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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

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結局大きなリターンを上げるためには、時代を読まなければなりません。
現在、仕事の必要があってウェルスマネジメント本にいくつかあたっていますが、最近刊行された「富裕層ビジネス - ウェルスマネジメントの戦略展開と成功モデル」(丹羽哲夫、近代セールス社)のなかに、次のような記述がありました。

-Quote-
アメリカの商業銀行は独自のリサーチ部門を抱えていません。自行は顧客へのコンサルティングに特化し、機能分担を効率良く利用しています。
しかし、商業銀行がリサーチ部門を持たないことが、投資銀行に負けている要素の1つも言われています。
-Unquote-

同書によると、富裕層が選択する「最適な金融機関」のランキングは一位から順に、投資銀行、投信運用会社(Peter LynchがいたFidelityが典型)、独立系投資会社(ヘッジファンド、企業再生ファンド等々)、ディスカウントブローカー(Charles Schwabが最有力←以前仕事をさせていただきました)、保険会社、商業銀行、プライベートバンク、となっています(出典はVIP Forunm Satisfaction Survey Bankers Magazine)。
商業銀行は第六位、プライベートバンクは第七位なんですね。これはこれら二者が好まれていないというよりも、米国では能動的な富裕層顧客が多いようで、リターンの高そうな金融機関にまずアプローチするということなんでしょうね。
最大手の年金基金カルパースなどは年率20%のリターンを平気で要求するということなので、他の能動的な富裕層は推して知るべし。年率30%、40%というリターンを当然のごとく求めているものと思われます。これでは現物株主体でポートフォリオを組んでも絶対に足らず、公開前のプライベートエクイティやデリバティブを積極的に駆使せざるを得ないということになっていくんだと思います。かくてリサーチ部門を持つ投資銀行が最上位にくる、ということなんでしょうか。

ちなみにこの丹羽氏の「富裕層ビジネス」は最近目を通した数冊の類似書籍のなかでも、抜群の現場感覚を持っています。また、非常に率直な指摘が各所にあります。関係の方々は必読です。

さて、ここからが本題。Morgan Stanleyは、Googleに代表されるWeb2.0系企業(彼らの言うところのWeb2.0系企業。日本で言われているものと少し違います)がどのようにマネタイズしているのかという視点を持ったレポートを定期的に出し始めています。従来、新しい系の企業の分析レポートということではForresterやJupiterが定番でしたが、土俵は「どのようにして次代の富を作っていけるのか?」というところに移りました。現在では新規技術の動向だけを論じていても、企業顧客の関心を引き付けておくことはできません。

10月18日に出された「Technology / Internet Trends」をちらちら眺めていて目に飛び込んできたのが、タイトルに掲げた「DESKTOP->LAN->INTERNET->CLOUD」です。鮮やかな歴史のくくり方ですね。
この視点は例の「世界に“コンピュータ”は5つあれば足りる」にもつながるけれども、その5つに接続される無数のPCやそれでもなお残ってしまうサーバー群・ストレージ群のことを捨象していると言えば言えます。また、各要素をつなぐネットワークのことも考えていない。「CLOUD」はそのへんをすべて掬い取って「雲」と見なしている。いい比喩ですね。

Morgan Stanleyから見ると、このCLOUDはすでに世界規模に広がりつつあるものとして捉えられているわけですね。Web2.0のユーザーが世界のどの地域でどう増えているかを説明したスライドがあったりします。何かをマネタイズするという視点を持つ際に、このようにグローバル市場のことを想定しているか否かは、論じるマネタイズの規模に大きな影響を与えます。内国市場だけで考えがちな日本でこうした視点を持つことはすごく難しいわけですが、ここから大いに刺激を受けたいと思います。

Morgan Stanleyのリサーチ部門はそのようにして、少し先の大きな富がどのへんからやってくるかを読もうとしている。そうして投資銀行業務の現場での判断や商品組成に生かす。結果として顧客に数十%のリターンを提供する。それができているわけですね。やはり世界大の時間の後先も組み入れたアービトラージなのかぁ。と落としたいところ。

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