)」される様子を進化になぞらえたとき、遺伝子に相当する仮想の主体である。
 中略
例えば「ジーパンを履く」という風習が広がった過程をミームの視点から捉え直せば、『1840年代後半のアメリカで「ジーパンを履く」というミームが突然変異により発生し、以後このミームは口コミ、商店でのディスプレイ、メディアなどを通して世界中の人々の脳あるいは心に数多くの自己の複製を送り込むことに成功した。』となる。
-Unquote-
 ---Wikipedia - ミーム

伝達されたがっているのは、もっと奥深いところにある、新しい会社の"meme"である、と捉えることによって、「なぁーんだ、memeが伝わりさえすればコミュニケーション手段は何でもいいわけじゃんか」と割り切りができる。
そういう視点で冒頭のジョン・レノンの言葉を見直すと、すとんと腹に落ちます。

だから、絵が得意な人は絵を描けばいいし、ほんとうに楽器が演奏できる人は演奏したものを聴かせればよい。詩を書くのもいいだろうし、ショートムービーを1本撮るといったパターンがあってもよい。
新しい会社を作る場合でも、新しい製品を作る場合でも、そんなコミュニケーションのとり方で、深いところから沸いてきたmemeを伝達することができる可能性があります。

さらにそこでコミュニケーション効率のようなものに考えを巡らすと、伝えなければならない相手の方がたくさんいる場合、one for allみたいな視点で、「一個作れば、それがどんなシチュエーションでもどんな相手にでも使える」というmeme伝達アイテムを作ればよいわけですね。複製が簡単なもの、デリバリーが容易なものということです。

例のTim O'ReillyのWeb2.0の概念図にしても、すでにタイトルからしてmemeという言葉が入っていますが、あのいわく言い難い”深遠さ”も、彼が深いところから拾ってきたmemeを伝達しようとしていると考えれば、納得が行きます。

新しい会社の場合は、図体が小さいうちは、「会社のモックアップを作っているんだ」ぐらいの意識でいるといいかも知れません。そのモックアップとしての会社がその会社本来の姿に関するmemeを伝達するメディアになります。

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