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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

欧米ではプライベートブランドが怪物になろうとしている

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Coca Cola、Nestle、P&G、Unilever、Gillette、Johnson & Johnson…。日本で言えば花王、味の素…。これにタバコ業界を加える時もあるし、ビール業界を加える時もある。これらの業種はConsumer Packaged Goodsという言葉で括られています。

CPG分野では、グローバル展開により世界の隅々にまで浸透しているブランドを持つ企業が少なくありません。マーケティングが命、ブランディングが命の業界であることは傍から見てもわかります。

また、コモディティ化の波を常にまともに受けている業界でもあります。グローバルで見ても、個々の国レベルでも、競合には事欠きません。ブランドが弱かったり、製品開発でイノベーション力が発揮できないと、すぐに安売り対象になってしまいます。

このCPG分野で近年大きな問題になっているのが、巨大流通小売企業が開発販売するプライベートブランド(米ではprivate label)製品が、CPGメーカーの大きな競合になりつつあるということです。例えば、Wal-Martが自社ブランドで売っている紙おむつが米国市場に占めるシェアは、従来、トップブランドだったP&Gとそれに次ぐ企業のシェアの合計を超えるそうです。ナショナルブランドの最上位企業が1流通企業のプライベートブランドに負けるということは、非常に由々しき事態です。CPGメーカーの側に立つならば、ということですが。

欧米ではこのトレンドが無視できないものになっています。米国のスーパー業界ではすでに20%がプライベートブランドのシェア。ドイツでは29%、ベルギーでは36%、英国では実に45%に至るとのこと。
これがなぜ由々しき事態であるかと言うと、競争が若干フェアではない側面が見られるからです。
巨大流通企業は、店舗の中の一番いい場所でもって自社ブランド製品を売れます。CPGメーカーはそれよりも劣る場所をあてがわれるほかありません。
プライベートブランド製品は、普通はCMなどをやりません。マーケティングコストは極小です。自店に並べれば売れるという性格の商品ですから。
一方のCPGメーカー製品は、かなりの広告を打たないと消費者に認知されません。認知されたとしても買ってもらえるかどうかは別の話です。

もっとすごいのが、いわゆるtrade fundsと呼ばれるコスト負担です。欧米の超がつくほどの流通小売企業は様々な名目でCPGメーカーからお金をもらいます。販売奨励金などは日本でも行われていますが、それ以外に棚占有費とか、誤納品ペナルティとか、いくつかの種類があるようです。なんのかんの言って巨大スーパーがCPGメーカーからお金をいただく構造があるわけです(これは資料から知った欧米の話。日本の状況は不明)。ある調査によると、CPGメーカーが負担するこれらのコストは、マーケティングコスト全体の6割程度を占めるそうです。6割ですよ。世界的に存在感があるメーカーであり、TVCMなどのマスメディア広告を潤沢に打っている企業が持つマーケティング費用の6割が小売チャネル側に回っているという現実(それを全部集めれば大型の広告代理店がさらに何社か食えます)。これはすごいことです。許せませんとは言いませんが…。

そんなこんなで、プライベートブランド製品とCPGメーカー製品との間には天と地ほどのコストの開きがあります。そして現在、少なくとも欧米では前者の方の力が勝ってきています。

これはいいことなのでしょうか?これはよい競争なのでしょうか?答えはわかりませんね。難問です。

けれども!広告を愛するなら!プライベートブランド製品の拡大は敵ですね。広告というものを弱体化させます。広告のない世界。それは、1984…(ふるい)

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