後だしジャンケンプラクティス
ある組織において、あるイノベーティブな事柄を実現しようとしているチームがあり、その上に、関所となっている中間管理職がいるとします。
チームは企画案を出します。取組みにゴーサインが出ました。プロトタイプ第一号ができました。一生懸命取り組んだ結果です。けれども関所となっている中間管理職は、そのプロトタイプを見て、色々な意見を出します。ここの骨組みはこうあるべき、ここの角度はこんな風に。
これはよくあることです。これはよいのです。
そして、チームが再び一丸となって、中間管理職の意見も取り入れつつ、最良のプロトタイプ第二号を完成させました。そしてそれをワクワクしながら中間管理職に見せました。たぶんほめてもらえるだろうと思って。
しかし、関所となっている中間管理職はほめません。再び荘重な面持ちで意見を述べ始めます。ここの出っ張りはこうでなくてはならない。ここの表面の仕上げがまだ足りない。
これもよくあることです。プロトタイプ第二号にダメ出しされるのは普通です。これはよいのです。
そして、チームがまたまた一丸となって、関所中間管理職の意見をしっかりと取り入れて、これ以上のものはないぐらいのプロトタイプ第三号を完成させました。そしてそれを、大きな期待を持って中間管理職に見せました。今度こそ「これで行こう」と言ってもらえると思って。
以下中略。
プロトタイプ第七号にダメ出しがなされた後で、チームのひとりが言い始めました。「これって後だしジャンケンじゃん」。
「そうだそうだ!」という声があちこちから上がりました。
「後だしジャンケン、ラクだよなぁ。おれらの超イノベーティブなプロトタイプのできあがりを見て、目についたとこあーだこーだ言ってれば済むもんなぁ」
「あいつ、完成形、頭にないんちゃうか?」
「完成形頭にあったら、もっとダメ出しも具体的になるよなぁ」
「後だしジャンケンで自分の意見言ってりゃ、中間管理職の役目が果せてると思っているんちゃう?」
「後だしジャンケンって、イノベーションのごくつぶしちゃうか?」
「そうだそうだ!」
「後だしジャンケン、イノベーションのごくつぶし」
「後だしジャンケン、イノベーションのごくつぶし」
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一般論として、組織内でイノベーションを進める際には、関所となる中間管理職の方のイノベーションに対する考え方、言い換えれば、お手本のない未来を築く時に起こりうる様々な事柄のハンドリングに関する指針が非常に大切になります。
お手本がないなかで、プロトタイプをつくる人たちは、無から有を作っているのであり、往々にしてそのプロトタイプには数多くの突っ込みどころがあります。プロトタイプとはそもそもそういうものである、という”智恵”がなければ、関所となるような中間管理職の方は、そのプロトタイプの不備を突いて、それでよかれと思ってしまいます。
プロトタイプが何度も何度も作り直しになった後で、最初の時のエッジが立ったコンセプトは失われ、未来を先取りするところは雲散霧消して、関所となった中間管理職の好みにカスタマイズされたものに生まれ変わっていきます。
中間管理職を選ぶ方々。ここが肝要です。組織内のイノベーションが成るか成らないかは、中間管理職次第、ということもあるということを。組織的な後だしジャンケンが続くパターンは避けなければならないということを。
逆に、よいお手本は、サイバーエージェントです。週刊東洋経済2006年6月11日号参照。