楽曲メモ:capsuleの「グライダー」
結局、詞で手を抜かない人がいいわけです。
中田ヤスタカ集中強化月間が続いております。2ヶ月目に突入。中田ヤスタカが多産型の天才であることがいよいよ明らかになっています。
新作「FLASH BACk」を正しく評価するためには、旧作をきちんと聴く必要がある。ということでまずは「Lounge Designers Killer」。タイトルは主張が込められていますね。オレはそのへんのLounge Designersとは違うぞと。
いい曲がいくつかありますが、1曲だけ選ぶとすれば「グライダー」。
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あの日から 僕の心にも
大切な変わらないものが
気分はハイ
言葉はきっとグライダー
大体いっつも飛んでるみたいだ
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サビのこの部分。「気分はハイ」→「言葉はきっとグライダー」とつなげて「大体いっつも飛んでるみたいだ」と落とす。「飛んでるみたいだ」の部分は「飛んでるみたいだー」と伸びるので「グライダー」と韻を踏むのですが、それは部分的なテクであるとして、ここの8小節分(たぶん)、この8小節に中田ヤスタカのものすごいものが隠されているように思います。何が隠されているかは各自ご自分でお確かめください。
若年層に固有の青春面のテーマを掬い上げるという意味では、次の詞。
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メイドインヘブンの服を
着て空飛ぶ夢を見たいのに
太陽も温かいのに 僕の羽はもう折れてるんだ
なんでもかなう気がしてた
限られた世界の中の話
この壁の外に出たこと
ないのは僕だけかな
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ギリシャ神話のイカロスを引用しているようにも取れるし、彼のオリジナルな想像から出してきたようにも取れます。「飛ぶ」は、たぶん30歳ぐらいまでは普遍的なテーマです。これは世界的にそうだし、現代に限ったことではありません。だからイカロス神話がある。
ここからくねくねと迂路に入っていくと大変なことになってしまうので、そちらには立ち入らないようにして、この「グライダー」に戻ると、この詞の主人公は「飛ぶ」の方を見ながらも現実がわかっている。「この壁の外に出たこと ないのは僕だけかな」と客観視することができる。
その客観視が自分を正しい場所に導くんでしょう。
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結局僕らは生きてるみたいだ
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この歌はこの1行で終わっています。クールな真実把握。